広がる闇に煌めく光 11
K2は中野駅に来ていた。中野駅を出て、外に出る。そして、少し歩いたところにあるのが開発部部署だった。
昨日、部屋でのんびり寝ていたところメールが来たのだった。送り主は開発部部長。つまり、K2の父親である。
明日、開発部の方へ来るといい。いい物をあげよう。
K2は寝正月にしたいと思っていたので、とても来る気にはなれなかったのだが、送られてきたメールが脅迫にも近い命令であることをすぐに理解したK2は来ないわけにもいかなかったのだ。
午前の11時。大して歩いてもいないのに、足取り重く、ドテドテと音を立てて前に進む。そして、とうとう開発部部署についた着いたのだった。
ドアの奥、開発室の奥にある椅子の上に座っている人影が一つそこにはあった。
「よお、遅かったな、待ちかねたよ」
その人は手刀にした左手を顔の横まで持ってきた。
「なんだよ、いい物って」
K2は怪訝な顔をして父親を睨む。
「まあ、これを見てくれよ」
K2は首を傾げ、近寄る。机の上、そこにあったのは透明度の高いワインレッドの線が入った立方体だった。大きさは握れるサイズ。見る限りボタンや穴は見当たらない。
「なにこれ?」
K2がそれを手に取る。
「それはな、e波増幅機だ」
e波増幅機。自分から出るe波を増幅させてより強いe波を発する機械。しかし、それはK2はそれとは違う形で既に持っていた。それはグローブである。
「持ってるんだけど」
だから、K2は要らないと思った。
「まあ、それに少しだけe波を流してみ?」
父親が何を意図してそう言っているのかK2は検討もつかなかったが、しかし、言われたとおりK2は少しだけe波を流した。属性もないただの波にも似たe波。少し流すと、やがてK2は流すのを止める。
その黒い立方体は何の前触れもなく浮かび始めた。そして、いきなり音声が流れた。
「ヘックス、キドウカクニン。イーハカクニン。ゾクセイナシ、ケイタイノーマル」
人離れした機械音が流れてきた。それにK2は驚く。
「どうだ、凄いだろう。名前はヘックス。人工知能を搭載させてみた。しかも、この赤い線はルビーでできてるんだ。凄いだろ?」
K2はさらに驚く。しかし、それと同時に一つの疑問も浮かんできた。
「製作費はどっから出てるんた? これほどの物なら相当な金額になるだろ?」
しかし、父親は答えることなく、ただ不敵に笑った。
「ま、まさか……。俺の貯金から出したんじゃないだろうな!?」
「お、いい線つくじゃん。正確にはこの前入ってきたオノラリーナイト受賞したときの賞金だよ」
K2は驚愕した。と同時に怒りも深淵から湧いて出た。
「ふ、ふ、ふざけるな!!」
開発室に響く怒声。父親は耳を塞いだ。
「うーん、ルビーじゃなくてガーネットが良かったかな?」
「そういう問題じゃない! 正直そんなのどうでもいい!」
そして、K2は深いため息をつく。もうどうしようもないことは分かっていた。
「もう、いいよ。もらってくよ。もう、用は済んだ?」
「あと一つある」
ヘックスを手に握ったK2は父親が机の下から出すものを待った。
取り出されたのは一つのケース。それを机の上に置き、鍵を開け、ケースを開ける。そこには、
「リボルバー?」
リボルバーにも似た、拳銃一丁と赤、青、黄、緑、白、黒、など様々な色の16個の透明なガラスに入った弾のような物。そして、専用のポーチのようなもの。
「これは見たとおり拳銃だ。リボルバー式の、な。e波専用機器だ。従来のものとは違い、一発撃ってから再装填して撃つ必要がない。つまり、装填は一度のみでずっと撃ち続けていられるんだ。この弾は専用の物で、色によって属性が違う。まあ、色が想像してる属性だと思っていいよ」
K2はケースから取り出して握ってみる。
「んー、悪くないな」
「ちなみに、欠点は強いe波が必要ってところだな。だから、それを二つ持って乱射とかは無理だ」
「ふーん、なるほどね」
そう言って、K2は拳銃をケースにしまった。
「うん、気に入った。貰ってくよ」
父親は満足そうに笑うと、ケースを閉じた。
「そうそう、さっきのヘックスだけど、基本色んなことできるから。大掛かりなものじゃなければなんでも」
さっきまで馬鹿にしていたK2だったが、それを聞いた途端、感心した。なぜか疑うことはなかった。
「試してみるか?」
K2は頷いた。
試験室に来たK2はジャージを身にまとい、まずは拳銃を手に取った。八弾装填可能のこの拳銃に赤、青、黄の三つだけを装填した。
「じゃあ、始めるぞ。出現する的を撃ち抜いてみろ」
別室にいる父親のアナウンスが流れる。無言で頷くK2を合図に、的が現れた。K2の目の前。K2は肩幅に立ち、両手に持った拳銃にe波を流し込む。そして、引き金を引いた。十分な反動と共に撃ち放たれた弾状の火。それが的に飛来し、見事に当たる。
「これは凄い。拳銃にしては今までに見たことのない威力だな」
K2は自然と笑みがこぼれた。
「確かに、これを二丁同時に扱うのは無理だな」
それだけにK2は手応えを感じていた。
他、何発か撃つと、K2はケースに拳銃をしまった。
「次はヘックスを試してみるか」
アナウンスが流れる。バックに入っていたヘックスをK2は取り出す。そして、まず、少量のe波を流し、ヘックスは宙に浮かぶ。
「よし、じゃあ、まずは火の生成からやってみるか」
独り言のように呟いたつもりでいたK2だったが、それを聞いていたヘックスは機械音でラジャと言った。それにK2は驚いた。しかし、すぐに口元に笑みを浮かべた。
ヘックスは浮遊しながらK2の前に躍り出る。K2は手をがさし、火を生成させる情報を乗せたe波を流し込む。少量のe波が流し込まれたところで、ヘックスから超火力の火が放たれた。
「なっ!」
あまりに意外で驚くK2。ヘックスの素晴らしさを目の当たりにする瞬間だった。
その後もK2は色々試した。
「いいね」
試験室を出て廊下、父親の前でそう言った。父親はただ笑っただけだった。




