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19:足りなかったもの

「思ったほど危険な魔法はありませんでしたね」


「何を見てその言葉が出てきたんだ」


一通り新しい魔法など試してみたけど、魔王には結局かすり傷が増える程度の結果しか出せなかった。

もちろんかすり傷すらつかないようなことも多くて、そこまで危険なものが多いわけではないことも分かったよ。いくつかは一般魔族さん達にも手加減せずに使えたから人間相手に使っても問題ないと思うね。


ただ、こうして魔王もあまりケガは大きくなく私も常に強い結界で身を守っていたから無傷なんだけど、それ以外が無事かと問われると全くそんなことはない。私の包囲に使われていた一般魔族さん達はことごとく大けがをしていたり、そうでなくても疲労困憊と言った様子。

ほとんどが地に倒れ伏していて、たまに気力を取り戻したら魔法を撃ってくるかなと言う程度でしかない。

あんまり長いこと放置していると命の灯が消えてしまいそうだけど、その辺りを魔王はどう考えているんだろうね?このまま放っておいて本当に良いのかな?

確認しておこう。


「それで、まだ続けるおつもりですか?」


「こちらはまだまだ戦えるぞ?そちらはもう限界が見えているのか?」


「私も特に消費の激しい魔法は使ってませんので問題ありませんよ。ただ、魔王さんが大丈夫でもそのほかが限界を迎えそうなので」


「部下が何人死のうが弱体化するわけではないぞ」


「しかし、その後の統治能力に大きく影響が出るでしょう?数が減れば減るだけ魔族の統治は揺らぎやすくなります」


「…………ふんっ。逆らうものがいるならそれはそれで面白いがな」


そうは言うものの、その言葉が出るまでに少し間があった。

さすがに余裕をもって統治ができるほど魔族にも人的な余裕があるわけではに観たい。

となると、ここで終わりになることを期待してもいいかな?


と、思ったんだけど、さすがにそれは考えが甘すぎたみたい。

終わりには近づいているようだけど、


「ではこれで最後にするとしよう。ここで仕留めに行く」


「おや。それは怖いですね。まず近づかれないように立ち回る必要がありますか」


最後にはやはり攻撃がおまけで突いて来るらしい。嫌になるね。

もちろん、最後の攻撃と言うんだからそれは今までの比ではに凶悪さを持っている。

魔王からは今まで感じたことがない程強大な圧が発せられて、その魔王の攻撃が来る前に下から倒れ伏している魔族たちの魔法が飛んでくる。


「っ!?」


「油断したな、聖女!!」


私の意識が一般魔族さんに映った一瞬のスキを突いて魔王が接近。

こちらとしてはそもそも近づかれないように立ち回るつもりだったからこの流れは完全に向こうの術中にはまってしまったと言ってもいい。

ただそれでも痛いのは嫌なので全力で回避のための行動をとらせてもらい、結界を更に強い物にしつつ魔王にこれまで試してきた中で効果のありそうだった魔法をありったけぶつけていく。


「それで止まると思ったかぁ!!」


幾ら効果があったと言っても、それはかすり傷をつける程度。それで止まってくれるほど魔王は甘くない。

全ての攻撃を全身に浴びながらも強引に突破してきて、その攻撃は私の結界へと触れた。

結界は強く軋み、私が攻撃から逃れるように身をひねり終えたところで完全に破壊された。


結界は壊れてしまったけど、ギリギリ私自身には当たらずに終わらせられた。

次の攻撃が来る前にはまた結界を張り直せるし、どうにかできる。

そう思っていたところで急に嫌な予感がして、


「ッ!」


振り返ってみれば、私の視界に飛び込んでくるのは綺麗な、しかし力強い拳。

その後に引っ張られるようにして金髪がついてきている。

それは間違いなく推定主人公さんであり、この展開を狙われていたのだとようやく理解した。

魔王や魔族だけに私が意識を集中させて他の可能性を頭から排除していしまう、この瞬間を。


推定主人公さんの奇襲は攻撃が当たる前に声を出してバレるというような漫画などで有りがちなお粗末なものではなく、ほとんど音もなく正確に私へと一直線に向かって飛んでくる形で行われた。

すでにそれは間近に迫っていて、回避など不可能な距離まで来てしまっている。

私はその攻撃を体で受け止めるしかない。選択肢など、残されてはいなかった。


「…………まあ、当たりはするんですけどねぇ」


「っ!力が!?」


当たった。間違いなく当たった。

顔面ではないけど、しっかり私の腹部にクリーンヒットした。

けど、私はびくともしない。なぜなら推定主人公さんの力は、完全に私のかけたバフに頼ったものなのだから。それを解除してしまえば、何の力も持たない非力なご令嬢でしかないのだから。


「確かにそのバフは私が命を落としたとしても消えるものではありませんが、だからと言って私が簡単に取り外しできないようなものでもないんですよ?」


「なるほど。すっかり騙されておりましたわ」

「届いたは届いたが、届かぬのと変わらんかったか」


魔王と推定主人公さんはそろって悔しそうな表情に。

どうやら結構入念に準備して計画を立ててきたみたいだね。そんなに私に攻撃をすることにこだわりがあったのかな。一体何の恨みがあるというのだか(←推定主人公さん含めて追放された人々に苦しみを与えた元凶)。


なんだか相手が推定主人公さんだとは言ってもそこまでシッカリ害意を持っていられるとむかつくので、


「お返しです。防御力はあげて差し上げますけど、覚悟はしてくださいね?」


「え?…………ガハッ!?」


聖女パンチをお見舞い。

防御力はあげてあるからケガをすることはないと思うけど、何枚も壁を破りながら遠くに吹き飛ばされているのがよく見える。

リアルバイバ○キンだね。


「でこちらにもお返しは必要ですよね」


「っ!?ま、待て…………ぐはぁぁっ!?」


ついでとばかりに、推定主人公さんが飛ばされた方向を心配そうに見ていた魔王さんも殴っておく。

油断してたからか完璧に顔面を捕えられたため、綺麗にきりもみ状態になりながら吹き飛んでいってくれたよ。

決まり手が聖女パンチになるなんて思わなかったね。


「これで戦いは終わり、でしょうか?」

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