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アイディオクス~i-Deox~  作者: ヨウ化カリウム
真冬の流れる水の音
15/50

真冬の流れる水の音 15

 水保駅は今日もいつもと変わらず静かで風の音しか聞こえなかった。

 今日は学校が休みのためK2は一人で水保駅に来ていた。住民は避難中で、この辺にはいないため、より一層静かだったのだ。

 一人できたのは情報の漏洩を防ぐためだ。

 特攻隊の活動は秘密であるがゆえ、慎重に事を進めなければならない。そして、尾行されるというのは許してはいけないのだ。

 大人数で調査をすると尾行される可能性がある。よって、個人調査の場合は一人で行った方が安全なのである。

 K2はいつ現れるか分からないアイディオクスに対して、かなりの武装をしてきた。前回逃がした反省を元に、対策を練ってきていた。

 K2は背負っていたバックを下ろすと、そこから携帯端末とe波増強グローブと多機能グラスというメガネのようなものと、父親からもらったものを取り出すと、グローブは両手にはめ、メガネはかけ、父親からもらったものはバックとは別のポーチに入れた。

 水保駅に監視カメラが設置してあることを確認したK2は、一人で駅から歩き出した。向かうは、この前アイディオクスが出現したポイント。携帯端末を右手に、向かう。

 道に沿って歩いていくと、段々土が死んでいた。カラカラに枯れた土。そこにはもはや栄養はなくなっていた。水分などほとんどなくなっていて、まるで荒地だった。植物は、夏でもないのにカラカラに枯れている。ここは、侵入してくるもの以外の全てのものが枯渇しているのだ。

 避難したここの住民には悪いが、これは回復に時間がかかる。

 アイディオクス出現反応はあれ以降出ていない。軌跡の感じもない。しかし、これは明らかな変化だった。しかも、数日という短時間でここまでできるのは、アイディオクスの他ないだろう。

 K2は黙々と歩き出した。メガネのレンズには見える範囲の磁場が見えていた。今のところ乱れはない。正常だった。

 午前中ということもあって、少しずつ太陽が上へ上へと上がっていった。

 ひたすら歩いていくと、ついにポイントにたどり着いた。前回出現した場所。

 そこはこの前と何も変わらずに、ただひたすら荒地が広がっていた。もちろん、少しの違いはあった。出現したところだけは、周りと比べ枯渇が酷かったのは確かだ。

 この前と何も変わらない。しかし、何も変わらないことがおかしいことだということはK2には分かっていた。

 もし、アイディオクスが回復しているのなら、このポイントにアイディオクスがいるはずなのだ。

 しかし、ここは、軌跡も何もない。動画で見えた陽炎すら、そして、違和感すら存在しない。

 どう考えても妙だった。

 考えられることはいくつかある。動画の陽炎はまた別の要因で起こったもの、もしくは目の錯覚で、本当は四つ目の核膜も焼き切って、中の染色体を破壊していた、つまり、アイディオクスを駆除していたため。もうすでに回復しきっていて、アイディオクスは移動を始めていたため。アイディオクスにそのような能力があるため。

 もし、一つ目なら、ここが荒地のままに、しかも、それが広がることはないだろう。二つ目ならあまりにも回復速度が早すぎるため、ほとんどの可能性でありえない。もし、回復速度がかなり早いと仮定しても、この場所からいなくなることはありえない。なぜなら、このあたり一帯はe波に囲まれている。アイディオクスの天敵とも言えるe波に自分から近寄ろうとはしない。もちろん、e波を使える自分たちは敵として、倒さなければという意志がはたらくのか、e波使用者ですら襲ってくるが。よって、移動をするメリットがない。三つ目だとしたら……。

 そこまで考えた時に、K2は身構えた。

 まさか、ここに存在するのにそれを感じさせるものがない? そんな事例も過去にないし……。しかし、もし、そうなら……今もここに存在する!

 そう考えるとK2は両腕を広げた。足元から波紋が広がっていった。砂は外へ外へと飛ばされていく。もし、ここにアイディオクスがいるのなら、これで反応する、はずだ。

 以前、試したことがあった。逃げたアイディオクスに、ポイントをしぼり、そこにe波を当てた。e波を当てられたアイディオクスは出現しなかったものの、軌跡は現れた。結局、e波は核には届いていなかったのだが。

 だから、今回も、もし、ここにアイディオクスがいるのなら何らかの反応が出るはずなのだ。

 e波の波紋は広がっていく。やたらと広がる波紋はどこにも跳ね返らずに突き進んでいった。

 半径が50m進んだところでe波を流すのを止める。この範囲で流したが、反応はなかった。つまり、アイディオクスはいないと考えられる。

 じゃあ、アイディオクスはどこに?

 謎は深まるばかり。

 ……あれ?

