第9話 2人きり
そこから本当に俺の生涯が幕を閉じた訳でもなく、彼女は無言で俺が愛用している大きめのベッドに腰を下ろしじっとしていたので何となくその横の空いたスペースに腰を下ろしてみる。
「……………」
「……………」
二人は真顔でどこかの一点を見つめ一切動こうとしない。しかし彼女の心の中では壮絶な心理戦が行われていた。
(涼介の態度が気に入らなかったからつい勢いで部屋に入ってきちゃったけど…どうしようこれ?何がようこそ根来寺涼介君だよ!?緊張してるのバレたくなくて余裕見せようとしたらこれだよ!!意味がわからないよ!そしてなんで私は平然と彼のベッドに腰掛けて、それに便乗して座ってきてるの!?彼、今どうゆう気持ちなの?ねぇ!?どうゆう気持ち!?)
俺がふと視線を女木にやると、彼女はまるでやかんが沸騰したように蒸気を上げ、顔全体を真っ赤にしていた。
それをみた涼介は目の色を変え女木の目の前に顔を突き出す。
「おい?大丈夫か?熱でもあるんじゃねぇのか!?」
「へ?」
女木がこっちに振り向くと、口を半開きにし目をぐるぐる回しながら、髪は乱れ汗をふきだし目の隅には涙さえ伺える。
「やっぱりお前熱あんじゃねぇか!!なんか様子がおかしいと思ったぜ、くそ!」
そうゆうと涼介は女木に有無をいわさず自分のベッドに押し倒すように寝かせる。
「なっ!?大丈夫だって!!熱なんてないから!?」
「んなわけあるか!暴れんなッッッ!!」
女木は抵抗するが難なく押し倒されベッド仰向け状態になる。そして何とか頭を上げ両手で抵抗するがその手を恋人繋ぎのように絡め取られ広げられる。
ガチャ
「涼介帰っとたん?他の靴もあったけど友達でもーき…とん…ーーー」
「ち、ちょっと涼介、息が…かかって…ひゃん!」
「はぁはぁ…だから、すぐ終わるからじっとしてろっていってんだよ!」
買い物から帰ってきた少女がドアを開けると若い男女が甘い声を上げながらベッドで絡み合っている光景を目にしたのだった。
「お?おお!?ほう!」
俺達はベッドからまじまじとこちらを見つめる少女と目が合う。
「邪魔して悪かったなぁ。あ、でも涼介、無理やりはいかんよ!ちゃんと相手の合意の上でせな!ま、でもその様子見る限り大丈夫そうやね。ばあちゃん下におるけん気にせずゆっくりしたらええよ。じゃあ」
少女はまるで孫の成長でも見たかのような感動と喜びの表情を浮かべ静かにドアを閉める。
涼介と女木はその出来事に目を丸くすると、再び互いを見つめる。
乱れた服に自分のベッドに押し倒した幼馴染、更に一人は顔を真っ赤に染め上げている。それは勘違いするなとゆう方がおかしい状況だった。
「か」 「か」
一瞬にして静まり返ったその部屋に次の瞬間2人の怒声が響き渡る。
「勘違いすんなぁぁ!!」 「勘違いしないでッッ!!」
俺達はすぐさま下に降りて下で包丁を鮮やかに振るっていた割烹着の少女に駆け寄ると事情をこと細かく話す。
「なんやぁ…つまらん」
俺達は台所の横の長机に座ると説明を終えた少女から落胆の声があがる。
女木はさっきのこともあってかまだ下を向いてもじもじしているが俺はというとつまらなさそうな顔をこちらに向ける少女に対し半ば呆れ顔で眺めていた。
「まぁ、事情はわかったんやけど、涼介?何でそんな回りくどいことするん?本当のこと云ったらええやんか?」
少女は割烹着を着直すと、再び台所に立ち作業を進めながら質問する。
「信じてもらえないからこうなってる」
実際俺も信じてないわけだが…
「本当のことってなんですか?」
女木は直接少女の方に向かって質問する。すると少女は窓に少し反射し夕暮れがかった顔を覗かせてこう云った。
「そらぁ私が涼介のおばあちゃんってことやろ?」
「え」
女木が口を大きく開けて止まる。そりゃあそうなる、そうなるから云えない。というか俺が云ってたら確実にぶっ飛ばされてた。
俺はやれやれといわんばかりに頭を押さえ首を振る。 少女は笑顔のままそうゆうと、再び料理を再開する。
「え?終わり?」
女木が一言だけ喋った少女の解答に困惑し俺に尋ねてきた。
「終わり」
そう返事をすると、女木は席を立ち俺の肩に手を伸ばし喋り始めた。
「どうゆうこと?あんたのおばあちゃんって先日亡くなったんじゃないの?」
「俺もそのはずだったんだが、どうやら復活の呪文で復活したらしいな」
俺が軽口を叩くと横腹辺りに拳が入る。
「グハッ」
「あの見た目でおばあちゃんは無理があるでしょ!?」
「ああ…だから…俺も…信じて…ない…から」
俺は横腹を押さえながら答えると女木は呆れたようにため息をつき俺から離れ席に戻る。
するといつの間にか部屋はいい香りに包まれ、女木がそれを鼻で感じ取り、少女の方に目をやると慣れた手つきでフライパンに具材を落とし炒めているようだった。
「てゆうか、お前体調本当に大丈夫なのかよ…」
涼介は目を細め目線をずらしながら少し頬を赤らめさせて質問していた。それは先ほど、女木を押し倒した事を今になって後悔している現れでもあった。
「は?だから大丈夫だっていってるでしょ!?勝手にあんたが勘違いしたからあんなことになったんじゃん」
(まぁ、意識してたのは私だけど…)
その間、2人は互いに目線を合わせられず少し照れながらもじもじしているとちょうど料理が完成の合図が知らされる。
「はい!できあがり、雪音ちゃんもついでだから食べていきまい!」
「え?そんな悪いですよ!?」
そんな女木の制止も虚しく、次々と料理が並べられ最後にメインの皿が2人の前に置かれた。
「…これは……オムレツ?」




