125:見よ、この偉大なる姿を!!
「コアトル! プテラ!」
呼び寄せていた味方増援。その先導役を担っていた二機に呼びかけ、私は飛び上がる。
この背中にコアトルウイングを前、プテラウイングを後ろの形でドッキング。二対の翼を持つ飛行ユニットとして合体完了する。
翼を得た私はクラブアンカーを装着した両足を前にブースト。デカい的を目掛けて真っ直ぐに突っ込む。
砲兵と合流、取り込もうとしていた鋼の金属塊はこの私の突撃に波動砲の弾幕を。
だがぬるい。この程度の厚みでは私の突撃を前にしては紙切れ程度でしかないぞ。
鋏を使うまでもなく弾幕を蹴破った私の両足はメタルの寄せ集めに突き刺さる。
城塞ほどのサイズを持つガストロリトスの切り札は、しかし圧倒的な質量差をもってしても私の蹴りに押し負け傾ぐ。
だがこの結果で満足して蹴り足を引くような慈悲は私には無い。四枚羽根が持つスラスターのパワーを緩める事なく、突き入れた足からさらに深く、深く不定形の機械塊を引き裂き続けてやる。
「ぐ、お、おのれニクスレイアぁあッ!?」
全周囲からの破砕音と混じる苦悶の声。貫通排出を狙ってか、反射的に蠢き形を変える機械塊。
この中を私は出来うる限りに厚みのある箇所を探って掘り進めてやる。
しかしそれにも限界がある。ヤツが城塞サイズを持て余している風だとはいえ、意思に従い自在に動く塊だ。思っていたほどには居座れずに放り出されてしまう。
空に躍り出た私は四つのウイングを振るって制動。スラスターのパワーを全開に離脱する。これに遅れて無数の波動砲が私の居た空間を貫いた。
そのまま空を走る私を追跡する連射砲と、行く手を塞ぐ弾幕作りとの分業が始まる。
追う側と先回りする側。挟み撃ちに追い詰めようとするエネルギー弾に、私は両腕両脚のソードウィップ、加えて拡散型のフラッシュブラストにて迎え撃つ。
こうして生じた暴発したエネルギーの渦と、それが生む空隙。
しかしこの輪郭を押し潰さんばかりにエネルギー弾が私に集ってくる。ので私は膝からの光鞭の先、シザーエッジが掴んだモノに向かって足から。
牽引とブースト。これを掛け合わせた速度に乗り、クラブアンカーの構築した脛装甲を盾にしての強行突破。
その勢いにまかせて炙られた装甲からガストロリトスに激突。
しかし今度はそのまま貫きにゆくのではなく、羽ばたいての宙返り。合わせて開いた両腕から伸びた編み上げソードウィップで切り裂く!
そこからすぐさまに伸び切ったままに解き、拡散フラッシュブラストを置き土産に付かず離れずの間合いで疾駆を。
駆け巡りながら伸びに伸びた光鞭を引きずるようにして裂傷を作り続ける私に、ガストロリトスは不定形の機体に障害物を生み出しながら、私を挟んだ先にボディがあっても躊躇わずに砲撃を放つ。
直撃狙い、あるいは通行止め目当てに突き出す機体の一部。それらをあるいは引き裂きあるいは撃ち抜きと破壊し続ける私であるが、程なく辺りが暗くなる。
不定形のガストロリトスがほぼ全方位を取り囲む形で私を包囲。天からの光の大半を遮って見せたからだ。
これで完全包囲。逃げ場無しの集中砲火で始末する。とでも思っているのだろうな。
取り囲んだガストロリトスが高笑いと共に一気に光を灯した瞬間、私の伸ばしていたソードウィップの内二本が戻って来る。その先にメタルの塊をそれぞれに結びつけて。
「ブルシールドッ!! レックスアックスッ!!」
左と右。双方から挟み込む形で武器を手にした私は右手の斧を投げ放ちつつ、左肩の猛牛盾を前に突撃。
エナジー・ソードウィップと繋いだアックスブーメラン。それに加え全身を牛頭の盾からの炎で覆って。
重く断ち切る回転刃を先導役にした大火球と化した私はやすやすと集中砲火を突き破り、振り切る。
その勢いは留まらず、私を押し潰そうとしていた不定形なガストロリトスの機体をもやすやすと貫いた。
「うーむ……現行のフルオプション装備であっても加減が難しいな。抵抗も計算に入れていたつもりだったのだが、な」