 K2が不思議に思ったのは地面だった。地面が枯渇している。これが妙なのだ。

 水属性巨獣型アイディオクスは水を吸い上げて装甲にする。だから、このアイディオクスのいるところの土壌は枯渇する。しかし、動画はどうだっただろうか。アイディオクスがいたと思われるところは徐々に土が濡れていった。つまり、今ここにあのアイディオクスがいるのなら、ここの土は、地面は濡れているはずなのだ。しかし、そんなことはない。むしろ、逆である。

 もちろん、これをアイディオクスの能力と考えられるが、それよりも移動したと考えた方が賢明である。

 それならどこへ? 多分外へは出ていない。だとしたら、この水保駅周辺にいるはずだ。


 結局、K2は歩き回ったが、他になんの手がかりも手に入れられなかったので、一度水保駅に戻った。

 水保駅に戻ると、今まで誰もいなかったはずのここに一人の陰が見えた。

 誰か来てるのかな? こんな何もなくてアイディオクスも出るかもしれないっていう危険なところに来るなんて、物好きもいるもんだなぁ。

 なんて、まるで人ごとのように言うが、自分がその物好きだって言っていることに気づいていないK2は不思議な顔をしながら、その陰の方へ行った。

「あれ? K2? なんでここにいるの?」

 聞こえてきたのは女の子の声。すらっと立つその姿を陽の光の強さで明瞭に確認できなかった。

 K2は眩しそうな顔をして、手を目の上に持っていき、陽の光を遮った。

 目を細めても見えづらかったので、歩み寄っていった。

「私だよ。瑞稀だよ」

 K2は予想外の名前に驚いた。

「え? アクア? なんでここにいるの?」

「私も同じことをK2に質問したいな」

「俺? 俺はただの調査だよ。自主調査ってやつ?」

 そう言ってK2は笑った。つられてアクアも笑う。

「私もそんな感じ。様子を見に来たって感じかな」

「そうなんだ。いつから来てたの?」

「駅に着いたのはついさっきだよ。この後用事があるから、もうすぐに行かないといけないけど」

「そうなんだ……」

「もう少し話したかったけど、もう時間がやばいから私、行くね」

「分かった。……あ、ねぇ、この件に関して何か情報あった?」

「いや、なかったよ?」

「そっか……。分かった、じゃあね!」

「うん、またね」

 アクアはそういうと、線路に沿って歩き出した。メガネをかけていたせいか、アクアは終始ぼやけて見えていた。きっとe波の影響なのだろう。K2はそう思った。


 K2は水保駅の椅子に腰掛けた。そして、バックからあらかじめ持ってきておいたサンドウィッチを出した。朝、ここに来る前に作ってきたものだった。

 景色が見渡せる水保駅のホームの椅子に腰掛けて、K2以外は誰一人として存在しないこの場所で少しの雲と、見渡すほどの青空を見ながら黙ってそれを食べていた。

 もともとここは人が少なかった。だから、静かな場所であった。しかし、そんな場所でも人の声は聞こえた。定期的に電車が通った。鳥のさえずりも聞こえた。音だけじゃない。住民の笑顔も見れた。

 しかし、今はどうだろうか。ただただ雲が流れ、風が吹くだけだ。風で吹かれる植物もない。音がないのだ。無音の世界。それはあまりにもつまらなく、切なく、悲しい。

 この状況を提案したのは誰だろう。他でもないこの俺、柿川航太だ。こんな状況を生み出してしまったのだ。それならば自分が解決しなければならない。この自分の持つ不思議な力で。

 そういうと、K2は右手を強く握った。必ずこの場所に音を取り戻そうと、そう思ったのだった。


 昼食を食べ終えると、K2は調査を再開した。

 さっきまで上にあった太陽はいつの間にか西の方へ少しだけ移動していて、K2の影は音もなく東北東の方角に伸びていた。

 乾燥した空気に枯渇した土、そして、肌に刺すような寒さで、サンドウィッチで得た体力も、少しずつ少しずつ削られていった。

 K2は駅前に佇んだ。見渡しても田んぼしか見えない。ポツポツと小さな木の倉庫があるが、他にはほとんど何もない。

 道は土が固めてあるような感じで、アスファルトなんてものはこのあたりで見られるだけでも珍しい。

 水保駅と西井駅の間には森が広がっている。その手前までが避難区域に指定された。

 水保駅からは線路と垂直に駅から一本、道が伸びている。途中に緩やかな右カーブがあり、前回はそのあたりにアイディオクスが出現した。

 そして、午前中はその道を中心に調査をしていた。

 地面の枯渇もまた、そこを中心に広がっているように見えた。

 そして、水保駅周辺には線路と平行にもう一本道がある。水保駅からその道を歩いていくと、時々曲がり道がある。

 道は駅から出てるものが主要で、先の二本の道はほかの道よりも大きい。と、言っても、幅は3mほどしかないのだが。

 K2はさっき調査していた道には行かず、調査していない線路と平行な道を右に歩いていった。K2はアイディオクスはこのエリア内で移動しているのだと仮定したのだ。

 特に変わった様子はなかった。適度に植物も生えている。土壌も枯渇しているということはなかった。

 少し進むと、森の手前まで来ていた。軌跡も見当たることはなかった。そこで、K2は森の手前に左に伸び小さなる道を進んでいった。

 K2は同じ足取りで周りを見渡しながらその道を歩いた。

 メガネ越しで見る景色はさっきの景色と変わらない。それは、アイディオクスの存在を感じさせないほどであった。しかし、絶対にこのあたりにいるはずなのだ。そうして、K2は歩き続けていた。


