第六話 どこに行っても見てるからね
全ての時間は志穂に使い少し疲労の葉月は放課後になってしまった事に更に絶望する。
昨日約束された放課後のいわゆるデート的なものだ。
「ほら時間無駄になるから早く動くよ」
「わかりましたよ...。動きますよ...」
帰る準備が終わると、二人は高校を後にする。
しばらく歩いた後、二人は少し大きめなショッピングモールに辿り着く。
「何すんの?」
「服買いたかったの!」
「んなもん一人で行け」
「アンタの意見も欲しかった」
あまり行くことの無いショッピングモールを前に俺は困った顔で問い掛ける。
志穂はルンルンな顔で服屋に向かって一直線に向かいながらそう言った。
俺は呆れた顔で着いていくしか無かった。
「ねぇアンタが女の子がこれ着てたら可愛いなって思うのどれ?」
エスカレーターで2階に上がった直後目の前に圧倒的に女性向けのような可愛らしい服などが並んでいる所に辿り着いては俺は選択を強いられた。
「俺がか!?なんで俺基準なんだよ」
「だってアンタスケベそうだし」
「バカにしてんのか?」
困った様子で俺は周囲を見渡し、スケベと言われた事に怒った様子で反論する。
しかし肉体は正直で胸元が少し空いている服やショートパンツや露出の多くなるような服達を捉えるように目が全身が動いてしまっていた。
「やっぱスケベだ」
「は!?ちげーよ!」
ニヤニヤと笑いながら俺を見つめる志穂に対して少し頬を赤らめながらも動揺した声で目線を逸らす。
その隙を見たのか俺が見つめていた衣類をこっそりと手に取る。
「私が気になるのあったから試着するから着いてきて」
「はい着いていきますよ。判断しろって言うんだもんね」
「わかってんじゃん」
俺はもう諦めていた。とりあえず今日はもう時間を使うしかないと。満足しているような顔で志穂は試着室に向かっていた。
完全に閉ざされている訳ではなく、足元から制服のスカートがスルッと落ちてくるのが俺の目に入ってしまう。すぐに目を逸らし、気を紛らわせようと深呼吸をする。
ハンガーの音や着替える音が鮮明に聞こえてくる。その音はやがて静まり、ドアがガチャっと開かれる。
「どう?可愛い?」
「ん!?な、何してんだ!?」
その姿は普段あまり目に入ることの無い肌荒れ等を知らない白い綺麗な足が太ももが視界に入ってしまう黒いショートパンツといつもの主張されない志穂の推定Eカップのお胸がぐっと強調され胸元にハートの形をした穴が有り、魅惑の谷間がそこに出現している。灰色の長袖のハートホールトップスだ。
一言で言うと、モデルになってしまいそうなくらい可愛く、そして際どかった。
そんな俺が見ていた服全部着ていることにはびっくりした顔で目を一瞬で逸らす。
「ねぇちゃんと見ろ!私だって恥ずかしいの!」
「めっちゃ可愛いから!早く着替えろ!」
志穂も顔を赤らめながら目を逸らす葉月に言う。それに対して同じく顔は合わせないまま照れながら可愛いってのがよく伝わる仕草で答えると満足したのかすぐにドアを閉じ着替え直した。
「じゃあ服買うから先外出て待ってて」
「あれ買うの!?」
「違う!お目当てなものは既にあるから!あれは遊び!」
話の流れ的に勘違いした俺は背中を叩かれながら店の外に追い出されてしまった。
俺はあまりにも可愛い姿を見てしまったので脳が焼き付いたのかまだあの姿を思い出していた。
そんな中、目の前からエスカレーターを使って2階に上がって来た彩花が現れ葉月を視界に捉えてはすぐ俺に近寄ってきた。
「葉月先輩!偶然ですね!」
「彩花じゃないか奇遇だな!」
可愛らしい顔を見せる彩花は元気そうに葉月に喋りかける。しかし後ろで隠すようにスマホを持っている彩花には偶然なんてものでは無かった。
GPSで居場所は完全に把握されている為、時間を少しズラしたまたま来たかのように見せ掛ける巧妙な手口だ。
葉月はそんな事も知らないまま驚いた様子で答えた。
「なんでメッセージ返してくれないんですか!」
「うそ!気づかなかったごめん!」
俺は気づいていたが志穂の事を話すのは違うだろうと思い適当に嘘をついて誤魔化す。
だが彩花は真実を知っている為、それに騙される演技で仕方ないかぁと言わんばかりの顔を見せる。
「ところでここで何してたんですか?」
「それは...」
「それはね私とデートしてたの!」
彩花の問いに対して少し息を詰まらせた俺は店から既に出ていた志穂が現れ、事実では無いことを言われてしまった。
デートではないと抵抗しようとしたが、彩花の見えない俺の背中をぐっと志穂につねられ黙って頷くしかなった。
「こんにちは!彩花ちゃん。私は志穂」
「こんにちは...志穂先輩。えぇっと、デートって言いましたか?」
「うん!まだ行くとこあるんだ〜」
ニッコニコな志穂は彩花を見つめる。
俺は感じ取っていた。志穂のその見つめ方は敵を見る目。怖すぎる。しかし、見ているしかない。
「そうでしたか...邪魔してすみません。じゃあ先輩...また」
「あ、ああ。またな」
彩花の顔はどこか元気がないようだった。しょんぼりしてそうな顔で去っていく彩花を心配そうに見つめる俺は罪悪感に苛まれた。
「デートって何変なこと言ってくれてんだ」
姿が見えなくなったのを確認すると少し怒ってる様子で俺は志穂を問い詰めようとする。
「なに?あの子のこと好きなの?」
「そういう感情はないけど、嘘を言うのは違うだろ」
