未来都市
結局、昼ごはんは和食料理店になった。綺麗な外見の和風のお店は高そうな気品を放っているがランチは学生に優しい料金設定となっている。
それぞれ、好みのものを頼んで食べた。味は結構美味しくて、600円前後だとは思えないほどである。
店を出ると快晴で気持ちよかった。それなのに、
「ねぇー、ゲーセン行こう?」
と都記奈が今の気持ちを否定するように言ってきた。
「いいね! 行こうか!」
ユーキャンがそう言った。アクアもユーキャンも、そして、K2もゲーセンは好きなので、いくら外にいたい気分でも、この意見は通らない。そう、K2は知っていた。
「ああ、そうだな、行こうか。すぐそこにあったよね」
今の気分を押し殺してそう言う。他の三人はK2がそういう気分でないことを察することもなく、話を進めた。
「うん、あったね。じゃあ、行こうか」
アクアが鼻歌を歌っていた。気がした。
ゲーセンはかなり大きくて、高層ビルとは比べ物にはならないが、四階建ての建物である。そして、ワンフロアも迷いそうなほど広いので、ゲーセンにしてはかなり素晴らしい。黒い外装にネオンがビカビカ光るこの建物はかなりアクセントが効いている。
中もまた同様だった。薄暗い中にビカビカ光るネオン。目が壊れてしまいそうなところに、爆音。耳も壊れてしまいそうだった。
でも、嫌いじゃない。これがまたいい、といったやつだろうか。
しかし、このゲーセンは少し違う。それは、地方のゲーセンとは違い、タバコ臭くないのだ。中は、見るとタバコ吸ってる人は多々いる。どうやら、高性能な換気システムとやらが売りらしい。
「うわぁ、ゲーセンだー! さて、何して遊ぼう?」
「うーん、まず、あそこ行こう!」
そう言ってアクアが指をさしたのは音楽ゲームがあるコーナーだった。
「アクア、好きだね。いいよ、行こうか」
みんなで歩き出す。あらゆる音が混ざり合っていて、何がなんだか分からなくなっていた。その中でアクアはスタスタと目当てのゲームに歩いていく。
斜めになったテーブルのようなところにタッチパネルとボタンがついたゲーム。それにアクアは100円を入れてゲームを始めた。
その頃都記奈はアクアの隣で同じゲームを始めていた。K2とユーキャンはそれを後ろから見ている。
都記奈はやった事がないらしく、一番簡単なeasyモードを選択していたが、対してアクアは一番難しいhardモードを選択していた。
曲が流れ出す。
どうやらそれぞれ違う曲を選択していたらしいが、モードのレベル差もあるのか、手が動くスピードが明らかに違う。しかも、都記奈は手をわたわたさせていたが、アクアは慣れた手つきでボタンを押していた。
曲が終わると、K2は二人のタッチパネル部分を覗いた。ポイント差はかなりある。
一回で三曲できるらしいこのゲームを終わらせた二人はほぼ同時にこっちへ来た。
「ふへー、難しいー」
そう言いながら都記奈が歩いてきたが、アクアは無言で歩いてくると、もう一回やるね、と言って、またゲームの機械に戻っていった。
結局アクアは合計五回くらいやっていて、他の三人はその後ろでアクアのゲームも見ずに話し込んでいた。
アクアがゲームを終わらせると、一階にいた四人は三階に上ってきた。
二階はUFOキャッチャーのコーナーだが、それをする人はこの四人の中にはいなかったので、一階とは違うゲームが置いてある三階に来ていた。
三階は特にいつもやってるゲームとかはないのでそのフロアを回っていた。
「あ、ねえ、誰かあれやらない?」
そう言ってK2が指さしたのは次々と現れるゾンビを倒していくシューティングゲームだった。
「いいよー。二人までなんだね、どうする?二人はやる?」
そう都記奈が言うと、ユーキャンとアクアの方を向く。
「私はいいや」
「私も」
二人がそのような反応を示したので、K2と都記奈の二人でやることになった。
二人プレイは200円なので、それぞれ100円ずつ入れてゲームを始める。
置いてある拳銃を手にすると都記奈は画面を向かってまっすぐ立って、両手で持って拳銃を向けた。対してK2は画面に対して横になって立って、片手で腕を真っ直ぐにさせて構えた。
ゲームが始まる。次々と現れるゾンビの頭に画面上に出てくるポインターを当て、引き金を引く。
その一発で頭が吹き飛ぶと、ゾンビは呆気なく崩れ落ち、もう二度とそのゾンビは立たなかった。
そして、次々と倒れてゆくゾンビ。K2は現れた瞬間撃ち殺し、もはや瞬殺というべき偉業だった。