 夕方になり、水保駅周辺はある程度調査を終えたK2だったが、結局なんの手がかりもつかめなかった。

 日はもう結構傾いていて、気温も下がってきた。

 ベースカラーが黒でインパクトカラーで赤い線が入った長袖の上に黒の半袖一枚、そして、下はタイツのようなものの上にまた黒の長ズボンを一枚に手袋の格好のK2はバックから黒に赤い線が入ったパーカーを取り出した。

 このパーカーはe波増強装置であるため、これを着ると強いe波を体から出せる。しかも、上に着てる長袖や下に履いてるタイツのようなもの、そして、手袋もまた同様なので、かなり強いe波を体中から出せる。

 パーカーを着たK2は水保駅に向かった。

 朱色の太陽の光が横からいたずらに差し込んできて、目が眩しかった。

 森に沿って、水保駅へ小道を歩いた。左には一軒小さな木の家のような倉庫のような物があった。少しだけ木に囲まれていて、目立たない感じだった。

 K2がそこを通り過ぎた。歩みは止めずに歩き続けた。

 その時……。

 バン!

「!?」

 K2の後ろの方から大きな破裂音がした。

 シュアアァァァァ……。

 K2が後ろを見ると木の家の目の前に見事な噴水が出ていた。高さは10m程だろうか。大量の水をそこから吹き出す。勢いはかなり強い。

 おそらく、凍結だろう、水道管が破裂したのだ。

 ただの水道管の破裂なら自分はどうすることもできないと思い、水保駅に再び歩き出した。

 ……待てよ。ほんとに凍結によるものだったのか? そして、アイディオクスはどこに逃げた? まさか!?

 そう思うとK2は勢い良く後ろを向き、走り出そうとした。

 足を一歩前に出した瞬間

 バン! バン! バン! バン! ……。

「な!」

 ふと声を漏らす。

 そのくらいに驚愕する出来事が起きたのだ。

 水道管を沿ってだろう。並ぶように次々と水道管が破裂したのだ。その度に地面から大量の水が吹き出す。

「これはまずい! 奴にとってとてもいいコンディションを作ってやがる!」

 そう言うが、しかし、メガネから映る景色はこれといって大きな変化はない。

 やがて、水道管の破裂は水保駅周辺を覆うように起こった。大量の水は絶え間なく溢れ出す。

 水の壁に覆われているようにしてK2はそこに立っていた。

 驚きは同時に恐怖へと変わってゆく。その恐怖を、しかしK2は打ち破って、前に出た。

 シュアアァァァァ……。

 水の流れは音はいつまでも続く。

 乾いていた土は潤いを戻すどころか、水浸しとなり、大きな水たまりを形成していた。

 さらに、K2もまた少しずつ濡れていく。

 そして、

 Piーーーーーー

 という音が水の噴き出す音を割って聞こえる。

 アイディオクス発生感知機による、アイディオクスの発生を知らせる警告音。

 つまり、この付近でアイディオクスが出現したのだ。

 そして、K2はあたりを見渡した。すると、水保駅からまっすぐ伸びる一本の道の、駅から200m程のところに小さいながらも水の柱が出現していた。

「派手な演出だな。巨獣型アイディオクスの本領発揮か、おい」

 そう言ってそっちの方に走ったが、しかし、K2は足を止めざる負えなくなった。

 なぜなら、さっきまで2m程しかないと思われていた水の柱がいきなり巨大化したからだ。その大きさは大体建物5階相当。前回出会ったのと比べると、大きさはまるで違う。

 アイディオクスは巨大化すると、次に形を変化させた。少しずつ丸みを帯びていき、四肢が形成される。背中と思われるところに触手のようなものが何本か生える。そして、顔のような物が形成されると、触手を逆立て、手を広げ上を向いた。

