銅属性亜巨獣型アイディオクス
「君たち、こっから先は危ないよ。アイディオクスがやってくる可能性があるから」
そう言って警備員に止められた。
もはや非常階段しか使えなくなっている。
客は全員地下へ続く非常階段を降りていて、さっき上ってきた階段は使えなくなっていた。
みんな沈んだ顔をしている。当然だ。近くにアイディオクスがいるとなると不安で仕方が無いだろう。
だからこそ、自分たちが行かなければならない。代わりに戦わなければならない。戦えない人達の生物たちの命を、人生を背負っているのだから。
K2ははっきりした口調で言う。
「俺たち、アイディオクス特攻隊です。今出現しているアイディオクスを駆除します。通してもらえますか?」
そう言って四人は証明証を提示した。
当たり前だが、アイディオクス特攻隊ならそれを証明するものは持っている。そして、いつ現れるか分からないアイディオクスに対しては常に持っているのが普通であり、義務である。
警備員は希望に満ちた顔をした。
「そういうことなら通ってください! よろしくお願いします。どうかお気をつけて」
そう言ってドアを開けてくれた。
この警備員も客や他の人と同じなのだ。やっぱり、襲ってくる存在は怖い。だからこそ守ってくれる存在はありがたい。
通してもらえたこと、気をつけてと言ってもらえたこと、それらはとても嬉しかった。
「ありがとうございます! 必ず駆除します!」
そう言って開けてもらったドアをくぐり、走り出した。
階段を下り、二階の、一階のロビーが見えるところに躍り出る。
ドオオオォォォン
同時にかなり大きな破壊音が聞こえた。
その音源はすぐ下。一階ロビーの入口の扉。
そして、赤褐色に輝くアイディオクスが足を早く動かしてカツカツと入ってくる。
全長は約5m、高さは約2mといったところの、赤褐色の手の部分がランスのようなロブスターのような形のアイディオクスがそこにはいた。
K2は気持ちを落ち着かせる。
「亜巨獣型。あれは銅か……」
亜巨獣型。昨日戦った巨獣型に比べると、大きさ、強さ、速さなど、あらゆる面で劣る。だからといって、弱いかといえばそんなことはあるはずがない。アイディオクスである以上、脅威は変わらない。だから、本気で叩くのは当たり前だ。
「あれね。K2、どうしてあれが銅だって分かるの?」
アクアがそう言ってきた。
「ほら、あの背中らへん見てみ。少しだけ青くなってるところがあるでしょう? あれはおそらく酸化してるんだ。そして、赤褐色の光沢のあるあの装甲。あれは銅のほかないだろうな」
「なるほどね」
そういうと、K2はみんなの方を向いた。
「じゃあ、これから行動を開始する。今回は被害をできるだけ少なくする。まず、都記奈はこの建物内の避難等の対処。ユーキャンは外をお願い。俺はその間あいつの気を引く。アクアは俺の援助をしてくれ」
「「「了解」」」
そういうと、全員e波増強装置をはめた。手袋になっているこれは都記奈は防寒着としても使っているため、すでにはめていたが。
アイディオクスに対抗するにはe波が必要であるため、強いe波を出せるこれは常に持っているものである。
都記奈は館内を走った。ユーキャンは回り道をして外に出ていく。
「よし、始めよう。アクアは空間系のスキルで援助をしてくれ」
「分かった」
そういうとK2は二階から手すりに逆立ちをして見事な前宙を決めながら一階ロビーのへ舞い降りた。K2の存在に気づいたアイディオクスは身体をすぐにK2に向けた。
少し緊迫した状態になる。アイディオクスの威圧感がK2を押しつぶそうとするがK2は対抗して睨み返す。
アイディオクスは少し前進すると、いきなりかなりの勢いでK2に向かって飛んできた。右腕を掲げて突き出してくる。
K2は重心を落として構える。
「アクア! 衝撃波を抑えてくれ!」
そう叫ぶととアクアはアイディオクスとK2を取り囲むようにしてe波の壁を作る。
すると、すぐに銅属性亜巨獣型アイディオクスはさらに右腕を突き出してくる。その勢いはそれだけで足を竦ませてしまいそうなほどだがK2はそれにも耐えその右腕の先端を睨んだ。
そして、K2はタイミングを合わせてアイディオクスの右腕を両手で受けた。
勢いが一瞬にして失われると先端が顔の前に来て、K2は本気で焦った。
「危ね、危ね。頭が貫くところだったぜ」
完全に両手で止められているその腕には、受け止めるために両手から流してたe波が流れ込んでいった。
