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10:掌コロコロ

私が本性を現したことで結ちゃんとの間にかなり距離ができてしまった……かと思われたけど、


「独ちゃんは演技派なんですね」


「そんなことないよ~。そんなに演じられる幅は広くないから。擬態できるのは今までのくらいだよ」


「それでもあそこまでの完成度が出せるなら、少し時間をかければほかの演技も簡単にできるようになるんじゃないですか?」


「いやいや。さすがに無理だって。そんなに私器用じゃないよ」


向こうが私のことを名前で呼んでくれるようになり、さらに「さん」付けだったのが「ちゃん」付けに変化した。逆に距離は縮まったように感じる。

うれしい限りだよね。やっぱり気楽に話せる相手が1人いるだけでも孤独感を感じずに済むよ。

前の世界では孤独な期間が長かったから慣れてはいるし、結ちゃんほど相手に依存したりはしない。けど、それでも私も結ちゃんに対する好感度を上げちゃいそう。

召喚された経験があることとか、変なことを言ってしまわないように気を付けないとね。


結ちゃんはまだまだ不安定な立場だし、仲良くはなれても信頼しきれる関係になったわけではないんだよ。

それこそ本当のお相手というのが出てきてしまった場合、私よりもそちらを選ぶ可能性だってあるんだから。


「結ちゃんが自分の身を守れるようになったら、私って何にをすればいいんだろうね?冒険者とかして生きていくのが王道なのかな?」


「物語だとそういう路線になりそうですよね。でも、もし独ちゃんさえよければ私が雇います。私の友達兼護衛として」


「さすがにそれは悪いよ。それに、護衛とかやると結構強い人と戦わなきゃいけそうだから勘弁してほしいかなぁ」


たまに、あえて私のほうから将来の不安なども口にしてみることにしている。

やっぱり相手に不安を話してもらうには、自分から弱みを見せたほうがいいはずだから。これに関しては聖女モードの私よりも素の私のほうがやりやすい。不安を、深刻な感じをさせずに自然と口にできるからね。本音っぽさもでるし、効果的だと思うんだよ。


ちなみに、私自身は将来のことをそこまで本気で心配しているわけではない。

すでにある程度の計画は立てているから。

まずやることとしては、この国で結ちゃんが自分の身を守るすべを身に着けるまでにできるだけの技術を習得する。そして外に出ることになったら、各国を回り情報収集しつつ魔族を探すことになるかな?

今まで帰還は魔王の力で行われてきたから、今回も同じように元の世界に戻してもらえないかって期待しているの。

とはいっても、魔族がこの世界にいるかもわからないし、そうした都合のいい力があるかもわからない。そして、私の帰還に協力してくれるかどうかも未知数。

だからこそ魔族を探すまでの各国での情報収集もかなり重要になってくると思うんだよね。


「一応聖女と勘違いされるくらいには力もあるから、ヒーラーとして活動するのも悪くないかなとは思っているよ」


「なるほど。確かにそっちのほうが安全ではあるかもしれませんね………この辺で治療院が開けないか聞いてみます」


「アハハッ。結ちゃんがいるのにわざわざ私に回復を頼む人はいないでしょ。それに、結ちゃんの影響でえらい人たちを相手にしてたヒーラーさんたちがあぶれるだろうし。基本的にこの辺はヒーラーとして生きていくにはつらいんじゃないかな?」


「私の力がここで邪魔をしますか……どうせなら力が逆ならよかったんですけど」


「いやいや。勘弁してよ~。ずっと堅苦しくしてないといけないのは私にはつらいから」


それなりに私への執着をしてくれているようで、結ちゃんはどうにか私を近くに置こうとしている。この様子だと、すぐに結ちゃんと敵対することにはならないと思う。

私が出ていきさえすればもう結ちゃん関連のシナリオに巻き込まれるような展開にはならなはずだし、出ていくまでは油断せず好感度を保っておくことにしよう。




……なんて思っていたんだけど、そんな私の計画は数日後に崩れ去ることになった。


「独ちゃん。この国を出ましょう」


「へ?出ていくの?この国を?」


「はい。どうやらこの国、私たちの扱いをもう少し下げるつもりのようなので」


突然の国外逃亡の提案。これにはさすがの私も予想外でびっくり。

結ちゃんによると私たちの扱いに不満があるようだけど、もうちょっとちゃんと話を聞いてみないと分からないね。


「具体的にどんな感じで?」


「私と独ちゃんを、それぞれ王族と貴族の妻にするつもりみたいです。5年以内には子供も作らせるとか」


「わぁ……それはなかなか状況が変わるね。急にどうしたんだろう?」


聞いてみれば、確かに勘弁してほしいと思うような話が出てきた。これは出ていきたいという結ちゃんの意見にも納得だよ。

ただ、私はそんな話を聞いていないしどうして急にそんな話になってしまったのかも気になるところ。


「実は、私がすでにほとんどの国の重要な人たちの病気を治してしまったそうなんです。ですので、今はそこまで権力者の中で私を求めているわけではなくなってしまった。その結果、将来的な必要性を価値として私たちを貴族や王族で取り合う流れが生まれてしまったらしく」


「一時的に価値が低下した結果、短絡的な行動が増えてしまったってこと?」


「そういうことです」


なんともいやになる話だねぇ。

うまくやれば聖女や私は不可侵だって流れに持っていけるかもしれないけど、逃げる準備だけはしておいたほうがいいかも。

この国、そこまで悪い国じゃなかったんだけどなぁ。残念。

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