16:好みは人それぞれ
孤児院経営をするようになった私たちは、必要に迫られてとまではいわないけど魔法の活用をすることが多くなった。
朝起きたら魔法で顔を洗って魔法で歯磨きをして魔法を使って着替えて魔法でご飯まで用意する。
移動もすべてではないけど加速のための補助を行なったりして、できるだけ効率的に動けるようになってしまった。できてしまったからこそ、こうなってしまっている。
逆に魔法を使わないのは、子供たちにミルクを与えたりあやしたりするときが多いね。
さすがに子供たちの世話を魔法で全部やると、将来的に私たちになついてくれなくて支障が出るかもしれないから。
「今日は洗濯をお願いします」
「はいはい。わかったよぉ。そっちは料理しながらだっけ?」
「そうですね。年長の子たちにはある程度簡単な料理の手伝い放ってもらわないとこちらの手が足りなくなりそうですし」
「そうだよねぇ。魔法でやるにしても数が増えてくると限界があるよね」
「そうなんですよねぇ……聖女と言われてその気になってましたけど、ここにきて無力感がすごいです」
「そんなことないよ。結局私より魔法はうまく使えてるわけだし」
「その割に独ちゃんは苦戦している様子はないですけど?」
「アハハッ。見栄を張れてるってことだね」
私たちの1日の9割くらいは子供たちのお世話に関連することに使われている。
うまく子供たちと一緒にお昼寝ができたとき以外は睡眠時間なんて基本2時間内くらいなんだよねぇ。これすらも魔法で無理やり体の調子を整えて睡眠の質も爆上げしてるからどうにかなってしまっているという恐ろしい状況だよ。
幸いなのは、最近森へ捨てられる子供の数が減ってきていることかな。
0になるのかどうかは分からないけど、人数と仕事量の増加がとどまることを知らないという地獄みたいな状態ではなくなってきているんだよ。
ただ本当は、これって捨てられるほど生まれる子供がいなくなっているという可能性もあるから幸いなことにと言ってしまっていいのか怪しい部分もあるんだけどね。
ただ逆に気になるのは、それでも捨てられる子供が0にはならないという部分だと思う。
攻めてきた敵の兵士に……という展開もありうるとは思うけど、それが私たちのもとにまでやってくる可能性は非常に低い。
それなのに、実際に捨てられてると思われる子供がいるんだから不思議なんだよね。
「……そしてまた今日もいる、と」
家事を進めていると、ちょうど外に出たタイミングで私は新しい小さな命を感知する。
そして厄介なことに、
「これ、純粋な人の気配っぽくはないなぁ。別の種族じゃない?」
これがある意味、捨て子が発生し続ける答えといえなくはないのかもしれない。
実をいうと、最近捨てられる子供って私たちの言う一般的な人間とは違うことが多いんだよね。
例えば手の代わりに翼が生えてたりとか、額に角らしきものがあったりとか。人型だけどちょっと違うというパターンが多いかな。
こういう子たちに関しては、どういう目的で捨てられているのかさっぱり分からないから割と困ることも多いよ。
なお、結ちゃんはそうした見た目が違う子の種族の違いは理解しているけど、見た目からでは分からない人間でないこのことも私は認識している。
「そういう人間社会に紛れるタイプのほうが脅威度は高いし警戒しておく必要があるんだけど……そこは私が気を付けておけばいいか」
まだ私の前の世界の力などは隠しているから、結ちゃんに私の力を把握させることは避けたい。
それなりに数はいるけど、まだ私だけでどうにかできる範囲ではあるから黙っておかせてもらうことにするつもりだよ。
なお、私はまだ隠していることが多いけど、こうした忙しい生活の中では人の本質というか、隠している部分は見えてきてしまったりもする。
私の何かが見えているかは分からないけど、間違いなく結ちゃんの化けの皮のようなものは少しはがれていて、
「それで?今日はどうなった?」
夜、子供たちがほとんど眠った時間に私は結ちゃんとお茶を飲みながら情報共有を行う。
ここで今までのイメージ通りであれば結ちゃんは落ち着いて事実を淡々と伝えてきたと思うんだけど、
「今日はいつもの2人が私のことを取り合いまして。それを仲裁しようとする子や争っている間に私をとってしまおうという子もいて……今日もみんなそれぞれ個性を出してくれていましたよ。グフフッ」
【衝撃】聖女様はショ〇コンだった
というわけで、結ちゃんの話は割と子供たちのそれぞれの関係性などになりがち。割と腐った部分も持っているようだから、それはそれは子供たちの絡みを楽しそうに伝えてくれるよ。
なんだかとても楽しそうだし、昔と違って本気で元の世界で帰る気があるのか正直謎だね。
ただ、おかげで征服皇や婚約者としてあてがわれそうだった王族が好みでなかった理由はよくわかったよ。
将来的にはこの孤児院の子たちで逆ハーレムを作るのか、それとも成長した子たちには興味がないのか……何にしても結ちゃんにとってここにいるのが異世界で生活する中で1番楽しいんじゃないかな?




