プロローグ3
見覚えのある壁。見覚えのある家具。そして見覚えのある天井。
「…………あんまり天井で見覚えがあると思ったことがないけど、天井って本当に知ってるか知らないかの判別に使うことがあるのかな?」
変なことが気になって独り言を口走ってしまうけど、その声には少なくない喜びの感情が含まれている。
私は今、2つ目の世界を乗り越えて元の世界に戻ってきていた。
前回と同じなら時間の経過とかはないはずだけど、全く同じものだという確信もないから安心はできない。現状の確認をするためにスマホを確認していたりすれば、コンコンコンッと扉をノックする音が聞こえてくる。
「おーい。まだ寝てるの~?」
「いや、起きてるよ~?」
声をかけてきたのは妹。
どうやら寝ていると思われていたらしい。
別に召喚される前に長い時間寝ていたという事もなかったはずだから違和感がある。となると、
「全然声をかけても返事がなかったから心配しちゃたよ~。もう5時なのに起きてこないし」
「あっ、もうそんな時間?」
そんな時間とは言うものの、私自身それが早いか遅いか分かっていない。
ただ確信したことはあるね、声をかけても返事がなかったという事は、やっぱり私はその間部屋にいなかったんじゃないかな?召喚されて帰ってくるまでにタイムラグがあったんだと思う。
前回とは明らかに違うけど、これは世界が違うからかな?召喚の仕方が違うからそのないだの時間の流れ方も違う、みたいな?
とりあえず違いの把握はできたから、着替えとかして異世界召喚の証拠の隠蔽をしないと。
「というか、また勉強一からやり直さないといけないのかな。辛い~」
前回もかなり頑張ったって言うのに、また振出しに戻ってきてしまったかもしれない、大変だったから二度とやりたくはないとも思ってたんだけど、そういうわけにもいかないよね。
勉強が突然遅れるなんてことになったらかなり不自然だからね、他にも忘れていることは多いし、頑張らないとなぁ。
なんて考えて私は戦々恐々とはしたものの、幸い底前で不審がられるようなことにはならなかった、
どうやら前回召喚された時の影響がまだ残っているようで、私の不審な行動はある程度普通の物として扱われることが多かった、
喜んでいいのかは分からないけど、バレるのよりは断然マシかな。
会話も久々に気を完全に抜いてできて、
「そういえばさぁ~、独は女の子は対象になったりするの?」
「対象って、何の?」
「恋愛の。だって、ロン毛で清潔感があって、しかも高身長でクールって男の人より圧倒的に女の人で多くない?女の人も対象になるならかなり選ぶのは楽になるでしょ」
「それは確かにそうだけど、私にそういう趣味はないんだよね~」
こんな私の好みの話なんていつぶりだろう。
召喚された後は1回もこんなことはできなかったから、召喚される前にとして以来だよね、こういう話ができると安心するし純粋に楽しい。
でも、考えてみると友達が言うような好みをしていれば楽だっただろうね。考えたこともなかったけど、今時そういう好みだったとしても変だとは言われにくいし条件に合う人は多かったともう。
今どきは恋人の1人や2人いたかもしれないね、
いや、2人もいたらダメか。
「そもそも作りやすいって言われても信用しきれないんだけど。私ってそういう女の子にモテる性格してる?」
「独もそういう趣味の人から見れば対象になるんじゃない?男子にもそれなりにモテるし」
「モテる?私が?そうだったっけ?」
聖女だった時は確かにモテる(というには少し神聖視されていた気もする)けど、それ以前の普通の学校生活でモテていた記憶はあまりない。
もちろん嫌われているというほどではないけど、そんなに男子との距離が極端に近いタイプでもないし友達の言葉は疑っちゃう。
その後は誰が持てるのかなんて話で盛り上がって、たわいない時間が過ぎ去って行く。
けど、私の心に引っ掛かり続けるのは対象を広げるという事で、
「確かに性別にこだわる必要はあるのか分からに鴨?異世界にいるスライムとかなら性別はなくても私の理想に近い体に変化できるんじゃないかな?」
そう考えると異世界に希望が持てるような気もした。
逆にそういうパターンは物語だと人を騙して捕食するための擬態であることが多いけど、それでさえなければ、それこそテイムとかしちゃえたら好みのイケメンをテイム出来るってことと同義なわけで、とても背徳的な単語に思える。
さすがにまだ私としても対象を女の子にまで広げるというのには違和感と言うか抵抗があるけど、逆に性別ないし種族の枠も超えると抵抗とか無くなるよね。
なんて、思っていたのがまたまた悪かったのか。帰宅して宿題をしている最中に私の足元からぶわっと光が溢れだして、
「もしかしてまた転移!?」
急いでしまっておいた他の世界での聖女用ドレスを取りに行こうとしたけれど、失敗。
つかみ取る前に私の体は世界から消えてしまった。
しかし、あながちこうなってしまったことも悪くはないのかもしれないと直後に思う、
なぜならそこには、
「ん?ここは?」
「…………どこ?」
「聖女様が2人!?」
召喚をしたのだろう人達。
貴族っぽい人や騎士っぽい人など大勢が集まっている。
そしてもう1人、私の隣には私と同じように制服を着た女の子が若干困惑したような声をだしていた。




