7:豚箱にぶち込まれ
結局、目的の隣国に到着したのは夜だった。
残念ながら外から様子がどうなっているのかはわかりにくい。
けど、悪いことばかりでもない。
暗くて見えにくいのは、私たちだけでなく隣国の人たちも同じこと。
だから、
「飛びますよ」
「えっ!?壁を蹴って上るんですか?」
久々(とは言ってもまだ数時間しか一緒にいないけど)に聞いた、結ちゃんの驚く声。
私は今、絶賛壁キックによる侵入の最中。
ゲームなどである壁キックというものがまさに当てはまる形で壁の上のほうまで来ていて、そこまで音もたてずに10回ほど壁を蹴ったあたりで超えきることができた。
ただ、直後にビィィィ!!!!というけたたましい音があたりに鳴り響く。
「どうやら不法侵入者用の警報装置があったみたいですね。バレましたか」
「そんなもの、あそこの都市にはなったのに」
召喚された場所になかったからここにもない。その認識が命取り。どうやら油断をしてしまっていたみたいだね。
人がたくさんやってきて、あっという間に包囲が完成される。
これは絶体絶命の大ピンチ!
………というほどではないんだけど、驚いたことに本当に個々の人たちはレベルが高いみたい。
私が包囲される前に抜けようかなと思っていたんだけど、抜けられるような穴がほとんどなくてびっくりしたよ。
「何者だ!」
「こんばんは。夜分遅くに失礼します。私は…………いえ、この方は、聖女様です」
「は?聖女?」
「ええ。聞いていませんか?聖女様を召喚した国が、征服皇なる人物に攻め込まれた、という話を」
「………は?」
警備のトップっぽい人が出てきてくれたので、軽く事情を説明する。
さすがに情報網のほうはまだそこまで発達していないようで、こちらの事情を説明しても困惑されるだけで終わってしまったよ。
「仕方ありませんね。では、私たちは明日まで待ちましょう。それまでに情報を集めておいてください…………あまり聖女様のお疲れを貯めたくないのですけどね。召喚されたばかりだというのにこのような長距離を移動するなど負担も大きいはず」
言いたいことだけ言って、私は結ちゃんを抱えたまま壁から飛び降りる。
足止めは食らうけど、しばらくすると向こうも話が本当であったなら放ってはおけないということみたいで、
「と、とりあえず拘留所にいてもらう。食事と寝床は用意してやるが、嘘だったら承知しないからな」
「ええ。ウソではありませんから構いませんよ」
寝床と食料はもらえた。
これでやっと一息つけるね。
「今夜の寝床は牢屋ですか。なかなか刺激的ですね」
「そう、ですね………」
食事をしながら話をしているけど、結ちゃんは半分寝ている。
いい加減負荷がかかりすぎて限界が来てしまったかな?
「お疲れ様です。おやすみなさい」
「まだ、話…………」
まだ話したいことがある。
そう言おうとしたのかもしれないけど、残念ながら結ちゃんは睡魔に逆らうことはできなかった。その瞼がすっと閉じられる。
今回に関しては特に私が何かしたわけではない、本当にすんなりと眠ってしまったよ。気持ちだけではどうにもならに程度には疲れてたんだね。
これは私にとっては好都合。
結ちゃんの目がなければいろいろとできることも増えるからね。
一応留置所内だから外からの監視はあるけど、結ちゃんほど近くにいるわけでもないからいくらでもごまかしようはある。
まずこの状況で私がやることは、
「………さすがにあれで滅びるほどではない、かな?」
前の世界で推定主人公さんを観察していた時にも使っていた遠くを見る魔法を使うこと。
これがあれば、かなり離れた場所にいる今でも私たちを召喚した国様子を見ることができる。
この魔法の難点は近くに画面が現れてしまうことなんだけど、ある程度離れた位置の相手には画面を透明なものとして認識させられるような魔法も一緒に開発してあるから今なら気にせず使える。
確認した限り、召喚された場所が局地的に襲われただけで国のほかの地点に大きな被害はなさそう。大なり小なり影響は出ると思うけど、数日で国が滅ぶということはさすがになさそうだよ。
見たところ、驚いたことに首都的な場所と思われる召喚された場所より圧倒的に高い防衛能力を持っているような都市が何か所かあるから襲われても今日見たようなあっけない敗北まではしないんじゃないかと思うね、
「ただ、安心はできない」
防衛能力が高いところがあるとはいえ、大事な場所に敵が侵入してこれてしまったこともまた事実。すぐではなくても、ずっと安心していられるほどの状況でもない。
となると、やっぱり必要になるのは情報だね。
征服皇と呼ばれていた人やその国がどの程度の強さを持っているのか。いま私たちがいる国はどの程度の力を持っているのか。そして、安心して逃げられる場所はあるのか。
今のうちに把握しておかないといけない。
いつ決断を迫られるのかなんて私にもわからないから。




