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21:犠牲者という名の生贄

執拗に嫌がらせをして、なんとなく主人公のライバルの悪役らしいことができている私だったけど、そんな私でも気を付けていることはあった。

それが、命までは奪わないこと……はもちろんそうなんだけど、そこではなく1人だけをターゲットにしないこと。

というか、こちらを気を付けてさえいれば最悪命を奪ってしまっていいと思っている。


だけど、私が気を付けていても事故は起きるもので、ついに私の懸念していたそれは起きた。

それは私が狙っていたストレスのたまっていたグループではなく、なんと予想外にもある程度余裕のありそうだったグループで起きたことで、


「しっかりしろ!今助けてやるからな」

「くっ!なかなか気をどけるにも一苦労か。まさか急に木が倒れてくるとは予想外だったな」


兵士の1人が、倒木に巻き込まれて下敷きになってしまった。

1本どころではなく数本の大木が兵士の上に倒れており、被害にあっていないほかの兵士たちが数人がかりで助けようとしているけどそれでも無理がある。私が細工したわけではないんだけど、私が細工をしたのを含めても今回の大雨関連の被害の中で1番これが大きな被害かもしれない。

だからこそ、下敷きになった兵士は、


「そういうこともある。俺が油断していたのがいけなかったんだ……だから、もういけ。俺は自分でどうにかする。お前たちがここで無理をする必要はない」


「何を言ってるんだ!お前を見捨てていけるか!」

「すぐに助けてやるから黙ってろ!」


「そっちこそよく考えろ!俺たちは何をしに来たんだ?仲良くみんな仲良く帰るためか?違うだろ?どれだけ犠牲が出たとしても、国のために、俺たちの大切な人たちのために成果を持ち帰るためだろう?違うのか!こんなところで時間を食っていいわけがないだろう。俺にかまって物資も無駄に濡らすな。探索の時間を減らすな。俺のことは見捨てて、少しでも国のための仕事をするんだ!」


「なっ!?だ、だけど、」

「……わかった。お前がそれだけの覚悟を持っているのだというのなら従おう」


忘れてはならないのは、この兵士たちが決して自分自身だけのためにここの森までやってきたわけではないということ。

国のためなのか家族のためなのか、とりあえず背負っているものが自分自身の命だけではないんだよ。だから、自分を切り捨てる判断が速い。自分の命を若干軽く扱う。

こうなることが分かってたからできるだけ弱ってる1人を執拗に狙うのは避けたんだけど、さすがにずっとそういう被害なしで進むのも無理があるか。


ではなんでこれに警戒していたのか、ということなんだけど、理由は至極単純。これが起きると仲間の方もかなり覚悟が決まってしまうんだよ。

仲間の命を見捨てるというだけではなく、背負うことにもなる。こうなると、余計に引かなく、というか引けなくなる。


せっかく心を折る準備をしてたのに台無しだよぉ。


「まずは洞窟か何かがあればそこに避難するぞ」


「何を言ってるんですか。彼を犠牲にしていくんですよ!そんなことに時間を使ってられません!早く、早く彼のために目的を達しなければ」


「だからこそだ!早く発見する必要はあるが、それで物資や体力を失わせれば長期的に見ると活動できるペースが低下する。今はおとなしく待ち、少しでも体力を回復させるんだ。あいつの命を無駄にするな。あいつを見捨てて得た時間を、最大限有効に活用するんだ。たとえそれが、どれだけ苦しくとも……」


うぅん。犠牲になった人のためにも無理をするとかしてくれればつぶれるのも早かったんだけど、いやに冷静な人がいるなぁ。

こんなことを考えるのもどうかとは思うけど、どうせなら犠牲になるのはああいう冷静な判断ができるリーダーみたいな人が良かったよね。ああいう人の方が心の支えになるし、早く失ってくれた方が崩れるのも簡単になる。


結局、そのグループはその後の行動を宣言通り洞窟探しに変更した。

洞窟でなくても雨宿りができるならどこでもいいということではあったと思うんだけど、結局見つけたのも洞窟。中はモンスターの住みかとなっていて戦闘が発生することになったんだけど、兵士側はいろいろと極限状態に陥っているのか全くモンスターが相手にもならなかったね。

私も少しは手を貸したけど、あんまり意味もなく数分で全滅させられてしまった。

けど、こういう面倒なものが洞窟まで来てくれたのはある意味行幸。


「っ!?入り口が!」

「崩れたか。こえでは外に出られんな」


崩れる入り口。

大雨が降っていたんだから仕方ないよね。しかも、激しく戦闘までして振動が伝わってしまったからねぇ。もしかしたら私が何もしなくたって崩れていたかもしれない。


こうして崩したことにより、彼らは外に出られなくなった。

どれだけやる気が合っても、行動ができないのであればそのやる気も意味はない。くすぶり続けるだけで終わるしかない。

もちろんすぐに撤去作業は始まるけど、私だってそんなに簡単に撤去できるような優しい崩し方もふさぎ方もしていないよ。兵士の何人かが魔法も使って穴をあけようともしていたけど、それもすべて成功はしない。余計に崩れてくる量を増やすだけで終わった。


「まずは活動し続けられる環境にしなければならないか。できるだけ火の類は使わないようにするぞ」


密閉した空間で酸素がなくなることを恐れたのか、火の使用にまで制限をかけ始めた。

もちろん真っ暗になれば作業なんてできないから魔法で光を出しているけど、それをすれば土をどけるために使う魔法のための魔力が足りなくなる。

どこまでここでくすぶり続けることになるだろうね?全くこのやる気が減らないなんてことはないと信じたい限りだよ。

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