やがて、ボスの前に来ると一度も攻撃を受けずに速攻倒してしまった。
そして、次のステージへと進む。
結局、どちらも一度も攻撃を受けずに全てのステージをクリアさせた。
最後に出てくる成績はどちらもSSランク。そして、120%の数字。
その後出てくるランキングでは一位を飾った。
「都記奈、やったな!」
「一位だね!」
そう話していると、ずっと見ていた二人が駆け寄ってくる。
「さすがね!」
アクアが声をかけた。
「まあね、得意だから」
そう言うと、四人は次やるゲームを探しにこのフロアを歩いた。
「あ、見て! すごいゲームがあるよ!」
そう言ってユーキャンが指さしたのはアイディオクスという名前のゲームだった。
「ちょっと行ってみようぜ!」
といってK2はそちらに歩き出すと、みんなもついてくるようにしてアイディオクスというゲームに向かって歩いた。
アイディオクスというゲームの前に来ると、そこには大きな画面と、その前に1mないくらいの柵で覆われた2平方メートルほどの空間がある。
そして、その空間と画面の間の台に目と頭を1周させるようになっている物があった。目のところはサングラスの二つのレンズが繋がったような形の半透明の黒い物がついていた。それと、二つの黒い手袋があった。
どうやら新しいゲームらしく、何もない空間の入口となる柵のところに遊び方が書かれた紙があった。
「なになに……うん、なるほど。どうやらね、あのヘンテコなものを頭にはめてグローブをしてゲームをするみたい。なんか、街の中でアイディオクスを倒すみたいなゲームらしいよ。あれを頭につけると目のところに街が映し出されて、それにグローブをはめた手をかざして倒すみたい。なんか脳波でどうこうらしいよ。そして、右腰あたりに道具をセレクトするところがあって、それも駆使して出てきたアイディオクスを倒すみたい」
「なるほどねー、ものは試しでユーキャン一回やってみてよ」
そうK2がユーキャンを指名すると、ユーキャンはちょっと嫌がるが結局柵の中に入ってゲームを始めた。
「頑張れー!」
と都記奈が言うとサングラスのようなものをかけたユーキャンが頷いて画面の方を向く。ユーキャンはレベル選択画面でhardを選んだ。選べるなかで一番難しいやつだった。
すると、画面に人の後ろ姿と他に一人もいない灰色の建物に囲まれた曲がった道が映り、中央にSTARTの文字が現れ、消えた。
それと同時に、大画面に映るプレイヤーは動き出す。
画面には上の方に体力バーと、右下にツールバーがあった。
「あー、なるほどね、これはすごい!」
と、ユーキャンは興奮気味に言った。
画面に映し出された人の後ろは大きな壁になっていて進めないので、反対に伸びる右のカーブのかかった道を進んでいく。
柵の中にいるユーキャンはおかしな動きをしていて、笑ってしまうので、ずっと画面を見ていた。
不意にゲームのスピーカーからすごい呻き声と共に何かが壊れた音がする。
この音でこのゲームの周りを歩いている人が柵の周りに集まってきた。
「すげー、このゲームやってる人がいるよ。これ、難しいんだよなー」
こう言っている人がいた。
街を進んでいく画面の中の人は知らない間にアイディオクスの目の前にいる。岩属性巨獣型アイディオクスだった。岩に囲まれていて、画面の中の人とは比べ物にならないくらい大きいアイディオクスの周りは人が住めないほど街が壊れていた。
「これから勝負が始まるぞ」
周りに集まっていた誰かの声と一緒に、画面の中の人はアイディオクスに向かって走り出した。
アイディオクスはゴツゴツとした腕を地面に叩きつける。と、同時に左に避け、腕に飛び乗った。すると、その腕を伝って胴体に近づき、頭の上に乗って手を添える。
多分、このゲームでもe波が存在するのだろう。添えた手からはe波と思えるものが出てきて、アイディオクスの頭部の岩の装甲を壊した。
「すげー!」
それと同時に野次馬の歓声。
壊すと、画面では右下の端にあるツールバーから手にはめる形の大砲のようなものをセレクトした。すると、右手にそれが装着され、壊れた頭部に向けてe波を放つ。
アイディオクスはよろめき、しかし、伸びてきた手に掴まれ、叩きつけられそうになった。
その時、アイディオクスは手から放した。いや、手が粉々に砕けていた。
