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第8話 久しぶりの幼馴染


その後の授業の内容は全然覚えてない。ただ置物ようにそこにいて時間だけが流れていった気がする。


「おい、涼介!聞いてくれよ!?朝から昼までの記憶がねぇんだけど、俺何してたんだ?」


「あー」


「おーい?涼介?どうしたんだ?シカトか?なぁ無視するなよ!?おおおおおおおおおおいいい!!!??」


合間にツンツン頭が俺に途中から涙目で質問してきていた気がするがすこぶるどうでもよかったので適当に返事をしていたら、あっという間に帰宅時間になっていた。

 俺は靴を履き替え出口に向かうと、校門前で既に女木がこちらを睨み待ち構えていた。


「遅い」


 彼女は腕を組みながら俺に一言そうゆうと俺の返事を待たぬまま行ってしまう。

 分かってはいたが突きつけられた現実に対し俺は見せつけるように大きなため息をし後に続く。


 幼い頃、女木とはよく家で遊んでいたため俺の家の場所はバッチリと特定されており、結局逃げようがどうしようが関係なく、現に今彼女が先頭を歩き俺が少し離れて後ろを歩いている。

 そしていつもの如く例の桜並木の道を通る。普通なら若い男女が放課後のこの時期ここを一緒に下校するということは傍からみればそれは幸せなことなんだろうが、今は何故かちっとも嬉しくない。

 並木道は間に小さな湧水が地下水から通っており、それが石積み護岸で形成され美しい用水路として、知る人ぞ知る小さな観光地になっている。それに加え今の時期は舞い落ちた桜がまるで薄紅色の絨毯のように湧き水を桃色に染め上げ時折その水面から立派な錦鯉が地上へと跳ね上がる。

 俺は胃がキリキリと張り詰める感覚をせめてもの思いでこの景色に身を委ねていると突然前から低音の女の声が降り注ぎ俺は足を止める。


「ねぇ」


いつの間にか前を歩く女木も俺と同じ景色を見ていた。


「昔はよく遊んだよね…ここでも沢山」


「…あ、ああ…そうだな」


確かによく遊んでいたことは覚えているが、限定的な記憶となるともう曖昧なものだった…


「涼介さ…あの日ここで私にいったこと覚えてる?」


彼女は後ろを向いたままそう涼介に尋ねた。


「すまん」


「…そう」


そうゆうと再び女木は歩みを始めた。


ここでいったこと?駄目だ。遊んだ記憶すら断片にしか覚えてない俺がその時の一言一句なんて覚えてる訳がない。それを今も女木が覚えてるってことは、よっぽどその時の俺たちにとって大事なことだったんだろうか?



 そしてその後はただひたすら沈黙であっという間に我が家の目の前に到着する。というより心なしか最後に俺達が喋った時くらいから女木の進行速度が上がった気がするのはきのせいだろうか?


「本当に会うのか?」


「会ったらまずい関係なの?」


「なんでそうなる」


「学校で今1番噂になってるからもしかしたら普通に淫らな関係ならちゃんと学校に報告して出るとこに出てもらわないと」


俺は最終忠告を試みたが法定沙汰にまで発展しそうだったのでしぶしぶと玄関の鍵を開け扉を開く。


「おじゃまします…」


女木が後ろで少し緊張したように声を出したが、家の中は静まり返っていた。

 俺は玄関の靴を確認するとどうやら全員外出しているらしい状態だった。


「あ、ああ…わりぃな女木…今おれんち多分誰もいないわ…いやあせっかく来たのに残念だったなあ」


俺が少し嬉しそうに女木に云ったのが勘に触ったのか、彼女はムッとした表情で答える。


「涼介、部屋2階だよね?」


「え?あ…お?…おう」


すると女木は丁寧に靴を揃え並べすたすたと階段を上がっていく。俺はその光景をただ呆然と見ていた。


「Really?」


つい流暢《りゅうちょう》に横文字を口にした後俺はあまりにも自然な彼女の行動に驚き急いで靴を脱ぎ捨て自分の部屋に走った。

 そしてドアノブを回してドアを開けると夕方の空の風に白いカーテンが揺れ、夕焼けに照らされた部屋と俺の幼馴染、女木雪音がそこにはいた。


「ようこそ根来寺涼介君」


何故か彼女はさもミステリアスな女を演じながら微笑みそう云った。

 俺はパチパチと目配せをしながら状況を整理するが整理できなかったので、最近よく読んでいる小説になぞらえてタイトルをつけてみることにした。


「俺のいかつい幼馴染が数年ぶりに俺の部屋に来たら電波少女にレベルアップしており修羅場だったので俺の脳内コンピューターが解析破棄した件について」


 そう俺が早口でゆうと彼女は夕焼けということも相まって俺に見せた笑顔はひと昔前のゲームにありがちなバッドエンドルートのヒロインの表情そのものだった。


「とりあえず一発殴らせて?」


  

   BADEND 血染めの部屋〜女木雪音編〜





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