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22:奴が来た

大雨を引き起こしてもらって、兵士や物資を濡らしたり体力を奪ったり。魔法で暖を取るようにはしていたようだけど、それでも数人は風邪をひくような人も現れた。

本当なら風邪を引いた人は隔離して感染しないようにするべきだと思うんだけど、兵士の側は時間がないんだからそんなこともしていられない。置き去りというわけではないけど別行動をするのか、それともこれまでと同様全員で行動するのか。ここはグループによって判断の別れるところだった。


ここまでのものも結ちゃんに天候を変えるよう頼んだ時から期待していた効果ではあった。

ただ、そのどれもが1番の狙いではない。

ちょうど雨も収まり始めたところでようやく余裕のあるグループの人たちはそれに気づき始めて、


「っ!マズいな。動いているぞ」


「動いている?……まさか、目印がですか!?」


「言われてみれば確かに、過度に密集している部分があるな。それに、いくつか消えてもいるか?」


兵士たちが残した痕跡。主に大木などに残されていたそれを信用性の低いものにしてしまうこと。

これがあるせいで空白地帯を埋めるように私たちに近づいてこられてしまうんだから、私はそこを攻撃してみることにしたの。

やったこととしては、痕跡の残された木を移動させたり痕跡の残っている個所が途中で分離してしまうように(つまり破壊されるように)折ってみたり。

場所が変わり、いくつかは消えて。今まで本当に調査し終えた場所がどこだったのかもうわからなくなっている。

もちろん記憶しているものもあるだろうからすべてを疑うわけではないだろうけど、それでもすべての場所を正確に覚えているとは思えない。そして、そうなると自信があるもの以外の痕跡がそもそも信用できなくなる。


「まずは痕跡のない場所を回って、それでも見つからないようなら痕跡の残っている場所を探すか?」


「いや、待ってください。先に痕跡が信用できるということを確認してからの方がいいでしょう。この後も痕跡は残すんでしょう?」


「これは、他の部隊とも話をした方がいいのでは?こうなってしまった以上、痕跡の残し方については改良が必要に思えるのですが」


「ほかの部隊とはいっても、どう合流するのだ?もう今までのように痕跡をたどればどうこうという状態でもなくなってしまっているのだぞ?」


「ここは、一度撤退をすべきでは?時間をロスすることにはなりますが、それでも同じ場所を部隊ごとに確認して無駄にする時間の方が大きいはずです。それに、今後の対策も集まればできますから」


「いや、しかしな。ここで撤退など……」


生じる迷い。

1番冷静なグループでこれだから、ほかのグループが気づいたらどんな状態になるだろうね?意外と視野が狭くなっていて自棄になった探索をする可能性もあるけど。

ただ、視野が狭くなった兵士たちも撤退の合図を見せられると状況は変わってくる。


こうして痕跡の残し方に問題が出始めたことを受けた撤退指示までの時間は意外と短く、迅速に大部分の部隊は森から出て集合地点に向かって行った。

もちろん大部分は、という表現をしたことからわかるように撤退していない部隊もある。

例えば、


「撤退か。けが人が出すぎたか」

「痕跡の方位の問題があるからかもしれません」

「こちらが合流できないことをどうにか伝えなければな。連続してこの洞窟内で痕跡を増やし続ければ気づいてくれるだろうか」


崩落により洞窟から出られなくなったグループとか。


「お、おい。どうすんだよ!前と痕跡の位置変わってるぞ!?」

「どっちだ。どっちに行けば良いんだ。出口isどこ」

「俺たち、迷子になったってコトォ!?」


迷子になってるグループとか。

……まさか、迷子になる兵士がいるなんて思わなかったね。


それでも大部分は撤退したのだから、今度はまた少し対策を進めて探索が始まるはず。

いい対応策を思いつけるといいんだけどなぁ。



ただ、そんな私の考えとはある意味裏腹に。

兵士が帰ってくることはなかった。

撤退が始まってから3日4日経っても戻ってこない時からおかしいとは思っていた。

でも、それは迷子になっていたり閉じ込められていたりする兵士がいてそれを待っているからだと考えていた。


けど、1か月経ちすべてのグループが帰還していったにもかかわらず、一向に戻る気配がない。この時点から本格的におかしいと思い始めた。

そこで私は初めて外の国の様子というものを確認して、衝撃を受けることになる。

なぜなら、


「征服皇が来てる。なんでこんなことを?」


「ん?何かおかしいんですか?征服皇も参戦するという話でしたし、同盟国と言える国々にいることもそこまでおかしくはないのでは?」


征服皇。それは、私たちをこの世界へと召喚した国を滅ぼした人物。いくつもの国を滅ぼし自国の領土としているからその名前がついているらしいんだけど、そんな人物がここまで来るのはある意味普通のことではあった。

私たちがお世話になっていた国に、征服皇と小国が手を組んで全方位から攻め込んでいくという話が出ていたんだから。征服皇がその同じ国に攻め入る同盟相手ともいえるような小国の領土にいることもそこまではおかしくもない話。


だけど、違う。

私が見たのはその予想ができる光景ではなく、


「征服皇が、その同盟相手の小国に侵略してるんだけど?」


「……え?」

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