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はれのみこ 〜山神に愛された娘の末裔〜  作者: 墨華


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4/10

動物好きな青年


森の中にぽつんと建つ家の前にたどり着く。

清雅は村だと言っていたが、

近くに、他の家は見つからなかった。



清雅『此処が僕の家だよ』



そこはとても広くて、

大家族でも住んでそうなくらいだ。



陽華『何人で住んでるの』



清雅『ひとりさ』



陽華は驚いた。

1人でこの家で住むには広すぎる。



清雅『広すぎるって思ったでしょ』



清雅はイタズラっぽく笑う。

陽華は見透かされているようで、少しだけ緊張感を覚えた。



清雅『動物たちも住んでるんだ。』



陽華『動物‥‥‥?』



清雅『うん。

うさぎに、モルモット、ネズミ‥‥‥

小鳥もいるし、猫、犬もいるよ』



陽華『そう、なの‥‥‥。』



陽華は、清雅がとても動物好きな青年なのだと思った。



清雅『小動物は小動物で部屋を分けてるから

広いんだよ。

いい環境で住まわせてあげたいからね。』



清雅は鍵を開けた。

扉が開くと、一斉に2匹の大きな犬が清雅に向かって尻尾を振り駆け寄ってきた。



清雅『ただいま。白亜(はくあ)。暗美(くらみ)。』



白と黒の犬はそれぞれ、白亜と暗美というらしい。

清雅が入って、と陽華を促す。

陽華は辺りを見渡しながら履き物を脱ごうとした。



『グルルルルルル‥‥‥‥』



玄関に唸り声が響いた。

陽華が顔を向けると、

白亜と暗美が、陽華に向かって

牙をむき出しにしながら、

今にも飛びかかりそうな勢いで睨んでいた。



陽華はビクッと肩を震わせた。



【この子達は、気づいている。】



それが先ほどまで脳内に響いた

誰かの声なのか、

はたまた村総出で封印した

自分に憑く何かなのか。


陽華には知る由もないが

綺麗な目をした犬たちが

自分を化け物のように見つめることが

酷く悲しかった。



清雅『こらこら。お前たち』



清雅は2匹の頭を優しく撫でた。

警戒していた2匹は、徐々に様子を取り戻し、

清雅に向かって尻尾を振り始める。



清雅『ごめんね。初めての人に警戒するんだ。

番犬だから。』



陽華はついに、家の中に足を踏み入れる。

犬たちはまだ、尻尾を縮こめて警戒している。

前を歩く清雅の後について行くが、

犬たちが時折、振り向いてこちらを睨めるのだ。



【山神に愛された娘】

その末裔が私。


一体、この子達に、何が見えているのだろう。

私は何故、外に出れば水害をもたらすの。



陽華は考えた。

今まで、狭い檻の中でそんなこと

考えたこともなかった。


広い世界に逃げ出して、初めて

自分について考え始めたのだ。



陽華は思った。


【村の名前すら知らない。

母の名前も、父の名前もー‥‥‥】



清雅はとある扉を開けた。



清雅『此処が小動物の部屋。』



そこには、うさぎ、モルモット、ネズミ、小鳥たちが

広い檻(ケージ)の中でたくさん飼育されていた。


皆、毛並みも良く、清雅が近づくと

鳴き声を発しているほどに慣れている。



陽華『かわいい』



陽華は呟いた。


清雅はそんな陽華に微笑んで、

再び口付けをした。


またもや、清雅は

陽華を抱き寄せた。



【何故‥‥‥】



陽華は思った。



【この人はこんなにも強引で

でも、抗う隙を与えないほど

甘さを纏っているのだろう】



【溺れてゆく】



陽華は目を閉じた。


可愛い動物たちがいる空間で

陽華は自分があまりに穢れている存在のような気がした。


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