 ──────グオァァァァァァ

 アイディオクスが咆哮すると同時に、アイディオクスを中心に強風が吹いた。

 K2が顔の前で腕をクロスさせると、その強風をどうにか耐えた。その時、微かに嫌な波動を感じた気がした。

「あいつ、吼えるのか。犬みてーなやつだな」

 そういうK2の口元は微かに笑っていた。

 そして、アイディオクスを見据えると、突然電話が鳴り出した。

 相手はアイディオクス特攻隊特攻部部長だった。どうやら一斉電話らしく、他の特攻部の同じ班の者にも繋がっていた。

「監視部よりたった今連絡が入った。アイディオクス発生感知機が作動した。場所は水保駅付近だ!」

 部長の声が響く。第一声がこれだった。

 アイディオクス発生感知機の作動により、一度監視部に知らされてからこうして電話が来たのだった。

「出現したのは水属性巨獣型アイディオクスと思われる。一度、対策を練る。全員特攻部の部署に集合」

 特攻部の部署は谷保町にある。特攻部の備品などはそこに全て貯蔵されている。出動要請がかかった時にその場所に集合し、そこから向かうことは多々ある。巨獣型アイディオクスの場合はほとんどここから出動する。今回もまた同様だ。

 しかし、K2は今、水保駅にいる。そこから部署に戻ってまた向かうでは遅すぎるのだ。

「柿川です。今、水保駅にいます。向かわずに駆除に向かっていいですか?」

「K2、水保駅にいるのか!? なんで?」

 和也の声だった。

「いや、自主調査してた」

「分かった。K2はそのまま駆除に向かってくれ。それと、そこの状況を映してくれ」

「分かりました。状況を映す件については少し待って下さい」

 そういうと、電話のために耳に当てていた携帯端末のワイヤレス通信モードをオンにしてから、メガネの右のレンズの端のほうのフレームについているボタンを押した。

 そして、耳にかける部分をどちらも右にひねる。そして、引っ張るとどちらからもワイヤーが出てきた。右は柔軟なワイヤーで左は固いワイヤーだった。

 右のひねって取り出した部分を耳につけると、イヤーホンのようになった。そして、左を口の前に持ってきた。そこにはマイクが搭載されている。

「どうですか、見えますか?」

 K2がそう言うと、ああ、見えると部長が反応した。

「ねえ、K2。あんた、無茶だけはするなよ」

 アシュリーがそう言ってきた。もちろん、無茶なんてするつもりはない。

「分かってる。慎重に、そして、絶対仕留める」

「よし、オーケー。K2、もういいよ」

「はい!」

 そう言うと、メガネにe波を流してカメラモードをオフにした。

「よし、K2は先に駆除に当たってくれ! 他の者は部署に集合! いいな?」

 全員がはい! と返事をすると、そこで電話は切れた。

 K2は耳にかける部分を元に戻すと、アイディオクスを見た。アイディオクスは暴れる限りを尽くしていた。地面に腕を叩きつけ、地面は抉れる。それによって欠損した腕は、水道管の破裂によって噴き出す水が装甲に降りかかり、大きさは元のまま欠損部位は再生していた。

「なるほどね。あいつは頭いいのか悪いのか分からねぇな」

 K2はアイディオクスに向って走り出した。

 水属性巨獣型アイディオクスには火も電気もそして、外からのe波も効かない。それならば……。

 K2は走りながらバックからe波専用機器を取り出した。円柱で黒曜石のように輝く黒。片手で握れるサイズで、長さは15cmほどである。

 それの側面を握ると、円になっている面の片方をアイディオクスの核に向けた。

 そして、それにe波を流し込む。

 e波を流し込むのと同時に、円になっている片面から真っ直ぐアイディオクスに向けて光が放たれた。

 携帯型e波混合高エネルギーレーザー兵器。これがこのe波専用機器の名前。

 円柱からまっすぐ伸びる光の線、つまり、高エネルギーレーザーはアイディオクスの核に当たっていた。

 ここ数日かけて立てた対策。火もダメ。電気もダメ。そうなれば、残るは光。

 ほぼ透明で光を通す水にレーザーを通し、核に当て、そのままe波で四枚の核膜を焼き切るという算段を立てたのだ。

 暴れるアイディオクスに対してレーザーを当て続ける。

 片手で持っていたのを左手を添えて両手で持つと、K2はさらに強いe波を流した。

 K2はアイディオクスの核を確認した。確認された核は最初と同じ大きさの核。

 それから10分ほど当て続けるが、核の大きさは変わらない。

 なぜだ!?

