126:束ねた力で押し込む
私の横を通り過ぎた砲撃。
対して放たれた天空城塞ガストロリトスの対空砲がぶつかり爆ぜる。
これに紛れる形で私も拡散フラッシュブラスト。直後に集束型を連射しながらの突撃に入る。
この後方からのと私からの。これらを迎え撃つのとその出どころを探しながらの砲撃とその余波をくぐり抜けて、私は天空城塞の一角にレックスアックスを叩きつけに。
しかしこの一撃は逆に振るわれた刃とかちあい、止められる事に。
私の一撃を止めてみせた結晶体のブレード。それを振るった腕から肩、上体と天空城塞からせり出してくる。
それはまさにガストロリトスの顔をした一機の機械生命体であった。
「この程度は対応してくるか」
「あまりなめてかかってくれるなよ!」
押し合いになった斧を滑らせ抜けた私に遅れて、ガストロリトスは残る半身をズルリと分離。スラスターを吹かして追いかけてくる。
それも一体だけではない。パーツの差異こそあれど同じ顔と飛行能力を備えた機体が次々に天空城塞と分離してくるのだ。
なんというか、卵鞘から孵化した虫の群れのようだな。
孵化と一緒に羽化まですませて飛びたった無数のガストロリトス。私はその先頭へ右手の斧を投擲。反応の遅い一体が直撃を受けて爆散するも、後続はこれに巻き込まれぬように大きく散開、追跡を続けてくる。
少々うっとおしいが、あれら分身体ひとつひとつに構っていても仕方がない。落とすならば母体、城塞の側だ。
この判断から牽制の拡散フラッシュブラスト。
防御姿勢をとった分身体と、それを盾に凌ぐ者たち。そこへダブルウイングからのエネルギーミサイルをダメ押しに放って顔型の天守へ。
その私の軌道を塞ぐように置かれたエネルギー弾に、私は牛頭盾を前にぶちかます。
そうして爆散したエネルギーを突き破った私はそのまま火を噴く盾を待ち構えていたビーム槍衾に叩きつける。
スラスターのパワーとフルオプションの重みを受けたガストロリトスフェイスどもは、円錐状に固めていたエネルギーの跳ね返りを浴びながらも金属の足場を削り踏ん張る。
そうして健気なまでにこらえる集団。そこへ両脇からもエネルギー刃を振りかぶった連中が切りかかってくる。
これに私は斧やソードウィップ、膝の鋏を用いて受け止める。
こうして動きを止めた私へ、遠間から大砲を向けたガストロリトス顔の連中が。
嘲笑のリズムをその目に刻んだ大砲担ぎは、同じ顔をした前衛が間に入ったままなのにも関わらず、その砲口に灯した輝きを躊躇無く放つ。
が、今まさに引き金を引こうとした連中へ、光が放物線を描いて降り注ぐ。
この隙に私は押さえにかかっていたガストロリトスの分身体を振り払う。
「おのれッ!? さっきからチクチクとうっとおしい輩がッ!?」
私に振り払われた飛行型らと大砲持ちども。それらが先のチャンスを潰した者へ、怒りの光を灯した同じ顔を向ける。
果たしてその先にはまたも砲撃を放つ空中戦艦が。
「レイア様ッ!! こちらには構わず、敵の本体を叩いてくださいッ!!」
「ええい! それをやられて対処しなくてはならんのは私なんだぞミント君!?」
「サンダーホイールさん! レイア様を援護する為に来たのが私たちなのでしょう!? 逆に助けられては本末転倒ではありませんか!? 砲座の操作ならば我々人でも出来ますからッ!!」
「それは、そうだがなッ!?」
「サンダーホイール殿、多少の無理は通して構わん。足と連射砲で間に合わない分はこのメイレンとホンシンが止める」
「それは頼もしいが、その頼もしいのが振り落としてしまいそうな甲板に出ているのも恐ろしいのだがッ!?」
健気な忠義と現実とを投げつけあう喧々諤々とした言い合い。これを垂れ流しにする頼もしき我が部下たち。
この遠慮ないやり取りには思わず笑みが溢れてしまうな。
