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25:帰れ

やらかしたね。まさかモンスターを送り込んだら補給部隊が全滅するとは思わないじゃん。どちらかと言えば、逆に誰1人としてケガすらせずに終わることを想定してたのに。

大丈夫かな?輸送物資まで届かないとなると本気で貴族が裏切ってきたと征服皇が勘違いしちゃわない?伝令はともかく、補給部隊まで届かなくするって言うのは戦場にいる兵士たちに負けろって言うようなものだからね。征服皇が危機感を抱くどころか本気で攻撃してきたと思ってぶちギレてもおかしくはない。


しかも、そうして全滅した部隊が運んでいた物資は放置されたままにはならない。

なんと、それをモンスターが発見してしまったんだよ。武器を持つ程度の知能はあるようなモンスターが。なお、私が誘導したモンスターとは別だよ。一応あのモンスターは相打ちみたいな形で全滅してるからね。

ただ、これによってモンスターが武器を持つことになった。しかも、大国が軍隊のために作ってる武器防具だからかなり質がいい。

おかげで、


「う、うわぁ。他の補給部隊まで襲われてるぅ。もう収拾つかないんだけどぉ」


武器と防具を手に入れてしまったモンスターは、それをもって元居た場所まで戻ってモンスター同士争うということはしなかった。そこにいればおいしい思いができると思ったのか、しばらくとどまっていたんだよ。

そして、そこにやってくる別の補給部隊。全滅してしまったから情報も届いていないようで特に武装も数も変化はしていないけど、それなりに大国の送り出す兵士なんだから強い。

それでもモンスターは襲い掛かった。

結果はお察しの通り。


モンスター、勝っちゃったんだよね。武器や防具があったことはもちろん、何よりもその数は補給部隊よりも圧倒的に多かったからねぇ。包囲した後、飲み込むようにして兵士たちは押しつぶしていった。戦いはやっぱり数だね。

そして、さらにモンスターたちはその補給物資から今度は大量の食糧を得て学習してしまう。ここにいれば、強い敵と戦うことにはなるけどいいものが手に入る、と。

その後はもう同じことの繰り返しだね。

補給部隊が現れては襲い掛かり、まとめて殲滅する。

もちろん伝令薬などが通りかかってもすべて飲み込み、物資が届かないことに良かった征服皇の伝令も任務を遂行することはできなかった。

しかもモンスターたちはちょうどいい手本がいたからなのかどんどん武器の扱いを覚えてより強くなっている。


「うわぁ。これ、征服皇が帰るのも時間の問題じゃん」


帰るのは構わない。もともとそれが目的でもあったから。

でも、このままだと帰った後にすぐ片が付いちゃいそうだよ。いくら利権を奪って力をつけているとはいえ、それでも征服皇にかなうほどの力を貴族は持ってないからね。明確な証拠なしでも処断されるなんて状況に持って行ってしまうのは避けたかったんだけど。


「できるだけ征服皇の帰還を早めに気づかせたうえで征服皇の足を引っ張りまくるしかないかな」


まず必要になるのは征服皇の期間を貴族たちに気づかせること。これがないと、不意打ちで征服皇が帰ってきて何も準備できないまま貴族たちが処理されることになる。逃げるにしても対抗するにしても早めに知らせておくことは必須。

そのうえで、帰還できる時期を先延ばしにする。足を引っ張って引っ張って引っ張りまくれば、貴族たちの準備もその分進むはずだから。


一気に忙しくなったよぉ。これ、私の自由時間が完全いなくなりそうだね。ずっと仕事してなきゃいけなくなったかも。

この恨み、征服皇への嫌がらせで晴らしてやる!



と、考えた数日後。


「え?もう征服皇は帰ったんですか?」


「そうみたい。物資が届かなくなったから原因を見に行くんだって。今日までに目的にしてた小国の支配は終わらせたみたいだし、いよいよ戻ってきたらあの国と本格的に戦争を始めるのかもね」


「また大規模な戦争ですか……征服皇がいない今のうちに取れるだけ土地を取ってしまった方がいい気がするんですけど、どうするんでしょうね?」


「さぁ?征服皇がどれだけの期間いないのかはわからないから何とも言えないなぁ」


分からないけど、伸ばせるだけ伸ばす。それは確定してる。

結ちゃんには言わずに、子育てにだけ集中してもらうけどね。


私をよく観察されていたらバレるかもしれないけど、今のところ結ちゃんはまだまだ小さい男の子たちに夢中だから問題ないはず。

これからもできる限りぼろを出さないように労力を抑えながらやって行くことにしよう。

それこそ今なんかは私がそこまで集中しなくても済む状況で、


「俺たちの国を取り戻すんだぁ!」

「まだ俺たちは負けてない」

「お前らの支配なんか許してたまるかぁ!!」


征服皇が戻ってきたことを知ったからなのか、今まで征服してきた土地で征服皇を狙った住民たちの襲撃が起きている。

もちろん鎮圧はされるけど、確実にその足は止まるんだよね。征服皇はまだまだぴんぴんしてるけど、周囲の護衛なんかは少しずつ傷を増やしてついていけなくなって。結果としてその勢力は数を減らしている。

ただ、重要なのはそこではない。


こうやって支配した土地を通って行くと毎回住民に襲われるとわかれば、征服皇たちは途中から極力人と会わない道を選ぶようになる。

私の狙い通りとも知らないで。

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