四枚羽根を広げて空にブレーキをかけた私は散りゆく炎を帯びつつ、己の力が起こした結果を眺める。
ガストロリトスの巨大な頭に定まりつつある機械の塊。その頬に開いた赤熱した大穴は交換修復もままならぬまま溶けた金属を血のように垂れ流している。
あの空間はアレの口の中であったか。まあ閉じ込めた私に対する攻撃としては溶鉱炉めいていたので、胃袋の方が近い気もしたがな。しかしどちらにせよ気持ちの良い話では無い。
「お、おぉのれニクスレイアぁあッ!? そ、それほどの性能では、なかったはずだろうに……ッ!?」
「ああ。私も驚いているぞ。二つ三つの同時装備の試験は試しているが、ここまでのパワーアップをしたデータは確かにない」
「であるならばどうして……!? どんな機構を仕込んだと言うのだッ!?」
「知らぬさ! 単なる相乗効果というものだろう。しかしそれにしては妙な事だな。その巨体を作るのに私の比ではない数をそちらは取り込んでいるというのに?」
煽りとひと欠片の純粋な疑問。
この二つから生じた問いかけに、ガストロリトスの大顔はその目のみならず、顔中のセンサーアイを憤りに瞬かせる。
顔だけの姿で。その全体に激しく光を灯すものだから、なんというかその様は過剰なデコレーションめいた化粧でも施したかのようですらある。
「誰が顔面イルミネーションかッ!?」
おっと口に出てしまっていたか。いや私はそこまで言っていないが?
そんな私の抗議を無視してバカみたいなサイズにギラギラした顔面はその光の全てから砲撃を放つ。
照準のセンサーばかりでなく、臨界の砲口も混じっていたというわけだな。
これに私はブルシールドのメイスも加え、武装オプションを先端に施した四つのソードウィップを伸ばして飛翔。
私を狙うのはいい。敵にとっては相対し、強大で目障りな相手であるだろうからな。
だが、そのついでとばかりに私の育てた共同体を狙う砲撃は通せぬ。これで我が支配地、我が民を焼かれるのは断固として見過ごせんぞ。
回転する斧、開ききった鋏、これらが触れる端から波動弾を切り払い。チェーンハンマーと化した赤熱鉄塊が砕いてエネルギーの嵐を起こす。
それらに加え、牛頭盾を前に飛翔する私自身から体当たりを仕掛ける形でガストロリトスが放った砲撃を破壊し尽くしてやる。
「ふん。ご苦労な事だ。それほどの力を持ちながら、背後の小人どもの盾になるとはな。余裕があって結構な事だ」
そうして後方狙いの砲の始末している間に、苛立ち混じりの皮肉が。
声色に多少は落ち着いた響きが戻ったのも当然か。一発も通さなかったとはいえ、ヤツの思惑に乗せられるまま態勢を整える間を与えてしまったからな。
「あいにくと私は欲深でね。これまで大切に育ててきた支配地をお前ごときに傷つけられるなど、もったいなくて我慢がならんのだ。ただでさえ、やがては私のモノとなる地域とそこに住まう民に消耗を強いてくれているというのにな」
そうだとも。いずれこの星のすべては私の支配下に降るのだ。それを好き放題に荒らされるままになどしておけるモノか。
この欲望を内心にレックスアックスを向ける私に対し、デカいガストロリトスヘッドは展開。
大小様々な無数の砲台。それらの合間に立つ電磁シールドを城壁代わりに展開するだろうトラップ。メインを張るそれらの合間に、多種多様な武装の仕込みが垣間見える。
そんな防備の奥。中央部には二回りほど小さくなったガストロリトスヘッドが。
俯瞰して見れば、おそらくあの頭を中心としたサイズだけでない天空の城塞として完成しているのだろう。
「なるほど認めよう。お前の力は大したモノだ。だがいくら大きな力を持っていようが、その欲望を抱えきれるモノか?」
「うむ……一理ある。しかし、いつから私が一人きりでこの欲望を抱えるつもりだと思い込んでいたのだ?」
私のこの言葉に応じるように、天空城ガストロリトスを狙っての遠距離砲撃が、私のすぐ脇を通り過ぎるのであった。




