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アイディオクス~i-Deox~  作者: ヨウ化カリウム
広がる闇に煌めく光
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広がる闇に煌めく光 15

 佐紀ちゃんが旅立って二日が経った。再開したK2の寝正月を再び破ったのは一本の電話だった。

 携帯端末が小刻みに揺れる。こたつに入ってみかんを食べながら片手でそれを取った。相手を見ると、電話をかけてきたのは父親だった。

「はーい、もしもし。どーしたのー」

 やる気のない声でそんなことを言うと、いつになく鋭い声が聞こえてくる。

「おい、ちょっと、研究部の方に来い。多分、午後に特攻部の方で会議があると思う。それに間に合わないといけないから、今すぐ来い」

 そんなことを言われ、電話が切れる。K2は渋々出かける準備をし、研究部の部署に向かったのだった。


「遅い!」

 研究部に顔を出して、最初に言われたのがその言葉だった。

「何があるっていうの?」

 眠そうな声でK2がそんなことを言う。

「こっち来てみ」

 そう父親がK2を一つの部屋に招いた。その部屋には中央に大きめの試験管があった。その中には紐のようなものが蠢いていた。K2はそれを見たことがあった。そう、水属性巨獣型アイディオクスから取ってきた染色体だったのだ。

「あれから、染色体の増殖に成功してな。それで色々研究を進めていたら面白いことを発見したんだよ」

 そう言って、二人は染色体に近づいた。

「これを見てみてくれ」

 父親は試験管の隣にあった画面を指さした。画面には波が見えていた。

「これは、この染色体から発せられている波だ。これは今まで軌跡と言う形で見ていたものだ」

 K2はそれを見入る。

「こ、これが軌跡の正体……」

「一応、名前も付けた。d波だ。そして、このd波だけど、e波と接触させると、面白い反応を見せるんだ」

 そう言って、父親は染色体の試験管に手をかざした。

「いいか、ここに右から出るのがe波。左から出るのがd波だからな」

 画面を指さしながらそう言った。今は直線だけが見える。父親が、いくぞ、と言うと左右から波が現れた。しかし、それらはそれぞれ違う形。少しずつ近づいていくと、二つの波は接触する。そして、交差して進んでいく。すると、そこに一つの反応が表れた。d波が消え、e波だけが残って進んでいったのだ。K2は無言でそれを見ると、父親はその画面をリセットした。また直線に戻る。

「次は、e波とd波が合わさった波についてだ。左から出るのがe波とd波が合わさったe-d複合波。右から出るのがe波な」

 そう言うと、また画面の直線が波打つ。しかし、左から表れたのはさっきのd波とはまた違う形の波だった。それこそがe-d複合波なのだ。そして、二つの波が接触する。すると、接触部から波が相殺されていき、直線に戻っていった。

「いいか。e波とd波が合わさると、e波は効かない。それだけは覚えておけ」

 K2は少し考える素振りを見せる。

「そもそもさ、e-d複合波ってどうやったら出るの?」

 父親は少し暗い顔を見せた気がした。

「例えば、e波を使えるやつがアイディオクスになったらe-d複合波ができる。かもしれないしできないかもしれない」

 K2は少しだけ笑う。

「なに、それ?」

 しかし、父親は依然として笑っていなかった。すると、K2の携帯端末が震えた。

「あ、電話」

 特攻部の部長からだった。

「ちょっと出るね」

 父親は、あぁ、と言うと、K2はそれを耳に当てた。

「はい。なんでしょうか? ……はい、分かりました」

 そして、電話を切る。

「なんか、これから会議があるらしいからそろそろ行くわ」

「おう、そうか。ああ、それと、この前お前が書いたe波の治癒能力についての報告書、読ませてもらった。あれ、こっちでも実験してみたが、実証されたぞ。良かったな」

 K2は以前、e波に傷を癒す能力があることについて報告書を書いていたのだ。それは自分の体であればe波で体を癒す自己治癒能力があるというものだ。

 K2はその言葉を聞くと嬉しくなった。そして、K2は研究部を出ていき、会議がある本所に向かった。


 会議の内容は以前話した狂った男の話。詳しいことが分かったため、招集されたのだった。部長が話し始める。

「この前の男について、研究部の方に調べてもらったら驚愕の事実が判明した。単刀直入にいこう。あの者はアイディオクスだった」

 すると、会議に参加している者は息を呑んだ。

「しかし、あの者自体がアイディオクスというわけではない」

 この言葉を聞いた瞬間、どこからとなく声が聞こえた。え、どういうこと? そんな不安感を感じさせる声が聞こえていた。

「あの者はアイディオクスに感染していたのだ。ウイルス属性寄生型アイディオクス。そいつは生物の胎内に侵入、寄生していくというアイディオクスだ。このアイディオクスはもともと南森島で確認されたものだが、ついに、ここでも感染が見られた。このアイディオクスの特徴を話そう。まず、このアイディオクスに長けている能力は感染と増殖。感染というのは今話してて分かったと思うが、生物の体を乗っ取るんだ。そして、増殖。その為、核膜が薄く、e波に弱い。寄生された生物は二段階の状態に分かれる。まず、一段階目に、姿形は変わりないが、時々理性は失われて、暴れたい衝動に駆られる。そして、二段階に肌の色が紫色に変色する。そうなると、もう、理性は完全に消える。そして、このアイディオクスに寄生された者はやがて死ぬ。このアイディオクスの対処についてだが、寄生した生物にe波を流し込めば、アイディオクスは死ぬ。しかし、寄生された生物も死ぬ。ここが厄介なところだ」

 もう、すでに、この会議で話しているのは部長だけだった。あと数分ほどこのアイディオクスのことについて話されたところで会議は終わった。K2は盛大に頭を抱えたのだった。

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