6:人を隠すなら
「そろそろ完全に追手もいなくなったのではないでしょうか?」
「か、かなり走りましたからね………」
追手を振り切るという段階から正直に言えばかなり時間が空いてはいる。
念を入れてできるだけ引き離して人目につかない場所までやってきたんだけど、もうここは人目につかないどころが人気がない森の中。都市からはすでに脱出してしまったね。
都市の防衛のためなのか道中壁のようなものもあったけど、私たちは(というより主に私は)何も問題なく超えられた。
屋根伝えに走ってジャンプすれば巣の状態から少しだけ身体強化しただけでも十分だったよ。
「さすがに壁も外から超えられることは警戒しても、内側から超えることは想定されていませんよね」
「単純に加藤さんがおかしいだけだと思いますけど。あんなに簡単にジャンプするだけでふつうは越えられませんから。なんなんですかあの跳躍力は。立ち幅跳びで世界記録でも狙ってたんですか」
「まさか。私は普通の女子高生として生活していただけで、そんなことはしたことがありませんよ」
「どこにそんな身体能力がバグってる普通の高校生がいるんですか………」
ここですけど?
いったい結ちゃんは何を見ている院だろうね。私はこんなに普通の女子高生なのに…………という冗談はさておき、少しまじめな話をしようか。
「これからどうしますか?一応行先は先ほど教えてもらった隣国にしようと考えているのですが」
「私もそれでいいと思います………いえ。すみません。無責任ですけど、分からないです。どうすればいいのか、さっぱり」
視線を落とす結ちゃん。かなり疲れが見て取れるね。
移動は私がお姫様抱っこをしていたし運んでいる最中も揺れなどで衝撃が来ても問題ないように身体強化系の魔法をかけたりはしていたんだけど、さすがに精神的な疲れも重なってしまうとどうにもならない。
慰めの言葉の1つや2つかけてあげるべきかな?
正直あまり変な拗らせ方をされると、私にあたってくるなんてことになりかねないからね。それが正しいかどうかはともかくとして、今の不満の原因が私だという結論にたどりか疲れてしまった場合好感度を上げるどうこうの話ではなくなってしまうから。
「それが普通ですよ。私にだって正解はわかりません。ただ私に与えられた情報が隣国に行くというものしかなかったからこうした選択しかできないというのが現状です。正直、いろんな危険性や面倒ごとを無視して追手のことだけを考えるのであればこの森の中にしばらく潜伏するというのも手ではないかとすら思えてしまいますね」
「森の中に潜伏………食べ物とかどうするんですか?」
「無視した危険性や面倒ごとに含まれています」
「なる、ほど」
結ちゃんは考え込むような様子を見せる。意外と悪くないとか思っているのかもしれないね。
私としてもなくはないと思っているよ。一応食用の植物の種は相変わらず服の中に仕込んであるし、実際のところ食料に困ることはない。
森の中の動物なんかはわからないけど、さすがに私がどうしようもできないような危険なものはいないと思うんだよねぇ~………見た目が無理っていうパターンがないとは言えないけど。
そうしてしばらく、2人して森にとどまるかどうか悩んでいた。
けれど、
「いえ。森は出ましょう。さすがにリスクが大きすぎます。情報を得るためにも、隣国を見てみるだけ見てみることにしましょう。征服皇だとかいう人がいつ来るかもわかりませんし、行くなら早いほうがいいはずです」
「分かりました。では、また行きましょうか」
「また、ですか」
結ちゃんはあきらめた表情。それに内心苦笑しつつも、聖女スマイルを崩さずお姫様抱っこさせてもらう。
そしてまた走り出すんだけど、道中ぽつぽつと結ちゃんから話を振ってくれるようになり、
「そういえば疑問に思ったんですけど、どうして私のことを聖女だと信じた人が多かったんでしょうか?私は雰囲気がそこまで聖女っぽいというわけでもないと思うのですけど」
「確かに表情も硬いですからね。この世界の一般的な常識はわからないので何ともいえないとしても、とりあえず私のイメージする聖女という印象からは少し外れていますね」
ちょっと痛いところを突いてきた。
当然、これには私が頑張って従者の役をやってアピールをしたことも原因の1つではある。
ただ、実をいうと私が今までの世界の力を使ってこっそり光などを差し込ませて結ちゃんの聖女っぽさがアップするように細工していたんだよねぇ。
下手なことを言って私の力がばれてもまだいやだし、ここはご都合主義ってことにさせてもらおう。
「聖女の力。もしくは主人公補正というものかもしれないですよ」
「なるほど?主人公補正はともかく、召喚されてもらった力の影響と考えればおかしくはないですか………それにしても、な気はしますけどね」
「いえいえ。召喚された後に出した光のことを考えれば、力は間違いなくあると思いますよ………あっ、あそこに何か人工物っぽいのが見えませんか?」
「本当ですね…………ごまかされたような気がしますけど気のせいでしょうか」
V界隈がざわざわしてて作者の心もざわざわしてます