小さな大砲のようなものをはめた右手とは逆の、左手には腕と同じくらいの長さの剣のようなものが握られている。握られた時に道具を選択していたらしかった。
反動で後ろに少し下がったアイディオクスを追うようにして近づき、アイディオクスの胸のあたりに右手の大砲を添えて、放った。
そして、ゲームオーバー。
それと同時に周りからの声が響いた。すげー! だのありえねー! だの、色んな声が飛び交う。
そして、画面には成績が出された。
結果は……二位だった。一位とは僅差で負けている。
「なっ、これよりすごい人が!?」
K2はユーキャンの見事な戦いを見たあとで結果が二位だったということに驚いた。どうやらK2の隣にいた二人も同じようだった。
身につけていたグローブとサングラスのようなものを外したユーキャンは柵を通って出てくる。
「一位になれなかったなー。でもね、すごいよ、これ! めちゃくちゃ楽しいかも!」
興奮気味のユーキャンがそう言ってきた。
「K2、やってみなよ!」
ユーキャンが名指ししてきた。
「分かったよ。じゃあ、ランキング勝ったらジュースおごってね」
「望むところだよ」
そうやりとりして、K2は台に置いてあったグローブとサングラスのようなものをはめた。そして、台の下の方にあった穴に100円を入れる。
K2が画面を睨む。レベル選択画面が出てきたのでユーキャンと同じhardを選んだ。STARTの文字が出てきて、消えた。
映像はとても綺麗で、街もとてもリアルにできていた。音も映像も、頭に取り巻くそれのおかげでかなりの臨場感がある。
K2は念じることによってプレイヤーを動かした。
数秒で動かすのに慣れたので、走って、街の中を進んでいった。途中、何かが壊れる音が聞こえたので、そちらに向かう。
向かいながら右の腰あたりに表示されているツールバーでアイテムを確認すると、拳銃だったり爆弾だったりなど、たくさんあった。その中の拳銃をセレクトすると、右手に拳銃を持ちながらアイディオクスがいると思われる方に走っていく。
道を抜けていき、開けたところに出ると、さっきと同じアイディオクスがいた。
しかし、画面で見るのとは大きさや臨場感などがまるで違う。不意におぉと、声を出してしまった。
出会い頭、右手の拳銃を構え、両足両腕を打った。素晴らしいほどにe波が再現されていて、思うように手足を封じることができた。
よろめくアイディオクスの目の前で右手の拳銃を上に投げた。ほぼ真上に飛ぶと、それを狙って右手を開いて向け、e波を放つ。
それと同時にプレイヤーはアイディオクスの真下に入った。
その頃拳銃はというと、右手から放たれたe波によってさらに上へ飛んでいった。
下に潜ったプレイヤーはアイディオクスの両足にそれぞれ片手ずつ添え、e波を放ち、プレイヤーの後ろの方へ手をスライドさせる。その結果、アイディオクスは足がすくわれ、後ろに倒れた。
それと同時にプレイヤーは上に飛び、見事な前宙を決め、胸のあたりに飛び乗った。
飛んでる最中にアイテム選択して出した、右手にはまった小さな大砲をアイディオクスの胸に押し当て、強力なe波を放った。
アイディオクスの胸の装甲が壊れるとはめている小さな大砲を外し、右手に剣を左手に爆弾を出した。
アイディオクスの砕けた胸からは核が見えたので、剣を突き刺し、e波を流し込んで核膜を切り裂いてから切り口から爆弾を突っ込んだ。
それと同時にさっきの拳銃が落ちてきたので右手の剣を離し、それを取った。
左手を核に向け、同じ右手で持った拳銃の銃口を核に向けると、容赦なく引き金を引く。
左手で爆弾が爆発する衝撃を抑えるためにe波を出すと、同じくらいのタイミングで核の中の爆弾が爆発した。
そして、剣を引き抜こうとしたところで目の前にゲームオーバーの文字が現れた。
「あれ、もう終わり?」
ふと、K2がそんな言葉を洩らすと、目の前にスコアとタイムとランキングが出た。どれもユーキャンには優っていた。しかも、二位と少し差をつけて一位に躍り出た。
thank youの文字が現れると同時に頭のものとグローブを外し、台に置くと、笑顔で三人を向く。
今まで気づかなかったが、ユーキャンの時より野次馬が増えていて、その中にはブラボー! だのすげー! だの言う人がたくさんいて、大きな拍手をもらった。
K2は三人の前に来る。ユーキャンが笑っていた。
「すごいな、さすがK2。いやー、驚いたよ、あの戦い方」
ユーキャンがそう言ってきた。
「ねぇ、ユーキャン、ジュースね」