受け止めたことによって発生した衝撃波はアクアの作り出したe波の壁にぶつかり、やがて消えた。もし、アクアがそれを作ってくれなかったら、一階のガラスはほとんど割れていただろう。
アイディオクスは掴まれている右腕を素早く引っ込むと、すぐに後退した。
K2は右腕にe波を宿し、e波でできた人の身長ほどのランスを作る。それをアイディオクスに向けた。そして、K2は走り出す。e波を使って加速すると、一直線に電光石火のごとく突っ込んだ。
間合いは急激に縮まる。
しかし、ギリギリのところでまんまと交わされてしまった。
アイディオクスの後方少し離れたところまで突っ込んでから、K2はアイディオクスを向いた。
「ほう? あれを避けるかよ。」
右手のランスにe波を流すのをやめると、ランスは消えた。
窓から差し込む陽の光は一瞬アイディオクスの銅の体をキラリと輝かせる。
K2は両手に刃を作ると、また突っ込んでいった。アイディオクスに接近すると、目の前で右手で横に切る。
周りの大気を揺るがすほどの一仭にも関わらず、また外れた。諦めずそのまま左手で上方向に切り裂く。しかし、それも避けられる。
「くっ!」
一心に刃を振っていくが、当たらない。
K2の攻撃が遅いのではなかった。むしろ、衝撃波を発するほど早い。そう、つまり、アイディオクスが早すぎるのだ。
そして、アイディオクスはまた右手を掲げる。それはすぐに振り下ろされる。
まともに当たれば大ダメージになるだろう。しかし、避ければ、建物は壊れてゆく。
K2はそれを見据え、両手の刃を頭の上でクロスする。そして、降りかかる右腕を受けた。
思ったより軽い攻撃だった。それは、接触する瞬間に、アクアのスキルでアイディオクスの攻撃の振り下ろすスピードを遅くさせていたからだった。
「アクアナイス!」
そう叫んでK2はアイディオクスの腕から横にズレると、頭の前に来て、アイディオクスを背にして右手で頭部を押さえた。そして、e波を流し込む。
当然のようにアイディオクスは後ろに下がろうとしたが、後ろに下がれずにいた。それは、アクアによって、アイディオクスの後ろにe波の壁ができていたからである。
このままなら!
そう思った矢先、アイディオクスが両腕をK2の横に持ってくると、そこで素早くクロスした。
間一髪、K2はアイディオクスの真下に潜り込み、その攻撃を回避した。
すると、アイディオクスはそのまま素早く前進し、右側にあった体育館の入口に入っていく。
「しまった! アクア、ギャラリー席と体育館を隔離してくれ!」
そういうと、K2も体育館の中に入っていった。
体育館はギャラリー席と体育館の間にe波の壁ができていて、容易ギャラリー席に入れないようになっていた。
しかし、体育館は広く、ギャラリー席に入れなくても動くには十分だった。だから、アイディオクスには逃げる隙を、自由に動く隙を与えてしまう。
しかも、建物の中では、万一この建物がアイディオクスの攻撃で崩落した時に、地下に、つまり、そこに逃げ込んでいる避難者が被害に遭う。それはなんとしても避けなければならなかった。そのために戦っているのだから。
だから、このアイディオクスは外で駆除するのが最適なのだ。
この建物の避難所が地下にあるのなら、何らかの強力な防御壁か何かでアイディオクスの侵入は防がれるのだろう。それなら、アイディオクスを外へおびき寄せる途中で地下へ行こうとしても、それは防がれる。
そして、K2はつけていた細長い笛の形のペンダントを服の下から取り出した。これは父親からもらったもので、アイディオクスをおびき寄せる音色を奏でるから、必要になったら使いなさい、と言われ渡されたものだ。
そして、今がその時。
今までは使ったことはなかったので本当に効くのかどうか分からなかったが、使ってみた。
吹くと、それからはかなり高い音が出る。同じ強さで吹いているのに、音は震えていた。それは、まるで生きているものをおびき寄せるかのように響いている。
逃げているアイディオクスは最初は逃げたままだったが、笛を吹くと、誘われるようにこちらに来た。
K2は驚きながらもそのまま吹きながら走って体育館を出た。
そろそろ、外も避難が完了しているころだろう。
そう思ったK2は、壊された入口から外に出ることにした。
「アクア、外に出る! アイディオクスの後ろについて来てくれ!」
そういうと、笛を吹きながら入口に向かって走る。
アクアはe波を解き、ギャラリー席から飛び降りて走って付いていった。
そして入口を駆けて、外に出る。