 K2は目を凝らし、核をしっかり確認した。

 すると、核の手前でレーザーが屈折していて、レーザーは核に当たっていなかった。

 K2は屈折のことを考えていなかったわけではなかったが、アイディオクスは予想を超えるほどの屈折を披露していたのだ。

 しかし、K2はこの方法を諦めなかった。

 K2は携帯型e波混合高エネルギーレーザー兵器を右手で持つとそれを小さく振った。

 それによって、レーザーは一瞬一瞬核に当たった。

 何度か核にレーザーが当たると、アイディオクスはK2の方を向いた。そして両手を地面につけたと思うと、頭を尖らせた。それ以降、レーザーの入射角を変えても核には当たらなくなった。

 くそ! こりゃ、もっと強力なレーザー兵器を複数台取り囲むようにして放たないと焼き切れないな。

 そう思うとK2はバックにそれをしまった。

 こうなったら、やっぱりアレをするしかないな。

 K2は走り出した。

 対してアイディオクスは動かずにいた。

 K2が距離を詰めていく。

 アイディオクスまで後5m。

 しかし、K2は足を止めた。いきなりアイディオクスの顔面と思われる部分に穴があいたのだ。しかも、アイディオクスはさっきよりも確実に体勢を低くしていた。

 K2が構えると、その穴はたちまち水で満たされた。と思ったその時、

 ギュアアアアアァァァァァ!!

 いきなり水が光線のように放たれた。しかも、かなり太かった。

 その水ブレスは確実にK2の方に向かって進んでいた。

「くっ!!」

 マッハをも超えるだろう速さで進む水ブレスはホースやじょうろ、みずてっぽうなんて、そんなものには出すことができない、もはやありえない轟音を立てていた。

 まるで空間を揺るがすような、そんな凄まじい威力を秘めている。いや、もはやそれがあらわになっていた。

 くそっ! どうすれば! どうすればこの危機的状況を回避できる? もし、このままこれを受けてみろ。確実に死ぬ。e波でガードをするのは? ダメだ。あの威力の攻撃を受けたらe波が押し負ける。それならやっぱり……。

 水ブレスはもう目の前まで接近していた。

 やるしかない!

 K2はあしもとに足元にe波で爆発を生むと、その衝撃で後ろに勢い良く下がった。

 しかし、水ブレスはK2に届いた。

 空中にいるK2の足元をすくうと、K2は足だけが後ろに持っていかれる。それにより、体は水ブレスに吸い込まれるようにしていき……。

 このままじゃ終わらないっ!

 K2は前かがみにの状態から手を胸の前に持ってくるとそこにe波を流した。

 もちろん、勢いの強過ぎる水ブレスにはe波は効かない。しかし、それは、今はどうでも良かった。

 K2はできるだけ強くe波を打ち付ける。

 すると、その衝撃でK2の上体は起き上がった。

 やがて、体が地面へと持っていかれると、水ブレスが地面と接触した。

 一方でK2の口元には微かな笑みがあった。

 地面と接触した衝撃に対し、K2はe波で上の勢いを付け加える。やがて、K2は勢いに押されて水ブレスから抜け出すと、そのまま上へと飛ばされた。

 下を見ると、そこには水ブレスによって広範囲に抉れた地面があった。接触部がかなりのダメージを受けていて、そこから削り取られた部分が伸びていた。

「う、うわぁー。まともに受けなくてよかったぁ」

 やがて、その水ブレスは細くなっていき、ついにはアイディオクスは水ブレスを止めた。

 アイディオクスにとってもかなり大規模な攻撃であったらしく、反動で動けないでいた。

「大した攻撃だったぜ。次は俺の番だ」

 K2がそう言うと右手にe波を溜めた。

 もちろん、水ブレスほどの攻撃ができるわけではないが、あの装甲を少しばかり欠けさせることくらいはできる。

 K2は上空10mあたりのところから右手に溜まったe波をアイディオクスの右腕に向けて、放った。

 矢のようになったe波がアイディオクスに飛来していく。

 見事アイディオクスの右腕に当たるとその腕は吹き飛び、アイディオクスはバランスを崩して倒れた。

 K2はそのまま着地する。

「う、痛っ!」

 着地するときに突如現れた脚の痛みに、K2は跪いた。

 K2の足は、酷い擦り傷を負っていた。ズボンや靴は、ボロボロになっていた。先のアイディオクスの水ブレスの激流によって、受けたものである。

 K2は立とうとするが激痛により立てないでいた。

 水浸しの地面はくるぶしあたりまで水に浸かっていて、脚から流れ出る血で水を緋色に染めていく。

「しょうがねぇ!」

 そうK2が言うと、脚にe波を流した。やがて、e波に包まれると、脚が浮いた。

 K2は上体を起こす。地面から少し浮いている。もちろん、痛みはあるが、そのまま立って体重をかけるよりかは幾分ましであった。

 ひとつにe波をかけると、他で使うe波は限られてくる。だから、K2はあまりやりたくなかったのだが、そのまま動けずにアイディオクスの攻撃を受け死ぬのならと思うと、躊躇っていられなかった。

 アイディオクスの方を向くと、もうすでに上体を起こしていた。だけでなく、攻撃をしてきた。なぜか20m手前まで接近してたアイディオクスが触手をK2の方へ勢い良く伸ばしてきていた。

「ちっ! 鬱陶しい!」

 左手にe波の刃を作ると、そこ触手を縦に切った。

 しかし、伸ばしてきた触手は一本だけではなかった。

 K2はe波で推進力を生むと、その触手の連撃を難なく交わした。

「うらぁ!」

 交わしつつアイディオクスに接近すると移動したままアイディオクスの片足を切った。

 しかし、アイディオクスは上体を崩したものの倒れるには至らず、そのまま攻撃を続けていた。

「きりがねぇ」

 そう言うとK2はアイディオクスを向きながら後ろに下がっていき、アイディオクスと距離を取った。

 グアアアァァァァァァ!!

