真冬の流れる水の音 12
次の日の放課後。四人で遊ぶことになっていた。地下鉄谷保駅に自転車で集合ということだった。
K2が集合場所に着いた時にはすでにマーボーというあだ名で通っている原政弘が来ていた。
マーボーは自転車から降りてケータイをいじっている。
「やあ、マーボー、お待たせ!」
K2が近づいて声をかけた。
「ああ」
とだけ反応したマーボーだった。
他には誰も来ていなかった。
そして、数分経つと後の二人も来た。
「遅くなった」
「いや、さっき来たとこだから」
「それで、どうする?」
「まずは向こう側まで行っちゃおうぜ」
そういうと、四人は自転車に乗って川の方まで行った。
漕いでいる最中にみんなで話して進んでいた。それで、途中道で横になって漕ぐこともあったが、比較的広い道であることが幸いだった。
マーボーを見ると、何か不満げな物足りないようなそんな顔をしていた。きっと、走れないからだろう。
マーボーは長距離が得意でかなり早い。何度も大会で優勝してしまうくらいの実力者で、陸上競技の中では名が通っている。らしい。
街中をくぐり抜けていく四人。変わっていくその景色は一つ一つが一瞬で景色をじっくりと楽しむことはできない。
前へ前へ漕いでゆく足は同じ動作を繰り返していく。
四人の髪は風でなびいていた。
橋まで来ると四人はそこを渡った。人はあまりいなかった。
川の上を二羽の白鷺が飛んでいた。
渡り終えるとすぐに西府都市。
西府都市のほとんどは大きなひとつの公園と団地と住宅街で占めている。もっと北の方に行けば田んぼや畑もあるのだが、そこはもうほとんど西府都市ではなく、西府都市の隣の町になっている。
未来都市の西側に接しており、川に沿った南側の大きな道と繋がっている。
その大きな道の北側に住宅街があるのだが、その間に、人気の少ない迷路のような暗い道がある。そこは慣れていない人が行くと、必ず迷う程だ。
しかし、西府都市の西側に北に伸びる一本の道があり、そこは橋と一直線になっている。
そして、四人はその道を走っていた。
その街中を自転車で駆け抜けていった。
そして、着いたのは大きな公園。グラウンドがある。そして、体育館がある。そんな公園だった。近くに学校もあるため、そこに通う学生も見当たる。
公園の北にあるテニスコートの方へ行った。テニスコートは三面が三つ、つまり、九面あり、そのうちの四面は使われていた。このテニスコートは空いていればいつでも使ってよいというシステムになっている。
このあたりの見晴らしはとても良い。近くに大きなマンションもある。この公園はハケの上にある。すぐ近くにハケがあり、そこを下ったところに学校がある。
マッツーとマーボーがテニスで勝負することになった。和也とK2は柵の外で見ることとなった。二人はテニスラケットを持ってきていたらしく、それとテニスボールを取り出すと、コートの中へと入って行った。
明るいこの公園の端のほう、テニスコート。その一角にある、一面。そこに二人の男子。右手にはラケットが握られている。ボールを持つのはマッツー。
そして、ボールが高く高く上がる。そのボールはテニスラケットの高速サーブを受けると、相手コートを叩いた。そして、跳ね返る。
マーボーはそのボールを追いかける。伸ばした手にラケットにボールが当たると、クロスに返した。
ラリーは続く。その動きの素晴らしさに、スキルの高さに、周りでテニスをやってた人たち全員は、手を止め足を止め、プレイ中の二人を見ていた。
そのかっこよさに和也とK2は見とれていた。
ゲームも終盤。マーボーは何度かデュースに持ち込んでいたが、マッツーがリードしていた。
サーブをする。ボールは速さを保ちながら飛んでいく。またしてもラリーが続いた。二人は足を動かし、体を使ってボールを返していく。ラケットは鋭く強く振られ、ボールもまたそれに同調する。ボールを打つ音と走る音、そして、ラケットが風を切る音が素晴らしいハーモニーを奏でていた。
