第631話 お祭り前夜
「こっちの告知があがったわよ」
「こちらも告知しました」
夜。明日のコラボライブに向けて、みんなで告知の作業と確認を。
ベル部長とミオンが、それぞれのチャンネルのお知らせ欄に明日のおおまかな予定を投稿したので、念のためチェック。
時間が決まっている部分はライブの開始と終了だけなんで、そこまで気を使う必要もないけど。
「うん。大丈夫だと思う」
「良さそうですねー」
ライブ以外のスケジュールはかなり緩い感じ。
昼は午後1時すぎに俺が南の島へ行き、みんなと一緒に教会へ。
そのまま古代遺跡、採掘施設の塔で離島互助会の会議。その後はマスターシェフさんと料理をして、観光客(?)に振る舞うことになる。
夜は採掘施設の入り口前でライブをやって、そこからは自由行動って感じ。
「セレモニーの後の質問コーナーはー、ベルさんが仕切ってくれますのでー」
「任せてちょうだい!」
「お願いします。俺、知らない人ばっかりなんで……」
ラムネさんのライブは見たことあるけど、何を考えてそういう行動になるのかはさっぱりなんだよな。
まあ、それが面白いんだけど……
「ミオンさんも、遠慮せず話しかけてね」
「はぃ」
ミオンはライブの時間だけスタジオから参加。
ちょっと特殊な感じだけど、俺のプレイ視点から魔女ベルの館のウォッチパーティーっていう形式になる。
「そういや、お前はどうすんの?」
「昼は姉上やシーズン殿、ポリー殿と迷いの森の奥へ向かう予定よの。夜は決まってはおらんが、姉上たちと遊ぶつもりでおる」
「おっけ。任せた」
迷いの森の奥、前にナットからコボルトの巣があったって聞いた場所かな。
ちょっと特殊で、4階層目からインスタンスダンジョンになってるらしい。
「ナット殿は来ぬのか?」
「いや、来るぞ」
俺一人でふらふらしてると、めっちゃ話しかけられたりするだろうってことで、ナットと一緒に動くことにしてる。
そんな絡まれるかな? と思うんだけど、ナットだけじゃなく、ミオンとポリーにもそうした方がいいって言われたので。
例によって向こうの教会で合流という手はず。
「兄上はもう少し、自分がゲーム内の有名人だという自覚があった方がよい」
「そうか? ベル部長だって有名だし、普段は普通にゲームしてますよね?」
「そうだけど、私は普段からいるから特別じゃないのよ。ショウ君は自分の島以外にいるのが珍しいのだし、セスちゃんの言う通り、もっと自覚した方がいいわよ?」
めったに会えない存在だからってことか……
「ルピちゃんたちも人気ですから」
「あー、それはそうか」
ルピ、リゲル、ラズたちは、ファンアートも多くて人気だもんな。……撫でたいとか言ってくる人とかいるかな?
それも気をつけておかないとだよな。知らない人に急に触られたりしたら、ルピたちも手加減なしで反撃しちゃいそうだし……
………
……
…
「じゃ、ちょっといってくるよ」
「はぃ」
明日のコラボライブに持っていく食材は、昼のうちにほぼ準備できたので、夜は塔にあった蔵書をチェックに。
ミオンはパーン、アト、スウィーたちと城の裏庭にいろいろ植えるそうなので、そっちはお任せで。
「じゃ、お願いします」
「お任せください!」
俺のフォローをしてくれるのはセラさん。
蔵書の目録を元に、気になるタイトルの本を確認していく作業になる。
「えーっと、最初に探すのはガラス関連の本です」
「お嬢様方のデザインしたステンドグラスのためですね」
「ええ、赤と黄色のガラスの作り方が知りたくて。錬金術と関係があるらしいんで、錬金術の本を重点的に調べようかと」
「かしこまりました」
せっかく白竜姫様とスウィーにデザインしてもらったのに保留中になっちゃってるし、かといって適当にはしたくないんだよな。
錬金術に関連してそうなタイトルを選び、セラさんに持ってきてもらう。
「じゃ、この『生活と錬金術』の上下巻をおねがいします」
と言った次の瞬間に消えたセラさんが、向かい側の書架の上から二段目にある本を2冊持って戻ってきた。
「こちらですね」
「ありがとうございます」
「お茶を用意してきましょう」
ざっと確認するにしても、それなりに時間はかかるので、山小屋にいた時に作った机と椅子を用意してある。
ちなみにルピは机の下でおやすみ中……
「さて、少しでも手掛かりがあるといいけど……」
………
……
…
【錬金術スキルのレベルが上がりました!】
【錬金術スキルの基礎値が上限に到達しました。1SPが返還されました】
「え?」
「どうされました?」
「あ、いや、大丈夫です」
本読んで上限に到達することあるんだ。いや、まあ、10冊近く読んだもんなあ。
今まで『基礎錬金術』の本しか読んでなくて、それで9レベルまで上がってた方がおかしかったのかも……
「お探しの物は見つかりましたか?」
「うん。この『硝子錬金大全』にあったよ。これだけ持って帰るから、あとは戻しておいてもらえますか?」
「かしこまりました」
この本にあったのは、錬金術で色ガラスを作るのに必要な道具と材料。
基本的には魔導炉でいいんだけど、ガラスを精錬するための特殊な容器が必要らしい。
その容器の作り方も書いてあったし、素材も魔導鋼なので大丈夫そう。
「ワフ?」
「うん。そろそろ一休みして、おやつにしようか」
時間は午後9時半を回ったところ。
エルさんに連絡して、白竜姫様とエメラルディアさんも呼ばないとだよな。
………
……
…
「まずはその容器を作るんですね」
「うん。気をつけないといけないのが、それを使ってガラスを精錬すると、溶けた状態で出てくるんだって」
鉱石みたいにインゴットにしてから、もう一度熱して加工するわけじゃないらしい。
飴状になったガラスを、いわゆるガラス吹きで整形するわけだけど、空間魔法があれば変形の魔法で好きな形にして、冷めて固まるのを待つだけ。
「なるほどです」
「固まらないように容器ごと火床に置かないとだから、トングもつくらないとね」
「ぁの……、空間魔法の移動で動かすのはだめですか?」
……それでいいじゃん!










