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13:腕の中でできるジャム

ついに、というべきか。もともとそうする予定ではあったけど、思っていたより長いこと田舎をめぐっていたため実行していなかった出国を決行するときがやって来た。

いい加減技術や知識を教わった分の恩返しも十分できたと思うし、もうこの国にとどまる理由もほとんどなくなったんだよね。


ただ問題があるとすれば、


「どこ行こうか?」


「どこに行きましょうか?隣国はどこもダメ、というわけではないですけど……」


いまだに行き先が決まっていないことかな。

正直教わった技術やここまでの経験も踏まえれば結ちゃんも自分である程度動けるようにはなっているし、どこでもいいといえばどこでもいい。だけど、隣国なんかはいま私たちのいる国に襲い掛かってくる可能性が高いらしいからあまり活動に使う気にもならないんだよね。

せっかく田舎の支援などをしてほかの国から身を守れるようにしたっていうのに、そこで襲い掛かってくるほかの国を強化したら私たちのやったことの意味が薄れてしまうよ。


「正直この国のために働きすぎたような気もするし多少は隣国で活動するのも悪くはないと思うけど、そこまで積極的にやりたくはないかな」


「そうですね。それこそ今なら、以前話していたように森の中で生活とかもできるのでそうしたっていいですよね。無理に人と関わる必要すらないかもしれないです」


「なるほど?確かに結ちゃんの力があれば食べ物にも困らなさそうだし、危険も少なそうだね」


私と同程度とは言えないけど、結ちゃんも私と同じように植物を成長させたりする技術もすでに身に着けている。それ以外にも解毒関係の魔法だって使えるから、食べ物関係で困るということはあまりないかもしれない。

結界を結ちゃんも私も張れるから拠点の防衛も困ることはないだろうし、人気のない少し危険な森で暮らすこともまったくもって無理ではない。


でも、


「それは最終手段かな。一応私たちは元の世界に変えることを目標にしてるんだからね?人気のないところに住むなんて情報収集には全く向いてないじゃん」


「あっ、そういえばそうでした。最近忙しくて本来の目的をすっかり忘れてましたね」


「いくら人を相手にするのが面倒になったからって、誰もいないところで生活しようとするのは極端すぎるよ……」


結局そのあとの話し合いにより、私たちは一応隣国を回ってみることに決めた。

隣国に行っても結局人助けをしなければ私たちの努力が無駄になるわけではないし、情報だけ集めさせてもらえたらそれで十分という結論になったの。


そしていざ出国の時になると、


「またお姫様抱っこですか。私も以前とは違って自分でも動けるんですよ?」


「でも、まだセンサーに引っかからない速度で動くのは無理でしょ?」


「……否定できないのでおとなしくしてます。悔しいですね」


いくら結ちゃんが力をつけてきたとは言っても、まだまだ私には程遠い。

バレずに出入国を成功させるには私が抱えたほうが都合がいいというわけ。

ついでとばかりに結ちゃんから身体能力が向上するバフをかけてもらえれば、それはもうすさまじい速度(なお自分で聖女の力を使ったほうが断然速い)で移動ができて、


「…………つ、つぶれてジャムになるかと思いました」


「アハハッ。防御能力は向上させておいたほうがよさそうだねぇ」


あまりの風圧に結ちゃんが耐え切れないほどとなっていた。

私に問題がないのは、聖女ではなく聖騎士的な才能を持っているからかな?


なお、しばらくこれは頻繁に使うことになることが予想されるから改善できるところはしてしまったほうがいいね。

多くの国を回るからという理由があるのはもちろんそうなんだけど、


「お邪魔しま~す」


「お、お邪魔します……こんなに簡単には入れていいんでしょうか?」


夜。

私たちがやってきたのは、比較的大きな貴族の屋敷。

もちろん正式に聖女として訪問したわけではなく、こっそりした不法侵入だよ。


目的はさっきから言っているように情報収集。

資料の置いてある場所なんかを見せてもらって、異世界償還などの知識を深めようとしているわけだよ。

こういうときにもよりバレるリスクを減らすために移動の速度が高い私が結ちゃんを抱えて移動してる。

さすがに屋敷の中に入ったら降ろすけどね。


「う、うわぁ。すごい人体実験をしてますね。この貴族、本当に生かしてていいんですか」


「急に恐ろしいこと言うじゃん。処分するのは問題ないと思うけど、国境の警備が厳重になったりしたら面倒だよ?」


「でも、独ちゃんならそれくらいどうとでもなりますよね?」


「それはまあ、絶対ではないけど」


「じゃあやりましょうか」


「お、おう。結ちゃんも躊躇がないね。びっくりだよ」


たまに最悪なことをしているような貴族がいると、結ちゃんはその貴族の首をとったりする。

命を奪うなんて前の世界では経験がなかったはずなのに、ここまでこの世界に順応(?)されると純粋に驚いちゃうね。

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