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第18話 また明日


涼介と八重はフードコートに来るまで醜い争いを続けていたが、女木は空気を読み八重にクレープを提案すると目を輝かしていこうとしていたがその様子を見ていた涼介が捨て台詞を吐く。



「じゃあな、お子様ばあちゃん」


 

 祝日のフードコートは夕方だというのにそれを感じさせないほどに賑わっておりちょうど空いたテーブル席に俺と久は着席し俺は頭を抑える。


「お前、実はアホだろ」


 向かい側に座っている久が俺の痛がる様子を見て苦笑いでこちらを見ていた。

 お前にだけは云われたくないという気持ちだったが自分でも認める程に無謀な事をしたと後悔していた。


「なんもいえねぇ」


 いつもなら、大抵の理不尽には目を瞑り余計な二次災害は増やすまいと努めているつもりなのだがあの少女の前だとなんか調子が狂う。


「ま、それだけ八重さんとお前との相性がいいんだろうな」


「気持ち悪いことゆうな」


 俺は机に塞ぎ込みながら、横目で女木の腕を掴みキラキラした目で商品を選ぶ少女を盗み見る。


「あれのどこが…俺のばあちゃんだよ」


 誰にも聞こえないように小さく囁くと自分の中にあるモヤモヤがより一層強くなるのを感じていた。



 その頃クレープの列に並んでいる2人は自分の注文順が回ってくるまで他愛もない話しで盛り上がっていた。


「なぁ!雪音ちゃんもよくこういうとこくるん?」


「まぁ、友達と時々…ですかね」


「涼介とも?」


「な、何でそこであいつがでるんですか!?」


 その言葉に女木はひどく動揺しながら答えると八重はにっこりと微笑みながら答える。


「だって涼介とおる時すっごく楽しそうやもん」


「楽しそう!?あれがですか…」


「まあまあ、今はそう感じんでも大人になったらそれがかけがえのないもんやってわかるようになるけん」


「はは…そうだといいですね…」


「まぁ、出来の悪い孫やけどこれからもなかようしてやってな」


 どこからどう見ても同い年…いや…少し歳下くらいの子にそう云われ複雑な気持ちになる女木はとりあえず目の前で一切穢れのない表情で見つめる八重に了承するしかなかった。


「は、はい。わかりました」


 そうこうしていると2人の順番になりそれぞれ注文した後呼び出しブザーを受け取り、その間することもないので他の店舗を流し見しながら歩いていた。


「やっぱりこういう所って…その八重さんにとっては珍しいものなんですか?」


「へ?ああ…そうやね。昔はコンビニやスーパーもなかったけん、更にそれよりずっと立派なもんってなるとテレビでしか見たことなかったから、新鮮やね。一応私の地元にもあったんやけどそん頃にはもう足腰がゆうこと効かんかったし一人やったからねー」


 八重はそう笑いながら少し悲しげな表情で答えると女木はそのことに抗うように口を開く。


「………大丈夫ですよ。今は涼介や私達がいますからまたいつでもどこへでも行きましょう!」


 女木もまだ目の前の少女が若返った涼介の祖母だとは信じ切れずにいたが、彼女の純粋さやどこか同年代とは違う雰囲気や何よりも寂しそうなその表情を見て言い出せずにはいられなかった。

 

 その言葉を聞くと、八重は立ち止まり驚いた顔で女木を見つめ、そして泣いたー


「えっ!?えええええー!?」


 余りの出来事に女木は驚くと慌てて持っていたハンカチを差し出す。


「うぇっ…ぐすん…ごめんなぁ…年取ると涙脆くなってしまうんよ…」


 八重は渡されたハンカチで赤く腫れた顔を拭くとすぐに笑顔を取り戻す。


「ほんと、ええ子や、なぁ…雪音ちゃん」


「はい」


「涼介のこともらってくれん?雪音ちゃんみたいな子がおったら安泰やわぁ」


 八重は元気を取り戻した途端、彼女の健気な対応を見て感動しそう云った。


「へ?その…もらうっていうのは…どうゆう…」


「そりゃお婿さんによ」


 女木は暫く表情が固まったままだったが、それを理解した途端顔を赤くさせた。


「いや、そのあいつとは只の幼馴染で…まだ付き合ってもないですし!?…け、結婚なんて…そんな急に…」


「でも好いとんやろ?」


 八重はきょとんとした顔でそう尋ねると、女木は両手を前に突き出してパタパタとさせる。


「は、はぁ!?何言ってるんですか!?…あんなガサツで根暗で無神経で口悪くてちょっと高校生になって背が高くなって男らしくなって無意識に車道側歩いてくれたり私の体調の心配してくれたり、余計な気を遣ったりしてほんと昔から何も変わってない成長しないやつのことなんて好きな訳ないじゃないですか!?」


 そう、フードコートの真ん中で言い切ると、女木は周りの視線も気にせずゼェゼェと赤くなり肩で息をしながら涙目だった。

 その様子を八重は目を閉じ黙り笑顔で見つめながらこう思った。


(めっちゃすきやん)



 

 俺と久はあれから暫く待っていたが中々戻ってこないので辺りを見回していると、急にクレープが放り込まれ、口の中に甘さが広がっていった。


「もごっ!?」


「そんなにクレープが欲しかったんやったら涼介も一緒に来たらよかったのに」


 そう云うと、引き抜いたクレープを少女は美味しそうに頬張っていた。


「ん、おいし」


「んな訳あるかぁぁ!!」


 そうして自然に何の躊躇いもなく間接キスを行った八重を横にいた女木は驚きながら自分のクレープを見つめながら赤くなっていた。


「帰ってくるなり騒がしい奴らだなぁ(笑)」


 そうして暫く4人で談笑しているとふいに、女木のスマホから着信が鳴り響いた。


「ごめん、ちょっと外すね」


 そう云うと彼女は小走りでトイレの方に駆け込んでいった。俺は何となくそんな女木の後ろ姿を目線で追っていた。


「そんなに、雪音ちゃんのことがきになるんかぁ」


 横で茶々を入れてくる奴はほっておいて俺は空になった水を補充するため席を立つ。

 そして注いだ水を持って戻ってくると女木が急いで俺達のところに戻ってきた。


「ごめんみんな、ちょっと急用が入っちゃって先帰るね!!八重さん、今日は本当に楽しかったです。また近いうちに会いましょうね!…あんた達も、また明日学校でね」


 そうゆうと女木は急いで行ってしまった。


「どうしたんだろうな、あいつ」


「ま、明日聞いてみりゃいいさ。じゃあ俺もそろそろ帰るわ」


 そうゆうと久は身に付けていた腕時計を一瞬確認するといってしまった。

 窓ガラスに映った空を見ると夏に近づいているとはいえ辺りは暗くなってきていた。女木はともかく久は俺らと一緒の電車に乗って帰ればよかったんじゃないか?そんな事を思いながら残された少女と俺も帰宅することにした。

 


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