17:勉強になりはする
実は、私たちの孤児院(?)には男の子しか存在しない。もちろん自認がどうかとかそういうことを言われたらまだ発達段階だろうし正確なことは言えないけど、とりあえず肉体が男性である子しかいないことは間違いないの。
おかげで結ちゃんは大歓喜。その性癖を全開にして楽しんでいる様子だよ。
ちなみに、なんで男の子ばかりなのかというのはなんとなく予想がついている。戦いに出るのは基本的に男性ということにはなっているんだけど、さすがに出せる年齢になるまでには時間がかかる。そして、男の子が戦いに出せる年齢になるまでの時間に比べて、女の子は使えるようになるまでの時間がそこまで長くないってことなんだろうね。想像するだけでも吐き気がする話だけど、あくまで予想だからそうでないことを祈るばかりだよ。
そんな理由が何であるにしても、男の子がたくさんいるということと結ちゃんがそれに大喜びして毎日楽しんでいることは間違いない事実。
こうした子供たちのお世話を年単位で続けている理由は、子供たちを見捨てられないというのはもちろんのことだけど結ちゃんの性癖も大きな要因ではあるね。
私だけだったら早々に切り上げて、ある程度捨てられる数が落ち着いた時点で全員を連れて戦争の起きていないところまで移動して、そこの孤児院とかに預けてしまったかな。本当にやりたいことは、元の世界に戻ることだからね。
ただ、そうはいっても私も全くえるものがないわけではない。
元の世界戻る手段につながってはいないけど、自分がステップアップできる要素というのは意外とあるもので、
「ヒト姉~。すごいだろ~。今日は電気3つ出たぞ~!」
「おぉ!すごいじゃん!成長したねぇ」
「オレだって闇球4つ出せたぞ!」
「わぉ。そっちもすごいね!頑張って偉いねぇ」
私が今相手をしているのは、この孤児院では年長組に入る子たち。
その中の首のあたりに鱗みたいなものがある子は電気の塊のようなものを3つ生み出し、爪が鋭く伸びている子は黒いたあを4つ自分の周囲に浮かび上がらせていた。
これらはそれぞれ魔法となっていて、見ただけでもそれなりに難易度が高いことの分かるものとなっているよ。
他の子たちはそもそも魔法が使えなかったり、使えたとしてももっと小さいものを短時間1つだけ生み出せるかどうかといったところなので、この2人が著しく高い魔法の才能を持っていることが分かるね。
ちなみにこの2人、それぞれ頭に何かがあった痕跡がある。
それぞれもともと角のようなものがあったんだと思うんだけど、この角がないせいでかなり種族はわかりにくくなってしまっているね。一応昔調べた限りは、鱗の子は龍、爪の鋭い子は魔族的な何かだと予想しているよ。
「ヒト姉もやって~」
「えぇ~困るなぁ。私、そっちの属性は使えないんだけど」
「じゃあ俺が手伝ってやるよ!仕方ないなヒト姉は」
「なんだと~生意気な~……って、うわっ!?急にやらないでよ~。びっくりするじゃん」
私の手を2人がとったかと思えば、突然私の周囲に電気の塊や黒い塊が生み出される。
私が勉強になっていると感じているのはこれなんだよね。あまり一般的ではないんだけど、ある程度魔法が使える人同士だと相手に自分の魔法を使わせるということができるんだよね。だから2人は私に自分たちの魔法を使わせたというわけ。
もちろんこれを一方的にやられると魔力が簡単に尽きてしまうから拒絶することもできるんだけど、これでもともとの才能(?)とこれまでの努力のおかげでかなり魔力は増やせてるからこの程度どうということはない。
ただ、ここまででは何が勉強になるのかわからないよね。
せいぜい、結ちゃんが魔力切れになっても私の魔力を使えばさらに大規模な回復をさせることができるというくらいしか使い方なんて思いつかないだろうし、そもそもこれは知識として持っていた時点で終わりだからこれ以降やっても特に勉強になるようには感じないよね?
でも、違うの。
これをすると、
「えぇと……こんな感じかな?}
「おぉ!そうだぞヒト姉!」
「や、やるじゃんか。まあ、オレの方がすごいけどな!」
「そうだねぇ。2人には負けるねぇ」
なぜか私1人でも使わされた魔法が使えるようになるんだよね。
本来雷やら闇やらは私の属性ではないから使えないはずなんだけど、なぜか使えるようになるんだよね。おかげで、かなり手数が増えたんだよ。
私たちにいろいろと教えてくれた国でもこれは教えてもらわなかったんだけど、いったいどうしてなんだろうね?自分の属性以外の魔法を使えるなんて間違いなくできるようになっておくべきものだと思うんだけど。
……やっぱり、これができるかどうかは使う側の種族も関係してたりするのかな?2人が人間じゃないからできてるっていう可能性も考えておくべきかもね。
そんな不思議なことがあるのはいったん置いておくにしても、私の手札が増えているのは間違いない。
この世界の魔法での攻撃手段が増えたのは、よりほかの世界の魔法を使う機会を減らすことにつながるからね。よりバレずらくなって非常にありがたい。才能のある2人にはしっかりと感謝をしておかないとね。
だから、
「あっ、まずい!」
「オ、オレの魔法がぁ!?」
ちょっと魔法の制御が下手な2人を大目に見てあげるくらいはしないとね。
そんなことを、轟音を響かせながら崩れていく壁を見ながら思う。
どうやら、2人はお互いの魔法を競い合って制御しきれないくらいの力を入れてしまったみたいだよ。
「2人とも、まずは片付けかな。あとでしっかりお話ししようか」
「「……はい」」
壁にあけた穴と同じ大きさの穴を2人にあけなかっただけ大目に見てるんだよ。
片付けとお話だけで済ませるなんて、私はなんて優しいんだろうね?




