第632話 開幕の咆哮
日曜日
「じゃ、いってきます」
「はぃ、いってらっしゃい」
ミオンたちに見送られ、竜籠に乗り込むのは俺とルピ、レダ、ロイ。
シャルたちはスウィーに盆地の神樹に妖精の道を開いてもらい、そこを抜けてキジムナーの里へと直行してもらう。
「お願いします」
「ぁぃぁぃ」
翠竜の姿に戻ったエメラルディアさんが竜籠を持ち上げると、俺のことを心配してるのか、ルピが膝の上に甘えてきた。
心を落ち着けるためにルピを撫でつつ、今日の予定を脳内でおさらい。
まずは港へ行って、トゥルーたちと合流。昨日、追加で捕った魚を積み込んで南の島へと飛ぶ。
キジムナーの里でシャルたちと合流。リゲルを召喚して、前回と同じ道で教会へと向かう予定。
教会でナットと合流したら、その後は会議だったり、食事会だったりと忙しくなりそう。
欲しい物があったらすぐ買えるようにお金も結構持ってきたから、門前町を覗いてみたいところではあるんだけど……
「っくょ」
「あ、はい」
いろいろ考えてるうちに港へと到着。
竜籠を降りると、いつものようにトゥルーが飛びついてきた。
「お待たせ。じゃ、まずは昨日捕った魚を運ぼうか」
「キュ〜!」「「キュ〜」」
たくさん捕まえたオランジャック(アジ)を持っていくんだけど、ガジュたちが欲しがるようなら、そのまま渡しちゃおうかなと。
それで足らなくなったら、干物とかベーコンでなんとかしよう……
………
……
…
『ショウ君。スウィーちゃんたちが向こうに着いたはずです』
「さんきゅ。こっちもそろそろ着くと思う」
竜籠にはトゥルーとおつきの2人。山小屋の頃に使ってた魔導保存箱に大量の魚。
結構重くなったと思うんだけど、エメラルディアさん曰く、全然余裕とのこと。
「みぇた、ょ」
「了解です」
「キュキュ〜!」
トゥルーたちも南の島が見えてテンションが上がっている。離陸した時も大騒ぎだったんだよなあ。
エメラルディアさんがゆっくりと下降していくのを感じつつ、待つことしばし……
「っぃた、ょ」
「ありがとうございます」
竜籠がしっかり地面に着地したのを確認して扉を開ける。
「ジュ〜!」
「キュ〜!」
トゥルーがガジュと会うのも久しぶりかな? 仲が良さそうで何より。
それはそれとして、シャルの頭の上に座ってアームラ(マンゴー)を貪り食っているスウィー……
まずは持ってきた食材を竜籠から下ろしてもらう。ガジュたちが欲しい分は、持っていっていいことも伝えて。
「ワフ」
「うん。<召喚:リゲル>」
「ブルルン♪」
リゲルを召喚して、これで全員そろったかな?
ラズはフードにいないので、白竜姫様とお昼寝してるんだろう。
「ニャ?」
「うん。そうだね」
食材を里の外へ運び出すのは、マスターシェフさんと合流してから。
けど、いつでも運び出せるよう、門の前に集めておこう。
「トゥルー、ガジュー、行くよー」
「キュ〜」「ジュ〜」
みんなを集め、そろそろ出発……っと、その前に、
「ミオン。そろそろだけど」
『あ、はぃ。ログアウトしてスタジオに行くまで、少し待ってください』
「りょ。ゆっくりでいいよ」
島で白竜姫様たちと遊んでてもいい気がするんだけど、ベル部長やセス、マリー姉やポリーも来るのでと。
ゆっくりと門のところまで、みんなで歩いていると、
『お待たせしました。あ、あの、ショウ君。門の外に待ってる人たちが大勢いるみたいです』
「え?」
俺の出待ち? いや、俺っていうか俺たちか。
エメラルディアさんが飛んできたことを知って、集まってきたらしい。
ルピとかリゲルとかを一目見たいって感じなのかな。
『大丈夫でしょうか?』
「うーん、大丈夫だと思う。けど、何かあったときに、ルピやリゲルが反撃でやりすぎないかの方が心配だよ」
うちの子たち、大人しいと思われがちだけど、敵だとみなすと容赦ないからなあ。
ガルムライトニングやフロストピラーをぶっ放さないか心配……
「ジュ?」
「うん。開けてくれる?」
『気をつけてくださいね』
ミオンの声に頷き、キジムナーたちが扉を開けてくれるのを待つ。
大きな門が開くと、次第に「おおー」とどよめく歓声が聞こえてきた……
「ワフ!」
「よし、行こう」
先頭はルピ、レダ、ロイ。その後ろにリゲルに乗った俺が続く。
右にガジュたち、左にトゥルーたちがいて、最後尾はシャルたちがきっちりと整列して続く。
「ショウ君だ!」
「ルピちゃんかわよ〜」
「妖・精・王! 妖・精・王!」
想像以上に人がいてびっくりなんだけど、軽く会釈だけして外周コースを進む。
……なんか俺たちが通る道が、用意されてるみたいに空いてるんだよな。
『ショウ君たちが移動しやすいよう、交通整理されてるそうです』
「マジか……」
『手を振ってあげてもいいんじゃないでしょうか?』
うーん、なんか恥ずかしいんだけど、俺たちのために道を開けてくれるって聞くとなあ。
「ワフ!」
「ん? おお、すごい!」
アームラの林の入り口に、ずらっと並んでお座りしている狼たち。
その後ろにプレイヤーさんたちが立っているので、これみんな相棒なんだろう。
「ルピ、いいよ」
立ち止まったルピに合わせて、みんな一旦停止。
神獣化を発動して大きくなったルピが、
「ウオォォォォ〜ン……」
と遠吠えをすると、
「「「オォォォ〜ン……」」」
レダやロイ、並んでいた狼たちが全員で遠吠えを始めた。
それが収まったところで、観客(?)の人たちから大きな拍手が送られる。
まあ、俺ができるサービスってこれぐらいだよな。