K2が笛を吹き止むと、外に出たアイディオクスは攻撃をしてきた。右腕を左から右に払った。
急だったので、ついしゃがんだが、運良くかわすことができた。
すると、数メートル先にいたユーキャンがこちらへかけてくる。
同じタイミングでアイディオクスは隣の黄色い建物の壁に上った。
「大丈夫なの?」
近づいてきたユーキャンがそういうと、K2は頷いた。
アクアもやってきたところで、三人は道の真ん中に躍り出て、右からユーキャン、アクア、K2の順に並んだ。三人は黄色いその建物の壁にいるアイディオクスを凝視する。
「結界を作る」
そうK2が言うと、二人は頷いた。
そして、K2が思いっきり笛を吹くと、壁にいたアイディオクスはこちらに向かって走ってきた。
すると、三人は上に手を挙げ……。
パアアアァァァァァ……。
三人のe波が合わさってアイディオクスと三人を囲むe波の結界を作った。
アイディオクスは動きが止まり、少しだけ後退した。
「アクア、結界の維持、頼んだ」
「分かった」
アクアのその言葉を聞くと、ユーキャンとK2は手を下ろした。
e波は維持よりも発動の方が難しく、また強いe波が必要になる。だから、この結界を張るにも三人の力が必要であったが、維持に関しては、空間系スキルの得意なアクアだけで十分なのだった。
「ユーキャン、行くぞ!」
「分かった!」
そして、二人、駆け出す。アイディオクスもまた同じく二人に向かって駆け出し、両手を前に突いた。
それぞれ、その突いた腕を体を捻らせてぎりぎりで交わし、K2は腕の付け根に入り込む。
対してはユーキャンは腹の下に潜る。
K2は両手に刃を作ると付け根の上下にそれを当て、手をクロスした。そして、アイディオクスの腕はちぎれる。
装甲が固体であるこのアイディオクスは装甲を自由自在に形を変えるなんてことはできない。
落ちた腕は、今はただの銅の塊であった。
「こんな感じでどうだ!」
その頃ユーキャンは腹のあたりに手を添えていた。しかし、K2のその言葉に反応してきた。
「K2つまらない! ダジャレなんて言ってないで、ちゃんとやってよ!」
そんなことを言ってきた。場を和ませようと言ったのに冷たい反応だった。
アクアなら!
そう思い、アクアの方を見たが、いつも優しいアクアですら、冷たい目をしていた。
悲しくなった。
K2がそう思っているのと同時に、アイディオクスは体が痺れるような動きをする。
ユーキャンが電気を通したのだ。
e波を使って電気を起こす。結構難しいスキルであるが、こうしてトップランカーとして駆除にあたる人達にとっては、当然できるスキルである。
しかし、根性を見せたのか、アイディオクスはそれでも前進した。
それを食い止めるべく、K2はアイディオクスの10m離れた所の、前に立った。
そして、アイディオクスを正面に、横になって肩幅で立ち、左手を腰に当て、アイディオクスに向って右腕を突き出した。そして、手は人差し指と中指を伸ばした状態にし、銃を打つ体勢になった。
K2の前には障害物も何もない。K2とアイディオクス、見合うようにしてその場が流れた。
K2は指先に意識を集中させ、e波を集めると、一気に解き放つ。
弾丸のように放たれたe波はアイディオクスの胴体の横から生えるように出ている前足に直撃し、粉砕させた。飛び散った銅はe波の結界に当たり、勢いを失い、地面に落ちる。
「ユーキャン、後ろに回ってくれ」
そういうと、アイディオクスの下にいたユーキャンは分かった! とだけ言って、アイディオクスの後ろに立った。アイディオクスは前足の片方を失ったせいで速く動けなくなっていた。
そして、K2はまた放つ。次は反対側の前足に。
「二人とも、足を全て粉砕したら、この結界を縮めて電気を乗せてあいつにe波を流し込む! 準備をしててくれ! 合図は最後の足を粉砕したらだ!」
今展開しているe波の結界にe波による電気を流し込んで結界を縮めて、やがてアイディオクスを囲むようにしていき、その結界もろともアイディオクスにe波を流し込むという作戦を立てた。
二人は
「了解!」
と返事をするとK2はアイディオクスの足を次々粉砕してゆく。
そして、最後の一つになってそれに狙いを定めたとき……。
「「「え!?」」」
三人はありえない現象を見た。
いきなり結界が音もなく破れたのだ。
これが起こり得るのは結界を維持している人が維持するのをやめたとき、そして、外からの何らかの介入があったとき。前者はアクアに限ってそんなことが起こるはずがなかった。だとしたら、外からの介入?