 アイディオクスがそう叫ぶと、アイディオクスの体が突如変化を始めた。

 柱のように形を変え、上に伸びていくと、突如その水柱は回転を始めた。

 まるで、水の竜巻のような、そんなものがK2の目の前で起こった。

 K2は危険と判断し、アイディオクスとかなり距離を取った。

 距離を取って構えると、アイディオクスは攻撃を仕掛けると思ったのだが、しかし、水柱は小さくなっていき、やがて、勢い良く消えた。その場にあった地面の水は、アイディオクスがいたところを中心に波紋を広げた。

 アイディオクスは目の間から消えた。いや、どうだろうか? まだ近くにいるはずだ。

 そう思うとK2は浸水した地面を確認した。

 浮いていたために確認するまで気が付かなかったが、水位が目で見てわかるほど上昇していた。

 こ、これは、まずいぞ!

 そう思ったK2はしかし、これと言った対策を考えることが出来なかった。

 しかも、メガネ越しに映る地面はどこからも軌跡を発していて、どこにアイディオクスがいるのか分からなくなっていた。

 こういう時は……。

 K2は推進力を生むと、あらゆる方向に逃げるように移動した。かなりの速さで移動する。

 こういう時は、闇雲に逃げるのみ!!

 確かに、広範囲にe波を広げていけば、やがて、アイディオクスに当たり、姿を現すだろう。しかし、K2にはそこまで大規模なe波を使用することは出来なかった。なぜなら、脚の怪我をどうにか補うのに、すでにe波を使ってしまっていたからだ。

 やがて、足元の水が膨らみ始めると、突然そこに上へと伸びる水の柱が出現した。

 間一髪避けることができたK2は移動をやめると、姿を現したアイディオクスを見た。

 そして、K2が近寄ると、右手にe波の刃を作り出し、その柱を横に切った。

 水の柱はその場で切れ、柱から、最初のアイディオクスの形へと戻った。

 と、思ったら、アイディオクスは四つん這いの状態になっていた。

「!?」

 K2はバックダッシュをした。

 ズシュアアアァァァァァァァァ!!

 いきなり後ろから、そんな轟音と水しぶきがかかった。

「な!?」

 K2が後ろを振り返ると、そこには水の柱があった。

 地面から、水が噴き出したのだ。

「ふっ、なるほどな。地面の水を上への衝撃を加えて噴き出させたってわけか」

 そう理解した瞬間、K2の下の地面が盛り上がった。

「!?」

 K2は間一髪それを避けると、目の前で爆発と共に水が噴き出した。

「あぶね、あぶね」

 すると、次々と足元の土が盛り上がり、水が噴き出した。

 それをなんとか避けるK2はそのまま、少しずつアイディオクスに近づいていった。

 残り20m。しかし、そこまで接近してくると、アイディオクスはこの攻撃を止めた。

 そのまま、K2は接近しようとアイディオクスの方へダッシュした。

 すると、なぜか下に向けていたアイディオクスの顔の中央から下に向けて細い水の線ができた。

 シュアアアアアアァァァァァァァ!!

 それはかなりの勢いで、細いものの、それが当っている地面は次々と掘られてゆく。

「これは……」

 K2は接近を止め、すぐに後ろへと方向転換してから全速力で逃げた。

 すると、後ろから細い光線のようなものが追ってきた。実際にはアイディオクスがその水の線を放ったまま、顔を上げたのだが。

 シュアッ!

 K2の左肩をかすり、その水の線はK2の後方アイディオクスのところから前方に向かって伸びていった。それは遠くまで勢いが衰えることはなく、どこまでも伸びていった。

「!?」

 伸びた水の線は遠方の木の倉庫と見られるものを真っ二つに切った。

「う、ウォーターカッターだと!?」

 かなりの勢いで細い水の線を作ると、物体を切ることができる。それを技術化してあらゆるものに役立てているのがウォーターカッター。そして、アイディオクスはそれをここでやったというわけだ。

 K2の左肩はウォーターカッターがかすったことによって、服は破れ、血がにじみ出ていた。

「くっ!」

 痛みで左肩を押さえる。しかし、出血の量は意外と多く、押さえた手の指の隙間から血が滲んでいた。

 やっぱり、アレしかないのか?

