陽華と桜花 女同士の戦
清雅『桜花、君の守護の力を貸してくれ』
桜花『えー‥‥いいけどさ。
アタシ、キヨの守護者、怖いんだよね』
聞き耳を立てていた陽華は一瞬、ビクッと肩を振るわせた。
【ようか?
今 ようか と言ったの?
私と同じ名前‥‥‥?】
清雅と外にいる【ようか】という女の子は
どんな関係なのだろう。
こんな森深くにある家にやってきて、
清雅のことをキヨと呼ぶほど親しい仲。
そして、【キヨの守護者】とは何なのだろう。
そもそも、清雅は何者‥‥‥
どうして自分を閉じ込めていた鎖を
清雅は解く事ができたのだろう。
急に冷静さを取り戻した陽華は、
何も知らない清雅について考え始める。
すると不意に、床に何かが落ちるような音が響くと、
2人の熱い声が聞こえてくる。
再び、ドクン、と陽華の心臓が鼓動した。
【私の純潔を奪ったくせに】
【もう他の女に触れるというの】
陽華は我を忘れたように、部屋を飛び出る。
2人の声を辿ると、扉が少しだけ開いていた。
陽華は中を覗く。
床に散らかる衣類と
艶めいた吐息が
陽華の嫉妬心をさらに深く抉った。
【どうしたら】
【私を見てくれるの、清雅】
陽華は胸に手を当てて考えた。
【そうよ】
【私は、小動物を殺すほどの
強力な呪詛を持っているの】
【渡さないわ】
【どんな手も使う】
陽華はそっと、2人の部屋を離れた。
寝かされていた部屋の前までくると、
故意にその場に倒れる。
鈍い音が廊下に響くと
一瞬、2人の声がしんと静まり返る。
しばらくすると、急いで服を着た清雅が
部屋を飛び出して走って近づいてくる。
清雅『陽華!』
清雅は陽華を抱き抱えた。
陽華は苦しそうな表情で胸を押さえて、
はあ、はあと呼吸を繰り返すと
上目遣いで清雅を見つめた。
陽華『ごめんなさい‥‥清雅‥‥‥』
清雅『ううん。無理させてごめん‥‥』
桜花が部屋の外から2人を見つめる。
チッと小さく舌打ちをして、遠くから陽華を睨んでいる。
桜花(女がいたなんて聞いてないわ。
まさか、キヨが女を連れ帰っていたとはね)
桜花が不機嫌そうな顔で清雅に近づく。
清雅の腕に抱かれた陽華の姿を見つめた。
華奢で白く、弱そうな女の首筋に
赤いアザがついていたのを、桜花は見逃さなかった。
桜花(この女‥‥‥キヨに‥‥‥)
桜花は恐ろしい形相をして陽華を見た。
陽華は気づかないふりをして、清雅の肩にもたれかかり目を閉じた。




