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第21話 門前


 「ここか?」


「ああ、多分」


「多分ってなんだよ!お前何回も来てんだろ!?」


「誰がそんなこと言ったよ!?先月たまたまあいつの家を知るきっかけになっただけで来るのはこれで2度目、入るのは初めてだ」


「は?ここどう見てもオートロックだろ?あいつの部屋番号わかんねぇじゃねぇか!?」


 久はそう罵倒すると俺はプリントを見せつける。


「だから、休んでた分のあいつのプリントを届ける名目で担任から部屋番号を教えてもらった」  


「おまえ…結構抜かりなくて引くわ…」


「お前が行くって言い出したんだろうが!!いいからとっとと入るぞ」


 そして俺達はマンションの中に入り、俺は教えられた部屋番号を入力し呼び出しをかける。


「一応いっとくけどこれで誰も出なかったらもう俺達じゃどうすることもできないからな」


「わかってるって」


 そして暫くの呼び出しの後、インターホンから声が聞こえた。


「はい」


 声の主は女木ではない女性の声だった。恐らく女木の母親だろう。


「あの突然すみません。俺女木…雪音の友達の根来寺涼介っていいます。休み明けからずっと学校休まれてるんで溜まってたプリントを持ってきました」


 俺がそう伝え終わると暫く無言が続き、俺と久は顔を見合わせた。そして


 目の前の自動扉が開き、再び女性の声が聞こえた。


「どうぞ…雪音今寝てるみたいで呼んで来ますので先に上に上がってて」


 そうして俺達はエントランスの中に入りエレベーターに乗り込み、目的の階数を押して扉が閉まる。


「なぁ、結構やばくないか?」


「ああ、かもな」


 俺達は珍しく意見が合った。それは先程の雪音の母親の声だ。

 インターホン越しでもわかるくらいにかすれ、生気のないような声で最初に聴こえた時、思わずゾッとしてしまった。俺も久に云われるまでまさかと思ったが、もしかしたらあの日を境に何かがあったのかも知れない。


 俺達は扉が開くと同時に早歩きで女木の家の部屋番号まで急いだ。そしてインターホンを鳴らす。

 しばらくすると、ドアが少しだけ開きその隙間から半分だけ顔が現れ、思わず久が仰け反ってしまう。


「うわっ!?びっくりさせんなよ」


 久がそう叫びながら声をあげると女木が真顔で口を開く。


「なに?」


 相変わらず人を見下したような声色だったが、今日はどこか元気がないようにも感じた。


「何って、わざわざプリント届けにきてやったんだろうが…それと、お前いつ学校来るんだよ…みんな心配してるぞ」


 すると女木は俺の手からプリントに手を伸ばして受け取る。


「ああ、悪いわね。ちょっと休み明けから体調崩しちゃってて…週明けには絶対いくから」


「週明けって、まだ数日あるんだぞ!?そんなに重い病気なのかよ!?本当に大丈夫か?」


 久は女木を心配した様子で発言するものの当の本人にはまるで久の言葉が聞こえてなかったように自分の話しを続けた。


「それと…もうここには来ないで…それじゃあ」


 そして有無をいわさず扉は閉じられ鍵をかける音が聞こえた。


「おい!?女木ッ!!んだよ!あいつ…」

 

 久は余りの態度に地面に足裏を叩きつける。俺はというとただ無言でじっとそんな久を見つめているだけだった。

 そうして一応会えはしたものの帰って不信感を覚えた俺達はそのまま解散し俺は家へと帰った。


「ただいま」


「あっ!おかえんなさい!!」


 玄関でたまたま居合わせた割烹着姿の少女と目が合った。


「ん?どしたん?」


 暗い顔を向ける俺に少女は心配そうに問いかける。一瞬今日会ったことを伝えようと迷ったが、何となくこの件には彼女を巻き込みたくないと思ったため黙っておくことにした。


「いや?ちょっと疲れただけだ。今日の晩飯は何だ?」


「ほうか?そうそう!今日のご飯はな!ーーー」


 そうして数日が過ぎた。



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