 K2はアシュリーの無茶をするなという言葉を思い出した。しかし、特攻隊に重要なのはアイディオクスを必ず仕留めること。それならば……。

 そう考えていたK2はふと、脚の痛みが引いてることに気付いた。

「!?」

 K2が脚を見ると、なんと、さっきまで流れていたはずの血が引いているどころか、跡形もなく怪我が治っていた。

 まさか、e波には治癒能力があるのか?

 そう思ったK2は左肩に右手を添え、e波を流した。すると、細胞が治っていくような感覚と共に、怪我が治っていった。

 こ、これはすごい!

 そう思ったK2は笑顔のままアイディオクスを向いた。

 アイディオクスは地面に手をつけたまま、そのまま立ち尽くしていた。

「決着をつけてやる!」

 K2はそう言うと、覚悟を決め走り出した。アイディオクスに向かって。

 あ、そう言えば……。

 K2は先日の父との約束を走っている今思い出した。

 ……染色体を持ってきてくれ……。

 め、めんどくせー! 結局無茶しなきゃなんねーじゃん!

 そう思ったK2は目を凝らし、メガネ越しにアイディオクスの水装甲の水の流れを見た。どのように流れているのか。どこから突入すればすぐに核にたどり着けるのか。

 あらゆるところを見て、K2は探した。

「……みーつけたっ!」

 そういうと、口元は笑っていた。

 アイディオクスに向かって走った。その時、

 シュアッ!

 アイディオクスまで行く道を阻むように、水の壁がそこには出来ていた。

「ちっ!」

 シュアッ! シュアッ! シュアッ!

 走るのを止めたK2を囲むように四方に水の壁ができると、K2は完全に逃げ道を失っていた。

 水の壁は10mはあるかと思うくらい高かった。

 アイディオクスまで後10mもなかったのに、という思いはあったが、もし、K2の思う通りの攻撃をしてくるのなら、勝算はあった。

 水の壁は少しずつK2に接近していて、動き回れる範囲は狭くなっていった。

 すると、K2はふと、メガネ越しに壁の奥で細い水の流れを見た気がした。

「ま、まさかっ!」

 そのまさかであった。

 シュアッ!

 いきなり壁が切れた。

 K2はタイミングよく飛んだ。飛んでいなかったら、上半身と下半身で真っ二つになっていただろう。

 アイディオクスはさっき披露したウォーターカッターでK2を横に切るようにした。

 もし、少しでも見えていなければ死んでいただろう。

 よって、飛んだことによりなんとかかわせたのだ。

 今のアイディオクスの攻撃で一瞬だけ水の壁は途切れたものの、また構築されてしまった。

 接近してきた壁によって狭まれていたK2の立ち位置はもうすでに一歩足を踏み出すことも許されないほどになっていた。

「完全に囚われたな……」

 そう言うと、K2はバックからe波専用機器を出した。e波銃ハンドガンタイプ。e波を流しながら引き金を引くことによって銃口から弾丸にも似た強力なe波を出せるというものだ。

 バックを背負い直しそれを右手に持つと、それと同時に地面が盛り上がった。

「ふっ。来ると思ったぜ!」

 そう言うと、一度脚のe波を解き宙に浮いた状態から解放されると、地面に足がつくのと同時に足の裏にe波を溜めた。

 そして、地面から大量の水が噴き出す。

 しかし、K2はその水に乗るようにe波を流して水と共に上昇した。

 壁から脱出すると、そこからまた5mくらい高いところでe波を放ち、それによって起こった爆発の衝撃を利用して飛んだ。

 見事な投射を披露すると、アイディオクスの脳天と思われるところに向かって落ちていった。

 メガネ越しで見つけた、一番核に辿りやすくするためのアイディオクスの突破口。それは脳天であった。脳天からは核の方へまっすぐ水が流れていたのだ。

 頭に向かって落ちるK2は自分のこめかみに右手の銃の銃口を当て、銃を撃つモーションを取った。もちろん、引き金は引かない。

「脳髄炸裂! 覚悟しろ!」

 そう言うと、背中の触手がK2に向かって伸びてきた。

 e波を使って体制を整えながら、その触手をかわしていく。

 パシュッ!

 K2の顔のギリギリを触手が通ると、K2のメガネが当たり、K2の後方、つまり上へ飛んでいった。

「いっけぇぇぇぇ!!」

 そう叫ぶと同時に両手で拳銃を持ち、両手でe波を流すと、引き金を引いた。

 バシュッ!!

