許サナイ
清雅は呆然と水害に見舞われている村を見下ろす陽華の腕を掴み、再び歩き出した。
陽華『どこへ私を連れていくの』
清雅はフッと笑みを浮かべた。
清雅『住むところないでしょ。
僕のところへ来るといい』
陽華は眉を顰めた。
誰かといられることは、うれしい。
いつもひとりだったから。
けれど初めて出会った自分に、
何故こんなにも親切なのか。
考えても答えは出なかった。
清雅『安心して。僕の住んでいるところも村でね。
のどかでいいところなんだ。
目の前は森だから、虫は多いけど』
清雅は陽華の手を引いてどんどん歩いていく。
不意に陽華の心臓が、ドクン、と大きく鼓動した。
少しだけ苦しくて、陽華は胸を抑えてその場にうずくまる。
清雅『大丈夫?』
陽華はこくりと頷く。
清雅はひょいっと陽華を抱き抱えると
再び歩き出した。
陽華『何を‥‥‥!?』
陽華は戸惑いを浮かべて問う。
清雅『昨日から色々無理させてしまったから』
清雅は優しく陽華を抱えていた。
陽華は清雅の肩にもたれかかると、
体温が上がるような高揚感を覚える。
血管の浮き上がった清雅の首に
歯を立てて赤く染め上げてしまいたくなる。
【私は一体、何てことを‥‥‥】
自分への恐怖と、正体のわからない興奮で
はぁ、はぁ、と吐息が漏れる。
清雅はそんな陽華を心配するように顔を覗き込んだ。
清雅『熱でもあるの?』
【苦しい。狂おしい】
再び、誰かの声が聞こえる。
【今度は、私が
清雅を奪ってしまいたい】
響き渡る言葉があまりにも悍ましいものばかりで
陽華は恐怖に苛まれる。
【私は、何者なの】
陽華は考えた。
【山神に愛された娘の末裔】
山神に愛された娘の、末裔‥‥‥
何故神様に愛された娘の
末裔である自分が、封印されなければならなかったのだろうか。
陽華は、何も知らないことに気がついた。
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清雅は深い森の中をずっと歩いていた。
もしも夜なら、絶対に生きては戻れなさそうなほどだ。
陽華『本当に、村があるの』
清雅『あるよ。』
陽華は少しだけ不安になった。
どこへ連れて行かれるのだろう。
清雅『心配?』
清雅は抱き抱えていた陽華を下ろすと、
優しく唇を重ねる。
陽華は再び、清雅に身を委ねていった。
ぼうっとする頭の中で、今度ははっきりと男の声が響いた。
【許サナイ】