彼らを乗せているのは当然ペルセイース。武装を含め、いま揃えられる艤装の出来る限りを備えた我が空中戦艦である。
直接合体出来るオプションパーツ組とは別に、乗組員共々に控えさせていたのが合図ひとつで臆することなく駆けつけてくれたと言うわけだ。
「ば、バカな……!? その艦、ビッグバンを基にしたというのか……ッ!?」
「ああそうだ。断片を、だがな。話を聞くに物騒極まるだけの代物であったが、こうしてマトモな仕事が出来るようにリサイクルされて喜んでいる事だろう。少なくとも取り込まれていたサンダーホイールはそうだぞ」
愕然としたガストロリトス顔の声に応じつつ、光鞭に繋いだ斧を横薙ぎ。間合いの内にいたヤツらを切り払う。
当たったののうち何体か。頭の潰れた個体が爆散する中、私はペルセイースからの援護砲撃を受けて天守へ。
「なんという……なんという事をしてくれたのだ貴様はァーッ!?」
そんな私に激して放たれた波動砲。
超高温を帯びたこの激流を私は炎を噴き出した盾を前に受け、流す。
私とてさすがに無防備に受けては熔解するだろうそれを天空城塞の一角に浴びせ、その余波が起こす陽炎を蹴散らす形で私は再びの前進。
「なんという事をと言われてもな、ただの有効活用であろうが?」
「アレの! ドコが! 有効だとほざくッ!?」
心底の疑問と共に戻ってきた斧を城塞に叩き込んでやれば、憤りの声と共にその裂け目からエネルギーが噴き出す。
「かの秘宝を手にしておきながら、何故取り込まぬッ!? 何故己の力としないッ!? そればかりか、小さく弱い生き物に与えるような……あんな、あんなつまらぬ形にッ! 何故やったッ!?」
荒んだ声が上がる度に上がる凄まじいエネルギー。無傷の表層さえ破って飛び出すそれを、私はかわしつつ、凌ぎつつ前へ前へ。
しかし、何故ヤツと同じようにしないかなどと問われてもな。価値観の相違としか言いようがない。
その相違が流通と相互利益を生むこともあれば、このような無理解に繋がる事もある。ままならぬものよ。
「おのれ……モノの価値の……力の価値の分からぬ輩がッ!?」
「繰り返しになるがそれこそ私とお前の価値観が相容れないだけの事だ。どう言われようとも、私は有効的に再利用をした。その自信は揺るがん」
城塞そのものが軋むほどのガストロリトスの憤り。そしてヤツ自身である機械城塞を切り捨てる。
対するガストロリトスは私へ――そして部下を乗せたペルセイースに向けた波動砲を。
まずい。
いや私は先のように凌げる。
しかし凌いだ後で庇いに行くのには、この翼をもってしても間に合わん。
ならば私に向かうのを無視して――。
「らーしくないってーのニクスレイアッ!!」
この私の判断、そして飛空戦艦に向かう砲撃を遮るモノが。
いくつもの波動弾。そしてエネルギーの回転刃を盾に射線に割り込んだ彼女は怒涛に叩きつける波動の奔流を見事に空へ受け流してみせた。
「感謝するぞペリトロペーッ!!」
「おーいおい。助けられてからこっちまで、そっちに借りを作りっぱなし。それじゃーあいられないってーだけだっての!」
大物を受け流した勢いそのまま、ペリトロペーは軽口を叩きながらペルセイースに迫る攻撃を捌いてくれる。
そうして後顧の憂いを断ち、背を押す彼女に私は改めて光信号で感謝を告げて討つべき敵に刃を向ける。
この行く手を塞ごうと割り込んだガストロリトス顔を至近距離のフラッシュブラストで吹き飛ばし、体当たりで跳ね飛ばす。
そうして城塞の中核たる大頭へ突撃。その額を斧で叩き割る。
「……もう、良い」
しかし割れ砕けていくガストロリトスの頭は低い声でつぶやく。
そして私がその意味を問うよりも早く爆発。この余波に流された私が翼を広げて制動。気配を追って天を仰げばさらに高く、高くへと駆け上るモノがあった。




