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5:人の温かみ(冷めないとは言ってない)

「加藤さんの身体能力バグってませんか?明らかに聖女じゃなくて戦闘系の力を授かってますよね」


「そうですか?これくらいならこちらに召喚される前からできましたよ……ただもしかすると、私は聖女を守る騎士的な立ち位置として召喚されたのかもしれませんね。タイミングがあればもう少し自分の適性については調べるべきでしょうか」


「これを召喚される前からできるって……いったい何をもとの世界でやってたんですか?」


口調は落ち着いている。表情もそこまで変わらない。

でも、お姫様抱っこ状態だから分かる。その心拍数の高さが。焦りが。そして、混乱が。


結ちゃんを抱えて走ってはいるけど、今のところこうして軽い会話をする余裕くらいはあるよ。

もちろん、召喚される前からできたというのは嘘じゃない。ただ、その召喚されるという時点がいつかというのを言ってないだけだね。さすがに軽い子とはいえ、最初の世界に召喚される前の素の身体能力ではこんな風に抱えることは無理だったよ。

でも、今なら基本的な身体能力の向上を常に使っているから(割と制御もできるからばれないし、防御力や動体視力も向上するため突然の事故などの予防にもなる)、何も問題なく大柄な男の人3人くらいまでなら余裕で抱えて走れるはず。


「追手もある程度は撒けていそうですね」


「そうですね。魔法でこちらを見ていたら分からないですけど、目視できるところにはいないはずです」


「とりあえずはそれで十分でしょう」


まだこちらの世界の魔法などに対する理解が足りていないから、油断なんてものはできない。

それでも、追手が見えなくなったというのはかなりの安心材料になる。

一応私が使える気配を察知する系統の技術でも近くにそう言った人たちがいないことは確認ができているし、


「一度落ち着いて逃げる先を決めましょうか。情報収集もここならできそうですし」


「そうしますか?」


追手がいなくなったからと言って。周囲から人がいなくなったというわけではない。

私たちが召喚されたのは国の重要な場所っぽかったし、たぶん大都市の中央部にでもいるんじゃないかな?当然周囲には私たちを心配そうに見ていたり怪訝そうに見ていたり不思議そうに見ていたりする人が大勢。

注目が集まってしまっているのはあまりよくない気もするけど、人がいるならば聞き込みにはちょうどいい。


「皆様お騒がせして申し訳ありません。こちらにいらっしゃるのは本日召喚された聖女様にございます。できれば距離を保ったうえでお話を聞いていただけると幸いでございます」


「なっ!?聖女様!?」

「本物なのか!?」

「でも、なんでこんなところに聖女様が?」


ざわめきは起きるものの、しっかりと距離は開けてくれる。これで完全にアピール、というほどではないにしても話を聞かせる体制を整えられたね。

ただ、もちろん私が聖女として紹介した結ちゃんにはとんでもないものを見る目で見られているけど。さすがに急すぎたとは私も思うけど、聖女が従者を1人も引き連れていないっていうのは現状だと信用性に欠けてしまう気がするからどちらかがこんな役回りをするしかなかったんだよね。

そして、結ちゃんの場合は経験が浅いからとっさにこうして周囲に距離を取らせることはできなかったはず。

心は痛むけど、頑張ってもらうことにしようか。


「聖女様。簡単で構いませんので、ここまでお越しになられた理由の説明と求めておられる情報の共有をしていただけませんか?」


「…………分かりました」


いやそうな雰囲気がひしひしと伝わってくるけど、そこはスルー。うなずいてもらったので話をしてもらうよ。

私たちが襲われた話をすれば簡単に民衆の同情、というほどではないけど納得は得られて、


「もし何かあれば、俺が聖女様をお守りしますよ!」

「俺もだ!」

「僕も!」


聖女をみんなで守るという雰囲気ができた。

ここからさらに逃げる先などの情報を求めるといろんな話を聞くことができて、


「………行くなら、どうぞこのお肉を!」

「使っちまったもので申し訳ないですけど、このかばんを持って行ってください!」

「少ないですけど、お水です!」


さらに物資まで提供してもらえた。

どう考えても持ってはいけないと思えてしまうけど、無理やり私が身体強化をして持ち上げる。とりあえず、逃げるまでの間に物資で困るってことはなさそうだね。


「皆様の施しに感謝いたします。聖女様も皆様の行いを決して忘れることはないでしょう」


「うぉぉぉ!!俺は聖女様のお役に立ったんだ!」

「聖女様万歳!」

「「「万歳!!」」」


私がお礼を言い、結ちゃんが軽く頭を下げれば民衆は大盛り上がり。テンションは最高潮に達しているよ。

ただ、民衆の熱は高まるのも早いけど冷めるのも早いもの。


さすがに盛り上がったし時間をかけすぎたのもあって追手がいい加減やってきてしまって。


「ギャアアァァァァ!!!!!征服皇だぁぁ!!!???」

「勝てっこねえよぉぉぉ!!!」

「来るなぁぁぁ!!!」


民衆は散り散りに。

守ってくれるというのは何だったのかとは思うけど、特に最初から期待していたわけではないから落胆はない。

それよりも、


「さあ。団野さん。混乱している間に逃げますよ。抱えますね」


「え?………またこの格好ですか」

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