その時、どこからか飛来してきた3mを超える巨大な剣がアイディオクスの背中を突き刺した。
そして、アイディオクスは叫ぶこともなく、そこで力尽きた。
装甲の内側にあった核を焼き切って、死んだのだ。おそらく、あの剣にはe波が流し込まれていたのだろう。だとしたら、これはe波を使える者の仕業だ。
確かに殺してもらえたことはありがたいのだが、これのおかげで、少なからず粉砕した背中は結界が破られたせいで周りに飛び散って、建物のガラスだったりコンクリートだったりを破壊していた。しかも、突き刺さった剣はアイディオクスを貫いて地面に突き刺さっていたために、アイディオクスの下のアスファルトもレンガも粉々に砕けていた。
誰がこんなことを……。
そう思ったK2の前に突如上から同じくらいの年の女の子が降ってきた。建物の上から飛び降りてきたのだ。
よく見るとそれは、アシュリーだった。
アシュリーは死んだアイディオクスの上に乗ると、巨大な剣の柄を握った。
そして、そこにe波を流し込んだ。それにより、剣の周りにあった銅や突き刺さっていたアスファルトやレンガは粉々に砕け散った。
そして、アシュリーはその剣を持ち上げ、肩に乗せるようにして持つ。
その剣は赤と黒と白のデザインで、いかにも丈夫そうであった。
「な、アシュリー!? お前、何してくれちゃってるわけ?」
「なに、いきなり?」
K2の言葉にそう返答したアシュリーはなんのことを言っているのか分からない顔でK2の方を見た。
「なに? じゃねーよ! せっかく、被害を少なくしようと頑張ってたのに、お前のせいで損害が激しくなっちまったじゃねーかよ!」
「知らないよ、そんなこと! ってか、そもそも、あんたがうだうだ戦ってるのが悪いんでしょうが! そんなことなら、さっさと殺せっていうのよ! 勝手に人のせいにしないでよね!」
「はあ? こんな幹線道路で損害が出たらこの後色々な障害が出るのは明らかだろうが! そんなことも分からないのか! ってか、それどっから持ってきたんだし! お前のじゃないだろ?」
「そんな、損害なんて、処理部に任せておけばすぐに解決してくれるじゃない! 生かしておくより、さっさとケリをつけた方がいいに決まってるでしょ! それと、これは本所から借りてきたやつだし! 別にあんたがどうこう言う資格ないんだから変なふうに思わないでよね! ってか、忘れてないでしょうね、模擬対戦のこと!」
「は? お前としたところで無駄だし!」
こんな言い争いをしていると、アイディオクスの後ろにいたはずのユーキャンが知らないうちにこっちの方へ来ていた。そして、
「K2、模擬対戦するの? K2、売られた喧嘩は買う主義だからね。ちょっと楽しみかも!」
なんて、余計なことを言ってきた。
「俺、そんなこと一言たりとも言ったことないんだけど……」
しかし、アシュリーはそんなK2の言葉を聞かずに話してきた。
「へー、まあ、確かにK2じゃ私の相手は務まらないわね。弱すぎて!」
本当は厄介なことは避けたかったのだが、そこまで言われればこいつの口車に乗ってやらなくもないか。
と、K2は思っていたが、実際はムキになっていた。
「ああ、上等だ! アシュリー、お前と模擬対戦してやるよ! どっちが格が上か思い知らせてやる!」
そういうとアシュリーは不敵な笑みを見せる。
「あのー、このアイディオクスを駆除したのは君たちかな?」
アシュリーと言い争ってると、横から20歳くらいのメガネをかけた青年が話しかけてきた。
「はい! 私です!」
アシュリーはそんな風に言う。
「お前だけじゃないだろ!」
K2がそんな風に言い返すと、アシュリーは少し考えてから言い返してきた。
「そうだったわね。この後ろにいる二人も駆除に当たってくれました。えーと……」
「結城葵です」
「池戸瑞稀です」
「私は芦田優里ね。よろしく」
「はい!」
そんな風に話が展開されてしまった。
「なにはともあれ、ありがとう。駆除、お疲れ様です」
アシュリーたちのやりとりを見ていた青年は、頃合いを見計らってそう言ってきた。
「後は私たち処理部にお任せください」
「はい。お願いします」
K2がそう答えると、処理部のその青年は周りを見回す。
「それにしても…派手にやりましたねぇ」
と苦笑した。その言葉を聞いた瞬間に、K2はアシュリーを指さす。
「こいつです!」
肩に担いだ大きな剣を見れば、アシュリーは言い訳をすることができない。
しかし、アシュリーは言い訳ではなく文句を言ってきた。というより、K2のせいにしてきた。
