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アイディオクス~i-Deox~  作者: ヨウ化カリウム
広がる闇に煌めく光
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広がる闇に煌めく光 14

 アイディオクス特攻隊が所有する飛行場にK2は来ていた。この飛行場は山中にあり、もちろん、一般人立ち入り禁止である。ここは旅客機が着陸するような滑走路はない。建物の中から飛び立つようなそんな飛行場である。

 K2がここに来た理由はただ一つ。それは佐紀ちゃんの出発を見送るためだ。そう、今日こそ、佐紀ちゃんの遠征出発日なのだ。

 出発予定時間の二時間前。もうすでに、佐紀ちゃんは飛行場に来ていたが、K2は佐紀ちゃんの姿を見つけられなかった。当然だった。佐紀ちゃんは、今、遠征メンバーと打ち合わせをしていたのだから。

 とうとう、一時間前になり、ベンチに座っていたK2の視界に佐紀ちゃんがふとよぎった。

「佐紀ちゃん!」

 K2が呼ぶ。佐紀ちゃんはその声に反応すると、すぐに振り返った。

「あ、航ちゃん! 来てくれたんだ!」

 そう言いながら、駆け足で寄ってくる。K2は佐紀ちゃんの言葉に頷く。

「いよいよだね……」

 K2は浮かない表情をする。佐紀ちゃんは、うん、と元気良く頷いた。

「ふふ、航ちゃん。私ね、この日の、うんうん、これからの日々のためにいろいろしてきたつもりなんだ。この遠征がどんなものなのか見るまで分らないし、行ってみないと分らない。でも、私は何があっても全力でやろうって思ってるんだ。この前、航ちゃんに負けちゃったけど、自分なりに精一杯やって、無事に帰ってくるよ」

 K2は俯き、少し考える。

「実はね、佐紀ちゃんと戦ったあの時、俺、本気を出したんだ。同じ年代の人で俺に本気を出させた人って、佐紀ちゃんしかいないんだ。だから、きっと、佐紀ちゃんは成長して帰って来れると思う」

 そして、K2は表情を明るくした。

「佐紀ちゃん、頑張って。この遠征で佐紀ちゃんの力は大きいと思うまた会える日を楽しみにしてる」

 そして、K2は右手を前に出した。佐紀ちゃんはそれに答えて、二人は握手をする。

「ありがとう。私、頑張るよ。絶対に帰ってくる。私も会える日を楽しみにしてる」

 二人は顔を見合わせ、笑う。そして、どちらからとなく、手を離した。

「準備もあるから、私、そろそろ行くね」

 K2は頷くと、佐紀ちゃんは、じゃあね、と言って手を振り、振り返って歩き出した。K2はそれをずっと見届けた。視界から見えなくなるまで。


「お知らせします。只今、磁場の乱れによりオーロラが発生。その影響により、予定していたフライトは時間をずらして運行となります」

 それにK2は驚いた。

「こんな場所でオーロラ!?」

 そして、窓の外を見ると、遠くに、赤と緑に見える光の帯が揺れて見えた。K2がそのオーロラを目の当たりにしてると、ポケットからヘックスが急に飛び出してくる。

「アイディオクスノハンノウガカクニンサレマシタ。バショハココカラ300ドノチテンヤク50キロメートルサキデス」

 アイディオクス反応、だと!?300度の方向50キロメートルって、あのオーロラのあたり……。まさか、あのオーロラ自体がアイディオクス?

 K2はヘックスの情報を疑うことなく、オーロラをアイディオクスと認識した。

「ヘックス、軌跡の数値を割り出せるか?」

「ショウショウオマチクダサイ」

 ヘックスは解析を始める。

「スイテイ53.24デス」

「はあ? 53.24? それってつまり、異常なほどに磁場が狂ってるってことか?」

 磁場の狂いは最大値で10.00。しかし、今回のはそれを遥かに超えている。これは異常現象というより、もはや超常現象であった。最大値を越す数値をK2は見たことがなかったのでもはや、呆気にとられるしかなかった。K2はただただオーロラを眺める。

 あのオーロラがアイディオクス……。しかも、軌跡が53.24。それはもう、天災級の力を持っているに違いない。今はいいが、例えばあれが人類を、世界を襲ったら、俺らに勝ち目はあるのたろうか。

 そんなことを考えていると、少しずつオーロラの色が薄くなっていき、やがて、消えていった。


「なんだよ、先に来てたのか」

 K2の後ろから、知っている声がした。振り返るとそこには特攻部の同じ班の者が揃っていた。

 結局、10分遅れでフライトすることになった。

 K2たちは、揃って搭乗口に向かった。その間、話は佐紀ちゃんのことで持ち切りだった。

 搭乗口に着くと、そこにはもう十数人の見送りがいた。K2一行もその中に入っていく。遠征メンバーが来るのを待っていた。

 とうとう、奥から列になって遠征メンバーが歩いてくる。見送りはそれぞれの言葉を投げかける。エールを送る者。別れを惜しむ者。友情を確かめ合う者。本当に様々だった。その中でK2達特攻部トップランカー格の班員は佐紀ちゃんを見つけると、手を振って頑張ってと応援した。やがて、遠征メンバー全員が飛行機に乗り込むと、その飛行機は轟音を立てて、この飛行場から飛び立ったのだった。南森島に向けて。

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