「分かってるよ。あれだけ面白い戦いを見せてくれたんだ。その対価としてジュース好きなの一本おごるなんて安いもんだよ」
「それにしても一つ一つ驚いたよ。拳銃を投げたときはどうするつもりなのかって思ったら、さらにそれを打ち上げるんだもん。しかも、爆発の衝撃を左手で抑えたりとかね。それにしても速攻だったね」
そうアクアが言うと小さい声になって、
「実際があれくらいならいいのにね」
と言ったのだ。そうなのだ。これはゲームであるからなのかもしれないが、実際のアイディオクスに比べれば手応えが無さすぎるのだ。実際K2も倒したときあまりの手応えのなさに驚いたものだ。それはユーキャンも同じであった。
「ほんとだよ! でも、まあ楽しめたからいいや」
少しずつ野次馬が少なくなっていった。
「二人はやる?」
そうK2がやっていない二人に言うと、やらないと言ったので、四人はエレベーターに向かった。そして、外に出た。
ゲーセンを出てから最初に向かったのはコンビニだった。
「それにしてもさー、あのゲーム、ちょっとリアルすぎね? どこが作ったんだ?」
「それね、私も思って調べてみたの。そしたらね、リボロボっていう会社だったの。知ってる?」
K2の質問にアクアがこう答えるとみんなの反応はアクアには不思議なものだった。
「「「えっ?」」」
「ねえ、それって……」
ユーキャンの反応に都記奈が答えた。
「うん、おがっちの行ったとこだよ」
「だよな」
「え、おがっち? 何それ?」
アクアにとっては当然の反応だった。
「ああ、そうか。アクアはおがっち知らないんだよね。おがっちってのはね、元々同じ調査部にいた人なんだ。小川翔。同い年なんだけどね、大体アクアと入れ替わりくらいでやめちゃった人が三人いて、そのうちの一人なんだ。さっき言ったリボロボっていうゲーム会社に入ったんだよ。なんか、そっちの方が自分に合ってるとか言って」
「なるほどねー。調査部出身だからあんなにリアルに作れたんだね」
「多分、そうだと思う。でも、岩属性巨獣型アイディオクスとは少しいただけないな」
「え? どうして?」
ユーキャンがそう尋ねた。
「だって、まだ駆除してないんだぜ?」
それで通じたらしく、ユーキャン含めた三人は、あー、なるほどーと言った。
そう話しているうちにコンビニに着いた。
「ユーキャン、これがいいな!」
そう言ってK2はユーキャンに炭酸飲料を渡した。
「分かった、これね」
「ゴチになります!!」
そう言って、90度に曲げた肘を軽く引いて、少し頭を下げて叫んだ。
「やめて、恥ずかしい」
そう冷たい声で言う。他の二人は知らない人の振りをして雑誌コーナーにいた。
ユーキャンがレジに行きジュースを買うと、四人はコンビニの外に出た。
「はい、K2。感謝してよね」
「うん、感謝感謝」
と言ってすぐさまフタを開けると少しだけ飲んで、フタをしてバックの中に入れた。
「次はどこ行く?」
「んー、なにか食べたいよね」
「あそこに、クレープ屋があるよ! あそこ行こう!」
そうして流れるようにクレープ屋に来た。
安いのですら1つ300円ほどのクレープはクレープとしては普通の値段だが、お菓子としては高いと思う。
作ったことはないが、自分で作った方が安上がりな気がするが、それは口に出すまい。作れと言われてもかったるいし、クレープ屋のクレープは店員からもらってみんなで話しながら食べられると言う点でも価値のあるものなのだろう。そう考えれば300円も払おうと思える。
そうして、四人は自分の食べたいクレープを頼んだ。
「うん、甘くて美味しい! 少しだけ効いた酸味がまたいいー!」
都記奈がいちごのクレープを食べながらそう言ってきた。
「ほんと! いつも水ようかんしか食べてない私にとっては少し新鮮!」
と言いつつアクアが食べていたのは和風スペシャルというものだった。クリームにあんこに白玉に水ようかんに抹茶のソースがかかっている。
「え!? クレープに水ようかん!?」
「うん、美味しいよ」
「なーにが新鮮だ! いつもと変わらないじゃんか!」
そう言うと、みんなで笑った。
友達といるとやっぱり楽しい。心から笑える。アイディオクスと戦わなきゃいけないという、辛い境遇がある俺たちだが、こうして笑って、楽しく話して平和に過ごせるこの時が何よりも素晴らしい。
そうK2は思った。そして、これが知らずに友達と仲間と共有の思いであればとそう願っていた。




