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第16話 乙女心


 映画を見終わると昼過ぎになっており一階のレストラン街で店を選んで昼食を取ることになった。

 俺達は4人がけのテーブルに座るとメニューを開き、各々注文する。


「な!俺の言った通り面白かっただろ!!」


「ま、見る価値はあったな」


 悔しいが滅茶苦茶面白かった。しかし久の得意げな顔が気に入らなかったので少し濁し、水をすすると左手が隣のやつの右腕に触れる。


「あっわりぃ…俺左利きだったんだった…席変わろう」


俺が謝罪混じりに提案すると、横に座っていた女木がこちらをすごい形相で睨む。


「…バカ」


「お前!?また熱でもあるんじゃ!?」


 慌てて女木の額に手を当てようとすると驚いた彼女は咄嗟に俺の溝に腹パンを叩き込み悶えることになる。


「相変わらずにやってんなお前らって」


「うんうん、青春って感じやね」


 

 手が当たっただけでこの仕打ちはひどすぎないか?流石に嫌われすぎだろ…


 そして席を交代した死にかけの俺と不機嫌そうな女木をよそに料理が到着する。


久はカツ丼と味噌汁、少女「八重」はざるそばと天ぷらのセット、俺はハンバーググリルに、女木は明太子パスタだった。

 久はカツをモリモリかじりながら今後の予定について提案してきた。


「この後どうするか?」


「俺は特に…」


「私は夏用の服を買いに…でもすぐに済むから後でいいわ」


「私は…そうやな…ゲームセンターにいってみたい!」


 意外だった。


「ゲーセンになんか行きたいのか?」


「テレビではちょくちょく見とったんやけどな、実際この歳になって1人で行く気にもなれんかったけん、諦めとったんやけど今はこうして自由が利くしみんなもおるから孫達と一緒に来た体でちょっといってみたいな」


 珍しく少女が少し恥ずかしそうにもじもじしながらそう云っていた。


「オッケー!じゃあ飯食ったら次はゲーセン行くか!!俺も久々だしな!」


 久は先程の少女の発言に違和感がなかったのか、もう慣れたのか気にしていない様子だった。


「やったー!」


 いつの間にか食べ終えていた少女は綺麗に箸を箸置きに添えると嬉しそうに両手を小さく挙げた。


 そして全員が食べ終わると早速ゲームセンターコーナーに入る。フロアの一角とはいえ、大型メダルゲームや、カードゲーム、音ゲーや格ゲー、無数のUFOキャッチャーが設置してありかなりの規模だった。

 4人は最初こそ一緒に行動していたが、ものの数分で俺一人になってしまう。最初に行動を起こしたのは発案者の少女で、おどおどしい車の形を模したゲームに興味を持ったらしい。


「ほう!なぁ!これはどうやって遊ぶん?」


 中の黒いカーテンをめくって頭を入れ覗いた後、振り返ってこちらをみてくる。


「八重さん!それはシューティングゲームっすよ。中の銃で画面のゾンビを撃ち殺すやつっす!一緒に殺るっすか!!」


「殺るぅ!!殺るぅ!!」


 そうゆうと2人は黒いカーテンの中に入っていってしまった。

 女木はというと目を離した隙に既にいなかったので仕方なくゲーセンを一周するついでに探してみることにした。そして数分後、UFOキャッチャーが迷路のように入り組んだ場所で彼女を発見し側に寄ってみる。

 女木はUFOキャッチャーのガラスの中で乱雑に積重なっている二頭身のつぶらな瞳をして泣いている猫みたいな大きめのぬいぐるみをじっと見つめていた。


「好きなのか?それ」


 近くまで接近していることに気付かなかったのか俺が声をかけると慌てて飛び退く。


「わッ!?涼介!!いやこれは違くて…その…暇だから見てただけで…こんな子供っぽいもん私が好きなわけないじゃない!」


 必死に弁明する彼女に俺は溜息をつき、ポケットから小銭を取り出すとその筐体に入れる。


「え?涼介それ興味あるの?」


「いやぁ全く」


 女木は一瞬不思議そうな顔で気だるそうな涼介を見つめていたが、すぐにガラスの向こうで動き出したアームに注目する。

 アームは上に置いてある人形ではなく、隙間と隙間の間にめり込むように爪が入っていく。


「どこ狙ってんのよ!?」


 涼介の謎の行動に思わず女木が口を挟む。


「いいから黙って見とけ」


 そうゆうとアームは動きを止め上昇する。するとモコモコと上に積み重なっていたぬいぐるみが転がり落ち、下からチェーンに爪が引っかかったぬいぐるみが上空で宙吊りになり、そのまま落下地点で広がった爪と共にぬいぐるみが落下し筐体から祝福を告げる音が鳴り響く。


「う、嘘!?一発?私、結構やったけど全然取れなかったのに」


 少し悔しそうな女木を尻目に俺は出口から、そのぬいぐるみを取り出す。


「ほら」


 俺は女木にそのぬいぐるみぐいっとおしつける。


「え?いいよ!?取ったのは涼介だし、別に私は興味があった訳じゃ…」


 そういい、頑なに拒否する女木に俺はめんどくさくなってそれっぽい理由をつける。


「その…さっき…お前を怒らせちまったから…その謝礼だ…いいから受け取れ」


 俺は無理やり女木にぬいぐるみを持たせる。


「え!?その…ホントにもらっちゃってもいいの?」


「だから、いいっていってんだろ。ほら早くみんなのとこ行くぞ」


「涼介…ありがとう」


 女木はとても嬉しそうに渡されたぬいぐるみを両手で抱えそう云うと涼介は少し赤くなりながら頭をポリポリと掻き、その場を離れる。


 その頃、八重と久はまだ先程のシューティングゲームで遊んでいた。

 

「いやぁ、まさか椅子が震えたりガスが出てくるなんて本当に最近のゲームはすごいんやなぁ。思わず全部やってしもた」


「八重さん、全然ビビらないんすね!女子ってこういうの普通苦手なんですけどね」


「いやぁ怖いより面白いんが勝つ!!」


 そうゆうと、八重は久にピースサインを送りはにかんでいた。


「おっ!小土君!!次はあれやろうで!」


「はい!やりましょう!」


 そうして八重と久はうきうきで次のゲームに移動していった。



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