第11話 2人の関係
辺りはすっかりと闇夜に染まり、電柱の光が煌々と2人の行く手を照らしている。周りは住宅地帯で各々の民家に明かりが灯り、涼介はスマホで今日のニュースの記事を読みふけっていた。
「ねぇ」
暫く黙って歩いていた二人だったがふいに女木が語りかけてくる。
「んー」
「あの、今更なんだけど急に押し入ったりして…そのごめんね?」
俺は横目で女木を確認すると、少し下を向いて手先をもじもじとさせている。
急にしおらしくなった彼女を見て少し違和感を覚えたが下手な事をいうと何をされるかわかったもんじゃないのでそれらしい返事をすることにした。
「いや、あいつも喜んでたっぽいし一応俺が嘘ついてないことはわかってくれた見たいだからいい」
「…そう」
それを皮切りにまた暫く無言が続いたが、今度は逆に俺が話しを切り出す。
「そういえば…最近…全然遭ってないけどーーー」
すると見計らったかのように手前の踏切の警笛が鳴り響き、赤色の点滅が揺れ動くとその光が周りに散りばめられる。
そして数秒後遮断器がおり6両編成程の電車が通過し音が止む。
「ーーー大丈夫、うまくやってるよ…だから心配なんかしなくていいから」
「そうか」
女木は淡々と述べ俺は話しの幕を下ろすと、再び2人は歩き出す。
俺はズボンにスマホをしまうと頭の後ろで腕を組み空を見上げる。
「あいつ、一体何者なんだろうな…」
「…涼介が分かんなきゃ誰がわかんのよ」
本来女木はあいつの正体を確かめるためにわざわざ俺の家まできたというのに結局何もわからないままのはずだ。しかしついさっき知り合って数回言葉を交わしただけで女木は納得したように彼女という存在を受け入れ始めている。
「でも…あの子すごく優しい目をしてたよね…本当に涼介のことを大切に想ってるんだなって…それが伝わる感じ…そんな人を前にして問い詰められないでしょ」
突然女木がまるで俺が聞きたかったことはこれでしょ?と言わんばかりの回答をしてきたので少し気恥ずかしくなる。
「なんだよそれ?意味わかんねぇ…」
涼介はそっぽを向きながらそう答えると、それを見ていた女木は彼に気付かれないくらいにクスッと微笑む。
「…ほんとう、変わってないなぁ」
「何だって?」
「なんでもない」
そうゆうと彼女は少し駆け出し前に出る。
「ほら、ちんたらしてないで早く行くよ。早く帰ってあげないとあの子が心配するよ!」
「…お、おう?」
数分後、俺は急かされるように歩きあっという間に目的地にたどり着くとマンションのエントランスの外で立ち止まる。
場所は聞いていたが実際に来るのはこれが初めてだった。
「今日は本当にごめんね。ご飯おいしかったってあの子に伝えといてね。じゃあ明日また学校で」
「ああ、またな。次は勝手に俺の部屋に入って訳わからんこと呟くなよ」
「うっさい」
そうゆうと女木は俺に背を向け歩き出す。
「…………………」
「……なぁ女木」
すると俺は自分でも分からないが彼女を呼び止めてしまい、その声に反応して彼女が振り返る。
「…えと…その…なんかあったらいえよ、相談くらいには乗ってやるから」
咄嗟に出てきたセリフはそれだった。彼女はそんな俺の言葉に苦笑いを浮かべ言い放つ。
「なにそれ」
私は、涼介と別れると鍵を回し中に入りエレベーターに乗り込む。
13階のボタンを押すと扉が閉まり上昇を始め、密閉空間の中であの子の事を思い出す。
「誰かのことを想う…か」
そう呟くと私はあることに気付く。それってあの子が涼介を想って作ってるってことだよね!?え、何を思ってるの!?まさか…あの子も…いやそれはない。うんうんないよ!あるわけない
そう言い聞かせてもあの子の童顔で整った顔立ちに純粋な笑顔や人形のように綺麗な黒髪や涼介を想って作っていた絶品料理がフラッシュバックし、私の脳を圧迫する。
同じくらいの歳の男女が1つ屋根の下で一緒に同居している事実に私の脳は更に邪な幻覚を見せる。
〜妄想〜
「ほれ、もうすぐできるけん、もうちょっとまっときまいな」
いつものように帰りが遅い両親に代わって少女は割烹着を着こなすと慣れた手つきで彼のために愛情のこもった料理をし、涼介はそれを尊敬の眼差しとは別の感情で後ろ姿の少女を一身に見つめる。
すると彼は後ろから優しく少女を包み込むように抱きしめる。
「おわっ!?料理中に抱きつくなッッ!危ないやろ!?」
少女は照れながら制止を促すが彼の耳にその言葉は聴こえない。
「なぁ、今だけじゃなくてこれからも一生俺のために飯を作ってくれないか?」
その言葉に少女は少し黙り込み頬を染め上げると質問する。
「え…それって…つまり」
2人は互いの心臓の音を確かめ合うようにくっついて離れず体温が上昇していくのを感じていた。
「お前がほしい」
すると二人は向かい合い確かめるように口づけをーー
〜妄想終了〜
だぁぁぁぁぁぁ!!!ないないない!!ありえない!!あの二人に限ってそんなこと。私はブンブンと頭を振り正気に戻る。
ない…よね?
すると思考が完結する前にエレベーターの扉が開いたのを確認すると悶々とした気持ちで歩き出す。
そして自分の部屋にたどり着くと、鍵を回し扉を開ける。
ガチャ
「…ただいま」
誰からの返事もないその挨拶は決して無人という訳ではないことを靴置き場に置かれた2足の靴が証明している。
私は静かに暗がりの玄関で靴を丁寧に脱ぐと、廊下を歩くが何かに躓きよろけその場に横転する。
「…いたた」
私は暗がりで原因を探るように辺りを見回すとカラカラと音を立てた酒瓶がこちらに転がり身体に触れた。




