3:ヒーローは遅れてやってくる
「聖女様。大聖女様。お二人のお姿とお力をぜひとも民たちに見せてあげていただきたく」
「私たちの力を、ですか?」
「はい。お二人の姿を見れば民たちは感動でむせび泣き多大なる幸福を抱くことでしょう」
「は、はぁ。そうなのですか?」
召喚されてから2時間ほど。
結ちゃんとの話し合いを続けていたら、途中で部屋に人が入ってきたかと思うと国民に向けて姿を見せることをお願いされてしまった。しかも、力を使ったアピールもセットで。
正直これは予想外。
今までの世界でも多くの人に向けてアピールをした経験はあるけど、初日にこうしたイベントを持ってこられたのは初めてだよ。初日なんてまだ慣れていなくて大変な時なんだから、通常ならさすがにそんな詰め込み方はしないと思うんだけど。それこそ前の世界(カスの王子がいた世界)ですら配慮があったというのに。
言葉にはしていないけど結ちゃんも驚いた様子ではあるし、わずかながらに緊張の色も見える。
「多くの人のためと言われたらただ姿と力を見せるだけですし断る理由もありませんが………具体的にどういったことをするのか教えていただいてもかまいませんか?」
「ええ。もちろんですとも。ただお姿を見せてもらって我々のお願いするタイミングでお二人の力を示していただくというだけのことでございます。案内も我々が行いますし、難しいことは1つもございませんとも」
「なるほど。そうなのですか」
これに関しては本当とも嘘とも判断がつかないね。
国民が歓迎ムードなら指示に従って愛想よくしていれば難しいことなんて何一つないはず。
ただ問題は、純粋に歓迎をしていないパターン。
前の世界がそうだったけど、召喚した権力者サイドが嫌われている場合は少々厄介なことになる。もちろん私たちに対して敵意を向けてくる人がいることもそうなんだけど、それ以上に面倒なのは私たちに対して現政権の介入と変化を期待されること。
正義の味方のような役割を期待されると、役割上身動きがとりにくくなってしまうんだよね。何せ、権力者がそういった声があることを理解していないはずがないから。
民衆からの期待と、権力者からの「わかってるよなお前?」という圧力、この2つを同時に受けてしまうと非常に行動しづらい。
ということで、国民感情の把握ができないと私たちがこの場で出ていくべきなのかも変わってきてしまうんだよ。
だからこれに関しては、出て行ってみないと分からない、
ということで、こんな時に先達としては無責任かもしれないけど、
「団野さん。どうされますか?」
結ちゃんに尋ねてみることにした。
なお、ここで出ないという選択をした場合も問題はいろいろとあるよ。
国民感情があまりよくないもの場合は、聖女召喚が嘘だったのではないか。もしくは召喚した聖女が余計なことをしようとしたから独占できるように監禁をしているのではないか。そう考えさせてしまって混乱を引き起こすリスクが高まってしまうね。
そこまで国民感情が悪くない場合でも、出てこないと心配になることは間違いない。国に対しても聖女に対しても不安を持つことになるだろうね。
ということで今回の決断は正解という正解がない難しい選択肢となってしまっている。それを私は結ちゃんに丸投げしたというわけ。
もちろん急に振られた結ちゃんはただでさえ困惑と緊張を抱えていたというのに私にはしごを外されたことで余計にそれを加速させ、
「とは言いましても、国民の皆様がどういった方々かわからない以上決めることも難しいかと思われますがどうでしょうか?」
「そ、そうですね。それはその通りです」
私が即座にフォローを入れる。結ちゃんは急いでそれに食いついてきた。
正直こんなことを言ったって何か進展があるわけでは人だけど、結ちゃんの好感度稼ぎと依存稼ぎのためにマッチポンプに近いことをさせてもらったの。
あえてはしごを外して焦らせ、即座にフォローを入れて私の言葉に飛びつかせる。こうすることでさらに私の言葉を必要なものだと思わせられるというわけ。
さぁて。どんどん依存させていくぞ!
「では、私たちが姿を見せるという前に皆さんの様子をこっそり確認するということは可能でしょうか?こちらといたしましても皆さんの様子を先にみておけば安心できますので」
「なるほど。それも道理ですな。我が国の民がどのような気質かわからなければ警戒するのも当然。これは配慮が足りませんでしたな」
「いえ。ご対応いただけるのでしたら十分ですよ。それでは団野さん、行きましょうか」
「は、はい」
私は右手を差し出し、結ちゃんの手を引きながら案内の人についていく、
さりげなくボディータッチをすることで好感度を稼ぐことができるって聞いたからこういうことも積極的にしていくよ!…………これは異性の好感度のあげ方の話だった気もするけど今はそんな細かいこと無視無視!
なんて、結ちゃんの好感度の稼ぎ方のことしか考えてない状態で集まっている人々の様子を確認しに行ったところ、
「フハハハッ!2人も召喚できたのであれば、1人くらいもらっていってもかまわんだろう?愚民らもそう思うよなぁ?」
「ぎゃ、ぎゃぁぁ!!」
「征服皇だぁぁ!逃げろぉぉぉ!!!」
集まっていた人々は逃げまどい、代わりに軍隊らしき集団が周囲を占拠している様子が確認できた。
結ちゃんと私はお互い視線を交わし、うなずきあう。
これはおそらく、結ちゃんのヒーローがやってきたということなんだろうね。
短編を新しく投稿しました
「予言の力で株を買い占めたら、冷徹な氷の公爵閣下に「君の投資先は私だけでいい」と監禁気味に溺愛されています 〜婚約破棄されましたが、経済の力で王国を買い取りますわ〜」
タイトルとか大まかな流れなどはAIに丸投げしてみてます
これが人気になったら作者は泣きます