そして……。
「うわぁぁぁぁ!!」
悲鳴にも似たその歓声はまるで、勝負という概念がもともとなかったかのように感じさせた。実際は、勝負であったからこそこの素晴らしい試合が見れたのだが。
「あーあ、負けちまったよ……」
テニスコートから出てくる二人。そう言うマーボーはしかし笑っていた。
あの試合は二人にとってはとても楽しいものだった。
その後、みんなでグラウンドに行くと、そこでは同い年くらいの人たちがサッカーなり野球なりで遊んでいた。
「ねぇ、フリスビーしない?」
K2はそう提案する。K2は遊び道具としてフリスビーを持ってきていた。そして、バックからちらりと三人に見えるようにフリスビーを覗かせた。
「ああ、いいよ、やろーぜ!」
そういうと、四人は等間隔に広がり、正方形の頂点を作るように立った。向かいはマーボー。隣はマッツーと和也。
フリスビーを持っていたK2はまず、マッツーに投げた。フリスビーが上に上がって戻ってこないように、地面スレスレに投げる。
すると、取りづらかったのか、マッツーは足で踏むようにして止めた。
プラスチックのフリスビーだが、なかなか壊れにくい。
「おい、K2! もっとちゃんと投げろ!」
「ごめーん!」
K2がそう言うと、マッツーは次にマーボーに投げた。
ちょうど良い高さでまっすぐ飛んでいったフリスビーはちょうどマーボーの胸の高さでキャッチされた。
「ところでさー」
マーボーが和也に投げるのと同じタイミングで、話始めた。
「この前、未来都市でアイディオクスが出たんでしょう?」
「出たよ」
和也がフリスビーを受け取ると、そう言った。そして、K2に投げながら言った。
「K2、詳しいこと知ってる?」
「ああ、知ってるも何も、俺駆除に当たったし」
和也からのフリスビーを難なくとった。
「「え?」」
和也以外の二人は少しだけ驚いていた。
銅属性亜巨獣型アイディオクス。つい最近現れたそいつは、K2や仲間が未来都市で駆除したものである。
未来都市はかなり栄えた都市だ。だから、そこにアイディオクスが来れば、それはかなり大きな事件となる。
しかも、今回は少しばかり被害が大きい。もちろんそれはアシュリーのぶったまげた一撃のせいではあるが。
だから、噂も広まるのが早い。
誰がどのように駆除したかなどの詳細は広く広まることは少ない。しかし、どんなやつがどこでいつ現れたかというのはあらゆるマスメディアで広まっていくため、アイディオクスに直接、接することのない人でも、情報は容易く手に入れられる。
そして、マーボーが言ったこともまた、然り。だから、このようにアイディオクス特攻隊と接している者は詳細を聞きたがるのだ。
もちろん、秘密事項は言うことはないが、少しなら教えても影響しない。
「へー、K2、駆除したんだ。でも、今回のって結構被害大きかったんでしょ?」
K2は持っていたフリスビーをマッツーに投げた。
「あー、あれね、同僚の仕業」
同僚とはもちろん、アシュリーのことだ。
「でも、なんか、ビルの窓ガラスとかも割れてたし」
マーボーにフリスビーが飛んでいく。そして、マーボーはそのフリスビーを片手で取った。
「テレビで見たよ。なんか、凄かった。それに、道に倒れてたアイディオクス、でかくね?」
マーボーは和也に投げると和也もまたフリスビーをキャッチする。
「いや、あれは亜巨獣型だから、結構小さめだよ」
「まあ、この前和也と戦ったやつは建物三階相当の大きさだったしな。」
回ってきたので、K2はマッツーに投げる。
「へー、すげーな」
「まあ、二人はねー」
マーボーはそう言うと、回ってきたフリスビーを和也に投げた。
「あ」
和也がフリスビーを落とすと、会話もまた止まった。




