2:仲よくしないと
「………強引に進めちゃってごめんなさいね」
「いえ。お気になさらず」
召喚され、もう1人の子に大きな力があることが発覚してから数分後。私たちは2人だけで個室にいた。
気づけていなかったけれど、もう1人のこの方は寡黙なタイプみたいであまり会話は弾まない。とはいっても悪い子ではないみたいだから気まずいだけでそれ以上に悪いことがあるわけでもないんだけどね。
ただ、ここで私たちが不仲だと物語の何らかの力によって対立構造が出来上がってしまうかもしれない。
ということで距離を縮めてみるためにも少し踏み込むことにして、
「私は加藤独と申します。よろしくお願いします。あなたのお名前をうかがってもいいですか?」
「団野結です」
違うよ?踏み込むっていうのは自己紹介をするってことじゃないからね?そこを踏み込んだものだと思うほど私はコミュ障じゃないから。聖女をこれだけ長くやってると今更そこで緊張したりはしないから、
踏み込むというのはそういうことではなく、ここからの話で、
「団野さんは、異世界に転移するようなお話をご覧になったことはありますか?」
「一応。人並みに」
「では、この状況に既視感のようなものは?」
「…………あります」
どうやら結ちゃんも異世界物の知識はあるらしい。しかも、この状況になるような作品まで知ってるときた。
これは話を弾ませられる気がするよ。
「では、あの場で団野さんの力を見せずに終わらせていたら私がひどい目にあってましたよね?」
「かもしれないです」
「逆に団野さんとしてはあそこで力を見せないほうがいい結果を手に入れられたかもしれませんが………」
「いえ。大きな不幸を経験した後に幸せになるパターンもあるので、その不幸を引かなかっただけ良かったと思います。お気になさらず」
「そういってもらえるとありがたいです」
今までで1番結ちゃんに長くしゃべってもらえた気がする。これは関連することなら話をしてくれるんじゃないかな?仲よくする糸口を見つけられそう、
なんて思っていたら、
「ただ、これからに関しては注意が必要だと思います。私たちの考える展開に実際に発展していくのだとすると、この国にいることは危険が伴いそうですから」
なんと向こうから話を進めてくれた!!これはもう仲良くなれるといっていいんじゃない?
勝ったなガハハッ!お風呂入ってくる!………この世界にお風呂があるのかはわからないけど。
と、舞い上がってないでちゃんと返事をしないと!
「そうですね。警戒のためにも情報収集は必要でしょう。ただ、どうやってその危険を察知するための情報を集めるのかは………」
「現状だと特に手はないですね」
「う~ん。聖女の力とやらでどうにかできたらいいんですけど」
全然手がないことはないけどまだ結ちゃんのことを信用しきれるかはわからないから黙っておこう。
こっそり国内国外両方の状況を今まで身に着けてきた魔法で観察させてもらおうかな、この世界の魔法の強さがどの程度かわからないから私の今まで積み上げてきた成果がどの程度通用するのかはわからないけど、できれば緊急時に私の全力聖女パンチで解決出来たらいいなという願望はあるよ。
なお、そうでなくても結ちゃんがこちらに協力的なのであればどうにでもできてしまう気がする、
なんたって原作主人公ポジなんだから、集まっていた人たちが驚くくらいには圧倒的な力だったみたいだし、多少無茶をすればいくらでも好きなように動けはすると思う。
もちろん、聖女の力の内容次第でやり方は変わってくるけどね。
もし回復と他人へのバフくらいしかできないのであれば最悪の場合私が前に出て戦うことになるかもね。
「では、外の人たちに歴代の聖女の資料などを持ってきてもらえないか聞いてみましょうか」
「それだと見せたいものしか見せてくれないかもしれませんけど…………最初の動きとしては悪くないでしょうか。疑われるほどのことでもないですし」
結ちゃんと話し合い、外に待機している人たちに話をして書物などを持ってきてもらうことにした。
口頭での説明もどこかで受けるだろうけど、場合によっては公平な視点で書かれた資料が持ってきてもらえる中にあるかもしれないからね。
と、私はともかく結ちゃんはそんな甘い考えで頼んでみたみたいだけど、
「文字が、読めない…………」
「異世界ですからね。外国の文字だって満足に読めなかったというのに、世界が変われば読めるようになるなんて言う考えではだめだったのでしょう」
経験があったからこうなることは想定済みだったけど、結ちゃんは茫然としている。
おそらく、今後どうやって生きていけばいいのかわからないとか思っているんだろうね、文字が読めないというのがかなりのデメリットだから。読める人からすれば文字を読めないで普段の生活を送るなんて想像できないと思う。
けど、
「この世界、そもそも識字率はどの程度なんでしょうね?それ次第で不便さは変わってくると思いますけど」
「っ!確かに。こういう世界なら識字率が低いのもあり得る。それに、もしかしたら文字を解読できる魔法もあったりとか?」
ちょっと気分が戻ってきたかな?
このままフォローしていけば気持ちが回復するときに私の言葉があるという刷り込みができて好感度が稼ぎやすくなるかも?
これは全力でやるしかない!




