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第35話 タイムリミット


 俺は確かに女木の母親に電話をかけていたつもりだった。もう一度画面を確認するが間違いではないようだ。けれど向こう側では今もすすり泣く俺の友達の声が聞こえていた。

 俺は無言でスピーカーにし横で首を傾げている少女にも聴こえるようにする。


「女木…雪音なのか!?」


俺は再度そう叫ぶと女木は俺の呼び声には応えず喋り出した。


「…ひっぐ…りょうすけ…お母さんがぁぁ…あいつに棒で殴られてッッ…うう…危ないの!!あんまり動かないのぉ!!それであいつが今私の部屋を壊してきて…私も…お母さんも…このままじゃ殺されちゃう!!」


 いつもの彼女からは想像もできないほどに言葉はちぐはぐしており、気が動転していた。それ故に聞いている側には今の現状の危険性がひしひしと伝わった。


「雪音…わかった…わかったから一旦落ち着け!俺が直ぐに行ってやるから!!…だから…お前はもう何も心配せず落ち着いて待ってろ…な?」


 俺はできる限り、冷静を保ち女木を安心させるように誘導すると少し落ち着いたのか、返事が帰ってくる。


「…うん…待ってる…」


「じゃあ…一旦切るからな…またすぐ会おうぜ…」


 そして電話を切ると俺は再び走り出す。横でさっきの俺の話しを聴いていた少女も今度は何も云わず俺について来ていた。

 あいつの家の住所も覚えていない俺にとって今は警察に電話をしている時間さえ惜しく、それを後回しにすることを選んだ。

 しかし全力で走り続けても女木の家まではどう頑張ったってまだ15分以上はかかる。俺は既にフラフラになりゆうことを効かなくなってきた足を無理やり前に進めるがそれに加え雨のせいで体温も奪われコンディションは最悪だった。

 

「こらぁ!!もっとはよ走らんかッッ!!」


 そんな俺を叱咤しながら、少女は俺を急かせる。


「…ゼェ…やってる…ての!…ゼェ…」


 女木の家を知らない少女は俺の後をついてく術しかなく先ほどから体力の限界を迎えた俺をイライラしながらついてきていた。


「…これ…あいつの家…さきいっといてくれ…部屋番号は…」


 俺はスマホで位置を教えると、少女に口頭で部屋番号を伝える。するとそれを見た少女は俺のスマホを奪い取るように受け取ると、一瞬で加速し消えてしまう。


「はよ来るんで!!」


 そう言い残して…


 そうして俺はひとりざざぶりの中、死にかけで走る。先ほどまであれだけ女木にカッコつけてたってのに情けない…


「おい、涼介何してんだ?流石にそのギャグは笑えねぇぞ?」


暗い天気の中、突如バイクのヘッドライトが照らされ俺は余りの眩しさに目を塞ぐ。


「…ゼェ…誰…だ」


 バイクの男はカッパを来てフルフェイスで覆い雨を完全に遮断しているが、そのメットから素顔が現れると俺は名前を叫ぶ。


「ひさし!!」


「おう」 


 すると俺は天にもすがる思いで、久に問いかける。


「乗せてくれ」


「は?なにいってんだお前」


 久は俺の発言に雨のせいでとうとう頭がやられたのかといった顔で俺に言い返してきた。


「女木がやべえんだ。頼む」


「それをはやくいえッッ!ほら後ろ乗れよ!!」 


「ありがとう」


「お前から素直に感謝の言葉を云われるとなんか気持ちわりぃな…」


 久は予備のメットを俺に渡すと、そのまま女木の家に向けてバイクを走らせた。



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