「それもこれも、あんたが駆除するのが遅いからでしょうが!」
「まあまあ。ともかく、お疲れ様です。後は任せてください」
そう、青年が言ってくれたので、また言い争うことはなかった。
「お願いします!」
そういうと、青年は笑顔でアイディオクスの方に歩いて言った。
K2は携帯端末を取り出した。気づいたら、メールが一件来ていた。
駆除したら教えて。
という文面の都記菜からのメールだった。すぐにK2は終わったことを返信すると、分かった、というようなメールが返ってきた。
「ところで二人はどこの所属なの?」
「調査部と情報部だよ」
「私も同じ」
「そうなんだ! 二つも部署受け持つと大変でしょ?」
「うーん、まあ、大変な事もあるけれど、やりがいは大きいかな」
「そうなんだ。私は特攻部オンリーだからなー。まあ、議長務めてるから他の部署には行こうとは思わないんだけど」
「あ、やっぱり、特攻部の鬼神のアシュリーってあなたのことだったんだね」
「私、そんな風に言われてるんだー」
「後輩の男子からは鬼のような人って聞いてたけど、こんなに気さくで可愛らしい人だったなんて」
「照れるなあ。可愛いだなんて! 二人もとっても可愛らしいよ」
「ふふっ、ありがとう」
打ち解けていた。とっても気が合っていた。三人が笑って話しているのを見ると、とても微笑ましく、楽しそうで羨ましかった。あの輪の中に入りたかったが、おそらく、アシュリーが邪魔だとかあっちいけだとか言ってくるだろう。
そうは言うものの、アシュリーのことは嫌いじゃない。なんだかんだいいやつだし、ミッション中はアシュリーは素晴らしい指揮をとる。
心配もしてくれるし、頼りがいもある。確かに怖いが、面白いとこも可愛いとこもある。
顔も悪くないし、後は言動さえ女の子っぽくなれば、もう、可愛い女の子なのに。
だから、嫌っているということはない。もちろん向こうがどう思ってるか別だが…。
そんなことを考えていると、いきなりアシュリーが叫んだ。
「なっ!」
K2は驚いてそっちを見る。アシュリーは睨んでいた。
「見ないでよ! 殺すよ!」
そんなことを言われた。
理不尽だ! 見ただけで?
都記菜、早く戻ってきてくれ……。
そう思うK2だった。
数分後、今までK2たちがいた建物の裏の方から人が警備員の指示に従って出てきた。
アイディオクスの脅威が去ったために避難していたお客さんが解放されたのだろう。彼らの顔には安堵の表情が浮かんでいる。
それを見るK2はやっぱり自分はあの笑顔を作るために命をかけて戦っているのだなと思った。
そして、あの大勢の人の波から都記菜がこちらに走ってくる。
途中、転がっていたアイディオクスの死体を見て笑顔になった。
「K2、お疲れ様。やったんだね。それにしても、アイディオクス、見る影もないね」
そう言って笑った。
「ところで……」
都記菜はそう言うと、まだ話していた三人を見た。
「あの子誰?」
「あー、芦田優里っていう特攻部の議長だ」
「へー。仲良く話してるね。二人の知り合いなの?」
「いや、さっき会ったばっかりだよ。なんか、すごい気があってたみたいで」
そう言うと都記菜は悲しい顔をする。
「へー、そうなんだ……。出遅れちゃったなー」
その顔には明るいものを見るような、眩しそうな表情が浮かんでいた。
「話に入ってこればいいじゃん」
「そんなことできないよ」
否定したことにK2は幾分驚く。
「どうして?」
「楽しそうに話しているところに割り込んで入ってもね。もちろん、彼女らのことだから話には入れてくれるだろうけど、今私が入ると、彼女らは今ほどの笑顔は作ってはくれないよ」
「そんなもんかな。まあ、後で話しをする機会くらいは来るだろうさ」
「きっとね」
そう言って都記菜は笑顔を作ると、K2も笑顔を返して三人のところに行った。
もちろん、話に入るなんてつもりはない。
「おい、アシュリー、やらねえのかよ!」
すると、話していたアシュリーが反応する。
「あら、そんなに私にボコされたいの?」
「どちらかというと、それは俺じゃなくてお前になるだろうな」
「いいよ、私にボコされるのが待てないドMのK2のために、今から行ってあげるわ」
「は? 誰がドMだし」
そう言うと、K2たち一行はこの近くにあるアイディオクス特攻隊が所有する訓練施設に向かった。
「は? おまえ、その剣持っていくのか!?」
「さっき、これの所有者に聞いたのよ、もらっていいかって。そしてたら、いいよっていうからもらったのよ! 文句ある?」
「あっそ」