「別に良いじゃん。アンタだって私の事隠そうと嘘ついたよね」
口論とかに強い訳ではない俺は反論するが、次第に志穂のオーラと言葉に押し潰され、言い返せなくなってしまい黙り込む。
「ごめんね。やり過ぎちゃったよね気を付ける」
その姿を見た志穂は流石に罪悪感に襲われたのか反省した顔で俺に謝罪してきた。
「大丈夫。とりあえずお前に付き合うから、さっさと行くぞ」
雰囲気を壊したくなかった俺ははすぐに切り替え、優しく志穂を背中を叩く。
その行動に志穂を次第に元気を取り戻し、リードするかのように歩き始めた。
───────────────────────
その頃彩花はショッピングモールを後にし、夕日に照らされながら帰宅していた。
「絶対許さない。志穂って女...葉月先輩を洗脳してるに違いない」
彩花から出てくる言葉は怒りのみ。凄く恨むような表情で歩いていた。
葉月を信じるあまり洗脳だのと勝手に決めつけ話を進めていく。
「葉月先輩はあんな女と付き合う訳ない。ウチだけのもの。ウチしか葉月見ちゃダメだもん」
あまりにも激しい感情が彩花を襲う。葉月の事をいっぱい考え、志穂を恨みに恨みまくる。
そんな状態が続くまま、ゆっくりと自宅へ帰宅していくのだった。
───────────────────────
色々とショッピングモールでうろちょろした二人は気がつけば夜の七時になっていた。
「もう夜だね。そうだ!ご飯食べてから帰らない?」
「別にいいけど何食いたいんだ?」
色々と買い物したはずの志穂は手ぶらでお腹を擦りながら言う。一方、何故か荷物持ちにまでされた俺は提案をあっさり受け入れ、食いたいものを尋ねる。
「やっぱパスタ!」
志穂がそういうと狙っていたかのようにパスタ屋に辿り着いた。
二人は迷わず店の中に入る。
「いらっしゃいませ〜二名様でしょうか?」
「はい!」
「ご案内しますね」
店員がいち早く駆け付け、席に案内してくれる。二人は向かい合わせになるようにイスに座る。
「何食べよっかなぁ〜」
「俺はおすすめのやつでいいや」
「え〜?じゃあ私はこれにしよっ!すみませーん!」
座ってから食べ物を決めるスピードはあまりにも早かった。すぐに頼むものが決まり、志穂が店員を呼ぶ。
「はーい」
「これと!これお願いします!」
「かしこまりました」
そう言い終えると、店員はその場を去る。
数分経つと、二人の頼んだ料理が提供された。
特に話すことも無く、適当に食べお店を後にし、ショッピングモールから出るのであった。
「いや〜楽しかったなぁ。今何時?」
「20時だ。外暗いな」
満足そうな顔をしている志穂は俺に時間を確認させる。
いつも静かな道が更に静まり返っている。二人は適当な雑談をしながら歩いていた。
「それでさ〜あの先生ほんとにやばかったよね?」
「あれは爆笑もんだわな!」
今日起こったことを振り返るような軽い話で二人は笑い合い、いつの間にかあの分かれ道に辿り着く。
「じゃあ私こっちだから荷物ありがとね」
そう言って荷物を貰おうと手を差し伸べると渡さないと言わんばかりにその荷物を守りながら葉月は言った。
「お前みたいな可愛い奴が夜道歩くのは危ないから家の前まで送る。流石に心配だからな」
その発言に思考が止まる志穂。それに俺は首を傾げる。
だって当たり前だろ?こんな美少女が夜道を歩くなんて物騒すぎる。
「そ、そう?ありがと!」
「それに何気にお前の家の正確な位置までは分からないからな」
何故か照れながら右の道を歩いて行く志穂。何故だろう?
そんなことより、俺は志穂の事まだよく分かってない。せっかくの機会なので質問してみることにした。
「そういえばお前の両親ってどんな人なんだ?」
「2人とも良い人だよ。今は大阪にいるんだけど、私は残るって言ったら安全な部屋用意してくれたの」
俺は驚いた様子を見せる。まさか一人暮らししていたとは。
「え、じゃあ生活費とかって?」
「その辺も親が支払ってくれてる。ほんとに感謝してる」
その優しさのあまり俺も感動してしまうほどだった。話に夢中になっていたのか気づいたらマンションに辿り着いた。もう時間は20時30分。志穂はマンションの入口ドアの前で足を止める。
「私ここだからありがとね色々と」
「はぇぇぇ、いい所住んでんなぁ」
俺はマンションを見ながら荷物を渡す。相当良い物件だ。一目でわかる。
というか、なぜ残ったのだろう?疑問に思った俺は背を向けて去ろうとする志穂を呼び止める。
「そういえば、なんで残る選択をしたんだ?」
その質問に志穂は足を止め黙り込む。
行けないことを聞いてしまったかと思った俺は慌てた姿でどうしようとあたふたする。
その瞬間だった。志穂は急こちらに向かって振り返り走って、口を俺の右耳に近付けてきたのだ。
あまりの距離に志穂の髪のいい匂いが俺の鼻を襲い、返答が来る。
「葉月がいたからだよ」
囁くように耳元でそう言われ、すぐさま背を向けそのままドアを開きにんまりとした笑顔を見せ行ってしまった。
この時俺は何が起こったのか理解出来ず数十秒時が止められたかのように停止する。
今思うと、中々変な事を言っていたんだなとは思う。
既に志穂はマンション内に入ってしまって完全に一人だ。
「は?」
思考が動き始めた途端出てきた言葉は困惑の言葉のみ。更に数分間その場から動けず九時頃になるまで動けなかったのだった。




