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9:中身なんてそんなもの

予想以上に流れは速いものだった。

結ちゃんに力を発揮してもらった後、こっそりとのつもりなんだろうけどそれはそれは大量に私たちを見に来る兵士がいた。当然上に立つ人たちもそれを無視できるはずがなく、私たちの対応が急ピッチで進められていく。

事情聴取を別室で受けさせられたかと思えば次の日には護送車(車といっても馬車だけど)で比較的大きそうな都市に移動。

そしてまたもや結ちゃんの力を発揮してもらってお偉いさんっぽい人たちを納得させていく流れになった。


こうなるともう勝ったようなもの。お偉いさんたちは結ちゃんが聖女であることを疑わないし、その力を欲してしまう。

国から非常に手厚い支援を受けられる流れが完成するのに1週間もかからなかったよ。


ただしそれはあくまでも結ちゃんの話。

結ちゃんほどの力がない私はまた扱いが別になる……んだけど、


「加藤さんと1日の間の半分以上は一緒にいさせてください。それが私から出す1番大事な条件です」


結ちゃんがこんなことを言ったせいで(別に悪いわけではないんだけどね)私も結構いい待遇を受けさせてもらってる。

結ちゃんほどではないにしても力はあるから使い方も教わっているし、他の路線の力が隠れていないかも徹底的に試して調べてもらっているよ。


身体能力を自分に欠ける魔法であげているから戦闘関係の才能があるんじゃないかとはされてる。

ただ、実際その可能性は否定しきれないんだよね。

個人的にも若干違和感があるくらいには私って盾の扱いがうまいんだよね。力が扱えることと一緒に考えると、もしかすると私は聖騎士とかそういう系統の職業の適性を持っているんじゃないかと思うんだよね。

位置づけとしては、聖女として召喚された結ちゃんの護衛、みたいな?


私の予想が当たっているとしたら、図らずしも役職通りの動きをしていたことになるね。ここまで征服皇っていう敵や警備の人から一応結ちゃんをかばうような動きをしてきたわけだし、


「戦闘の才能といわれましても正直困ってしまいますけどね。私はそこまで争いごとは好んでいないのですが」


「それでも私としてはうらやましいです。自分を回復するには十分な力を持っていて、しかも自分の身を守る力もあるんですから。私と違って、1人でもどうにかできるのは、この世界では大きいでしょう」


私としては聖女であることが続いたから少し、いや、かなり新鮮なんだけど、結ちゃんはそんな私に少しばかり嫉妬をしている様子。

守られる側で、自分では何かあった時にどうにもできないということの不満はよく理解できるよ。

私だって、最初の世界で身体強化系の魔法を覚えるまではいつ何があるかわからなくて本当に不安だったから。


でも、だからこそ寄り添える。

気持ちがわかるから、何となくほしい言葉もわかる、


「大丈夫ですよ。聖女の力にも自分を強化できるようなものはあるはずです。それを習得できるまでは、私もできる限り守れるようにはしますから」


「ありがとうございます……でも、それはそれでご迷惑をおかけしているようで申し訳ないのですが」


「そこはお互い様ですよ。こっちだって団野さんの言葉がなかったらきっとここまで国の手厚い保護は受けられなかったはずです。自分の適性だってはっきりとは分からなかったでしょう。だから、私も団野さんには感謝しているんですよ?」


にっこりとほほ笑んで、感謝を伝える。

ここでほしいのは、自分が寄り添えるものがあるという安心感。そして、寄り添うものが簡単には離れないという保証。

私はそれを今提示できる立場にいて、実際定期的に示している。

おかげで、ここまで必要なのかは分からないくらいには好感度も稼げている気がするね。


普段なら、ここまで言えば少し沈黙が続いた後、「そうですか」という言葉だけ返ってくる。

今日も途中まではそうなりそうな雰囲気だったんだけど、途中で少し何かを思い出した様子となり変化が起きた。

その口からは、


「あっ……今更ですけど、敬語を使わなくてもいいですよ。私はこれが素なのでこのままいきますけど」


なんて言葉が。

ただすぐに表情を微妙に崩して、


「とはいっても、加藤さんもきっと無理にそれをしているわけではないですよね?変なことを言ってすみません」


「いやいや~。そう言ってもらえるとありがたいよ!お言葉に甘えさせてもらおうかな~。慣れてはいるけど堅っ苦しいしゃべり方してるのは疲れるんだよねぇ~」








「…………へ?」


長い沈黙の末、結ちゃんの口から出る気の抜けたような声。

本気で脳が受け付けていないことが見て取れるよ。


そりゃあそうだよね。

さっきまで抑えて従者っぽさを出していたとはいえ聖女オーラを出していた人間が急に明るい元気人間になったんだから。困惑しないほうが珍しいと思うよ、

でも残念。私ってそういう人間なんだ!いくらごまかすのに慣れたとは言っても、結局こっちのほうが楽なのは間違いないんだよね!


「やっぱり無理に肩ひじ張ると疲れるじゃん?逆に結ちゃんはすごいよね~。あっ、ごめん。許可取ってないけど結ちゃんって呼ぶね?結ちゃんはそんな感じで疲れたりしないの?なんかいつもキチッとしてると面倒くさくらない?」




「…………あっ、そうです、ね」

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