 銃口から放たれたe波の弾丸はアイディオクスの水装甲を突き破り、生体膜を突き破り、やがて、核にたどり着くと、核の一番外側の核膜が一枚焼き切れた。

 K2は全身にe波を流すと、そのまま水装甲へと突入した。

 メガネで見た通り、水の流れは核へと向かっていて、K2はそのまま流された。

 やがて、生体膜にたどり着くと、さっきのK2の攻撃で生体膜はその部分だけ破れていた。K2はそこから細胞内に侵入した。

 細胞内は相変わらず身動きが取りづらく、二度目だと言えど、慣れる気配は一向になかった。

 アイディオクスの核は前回から再生していて、さっきの攻撃で一枚は焼き切ったものの、まだ三枚残っていた。

 あの短時間でよく再生できるな。

 たった数日という期間しか間は空いていなかった。その時間で再生するという事例はこれまでになかった。しかし、この水属性巨獣型アイディオクスはそれをやってのけたのだ。このようなアイディオクスの存在は特攻隊にとって、いや、人類にとって驚くべきことなのだ。


 K2は核の前まで来ると、相変わらず大きいその核の表面に両手を添えた。

 そして、e波を流した。

 少しずつ核膜は薄くなっていく。

 やがて、一枚焼き切れると、また新しい核膜が表に出た。

 K2は両手を当て続け、次の核膜にもe波を流した。

 同じように薄くなっていき、やがて、焼き切れる。

 残り一枚になると、K2は右手のグローブを外した。

 ところで、アイディオクスはというと、前回とは全く違う行動を起こしていた。動かずにいたのだ。何も行動をしていなかったと言うべきだろうか。

 今回は大人しいな……。

 K2はそうとしか思わなかった。

 よし!

 そう決意すると、ポーチから父からもらった、いや、預かった試験管を取り出し、栓を取る。そして、グローブを外した右手を核膜に幾数もある核膜孔の一つに突っ込んだ。

 くっ!

 右手が焼きただれていく感触。激痛で右手の感覚ごと持っていかれるほどだった。

 しかし、K2はその痛みを我慢し耐え、核の中で蠢く細長い紐のようなものを掴むとそれを引っ張り出した。

 うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 引っ張ると同時に右手が欠けていくような感覚に陥る。激痛で手を離しそうになるが、どうにか力を入れると、核膜孔から引っ張り出した。

 ほぼ黒のロープのような染色体を引っ張り出したその右手は重度のやけどを負ったようにただれていた。しかも、その傷口から細胞質が入り込んできて、激痛が走る。

 それに耐えながら、左手で持っている試験管の中に雑に染色体を突っ込むと、それに左手で栓をした。

 引っ張り出した右手が試験管の中に染色体を入れると、役目を終えたかのように、力が入らなくなり、指を動かすことも出来なくなっていた。

 くっ、うぅ。流石に辛いぜ。そろそろ終わりにしてやるっ!

 そう心の中で言うと、K2は試験管をポーチの中にしまい、ポーチのまた別のポケットから父からもらった爆弾を取り出し、握りながらe波を流し込んだ。

 かなり強いe波を流し込んだ。

 あと、これを核膜孔から入れて、ここから脱出するだけ!

 そう思って核膜孔に手を伸ばそうとしたその時。

 ドプン……。

 背中に細胞質とはまた違うドロドロとした感触がまとわりついた。それは体に引っ付いてきて、もがいて取ろうとしても、まとわりついてきた。

 くっ、なんだ、これはっ!

 そう思うと、そのドロドロしたものは少しずつK2を取り込んでいこうとした。

 同時に、少しずつ後ろに引っ張られていって、核から遠くなっていく。

 や、やばい!

 そう思うと、必死に左手を伸ばした。

 と、届けぇぇぇぇぇー!!!

 後ろに吸い込まれていき、核と離れていくところを必死で手を伸ばす。

 くっ!

 しかし、ギリギリのところで左手が届かなかった。ところを、K2は指先で回転をかけ、勢いをつけて、e波で少し後押ししながら投げ入れた。

 腕一本がギリギリ入るくらいの核膜孔に黒い立方体の手の平サイズの爆弾が入ると、その瞬間、K2はドロドロしたものに勢い良く吸い込まれていった。

 ドロドロしたものの中はもはや身動きが取れなくなるくらい圧力がかかっていた。声すら出せない。

 そして、右手の損傷と圧力で少しずつ、意識も遠のいていく。

 どうにか意識をたぐり寄せ、一つに集めると、そのドロドロとしたものの中でe波を放った。しかし、全くと言っていいほど手応えはなかった。

 ど、どうすればっ!

 その時、全身に脱力感と共に刺すような痛みが走った。

 それに驚いて右手を見ると、ただ、損傷していただけだったはずの右手が黒ずんでいた。しかも、それは手のみならず、腕や肩までもそうなっていた。

 K2の全身が黒くなっていた。

 な、まさかっ! 生命活動の不活性化だと!? ということは、これは食細胞ってことか? 細胞の中に細胞があるのかっ? お、おかしい……そん……な……の……あ……り……えな……。

 全身の痛みと脱力感、そして、圧力による臓器の働きの低下に、生命活動の不活性化。

 あらゆる要因がK2の意識を奪っていった。この、音のない世界で。

 そして……。

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