第三話 茶髪の女の子
無事にクラス替えが終了した俺は運が悪いのか良いか志穂と同じクラスになった挙句、隣の席という事にモヤモヤしていた。
実際の所、ほとんどの男は志穂に釘付けだった。
「なぁお前いつもこんな感じなのか?」
「まぁそうね...別に私はもう決めてるからどうでもいいんだけどね」
圧倒的な注目度に俺はため息混じりの声で志穂に問う。志穂の回答に俺は思わず目を見開き、マジかと言わんばかりの顔で志穂を見つめながら口を開く。
「え!誰だ!」
「言わないよ!いきなり聞いてくるとかやめてよ!」
このまま問い詰めてやると言わんばかりの雰囲気で俺は志穂に顔を近づける。志穂は易々と口を割るはずもなく近付けて来た顔を手で押し退ける。俺は軽く舌打ちをしては、黒板の方へ目線を向けた。
「(ビビった〜...顔近過ぎるよ...アイツ)」
志穂は俺の視界に入らないように顔を背けては、顔を赤らめながら心の中で焦ってるかのように思っていた。
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放課後───。
クラス替えの後は軽い自己紹介や提出物の確認等の軽い作業で終わった。
15時30分。教室飾られている時計はその時間を指していた。窓の外を見ると、一年生と思われる人達が下校を開始していた。俺もとっとと帰りたかったので、教室を出ようと席を立つ。
「うし、帰ってUMするかぁ」
「ちょっと!私を忘れないで!」
「はぁ?お前俺と同じ道から帰ったら遠回りだろ...」
「関係ない!とりあえず帰るよ!」
志穂は強制ですと言わんばかりに俺の右腕をガシッと掴み、引き連れるように歩き始めた。
俺は溜息をつきながら、仕方なく一緒に帰る事に承諾する。二人は一緒に校内を出て、外に出る。そのまま今朝通った道を戻るように二人は歩き始めていた。
そしてもう1人、その姿を見ていた人物が居た。あの茶髪の女の子だ。二人は気付きもせず、北之海高校を去っていった。
今朝よりは暖かい風と太陽が二人を照らす。
「朝より暖かくなったな」
「まぁ天気も良いしね~」
二人は足並みを揃え、ゆっくりと帰宅しながら雑談をしていた。
「んで?教えろよお前の好きな人」
「だから言わないって言ったでしょ?叩くよ?」
時間を置けば口を開いてくれると思ったのか、俺はニヤニヤとした顔を見せながらまた質問する。しかし即答で断られてしまい諦めるしか無かった。
「んでも、お前がちゃんと恋してんなら良かったわ」
「何よそれ?煽ってんの?」
「ちげぇよ。俺ばっかりに絡んで来るから青春出来てんのか心配だったんだよ」
俺は安堵の笑みを浮かべながら、友人の恋を祝う。しかしそれを煽りと思ってしまった志穂は"やんのか?"と言わんばかりの顔で威嚇するが、また冷静な回答が帰ってきた事に言葉を失い威嚇していた顔も次第に緩んで行き、足を止める。
「まぁお前は可愛いしな!片思いかとか知らねぇけど頑張れよ!
それにお前が恋人作ったら俺とこうやって歩く事も無くなるだろうしな。速攻帰ってゲームできるの最高っすわぁ~」
俺は数歩歩いた所で足を止め、振り返って自慢するように志穂を見た。しかしその顔はどこかモヤッとしていた。
確かにゲーム大好きな俺からしたらプラスの面もあるが、当たり前だった事が無くなると思うと何故か寂しさを感じてしまう俺が居た。
その姿を見た志穂はクスッと笑い駆け足で俺に近付いて来ると思いきや、葉月を追い越し数m離れた所で後ろで手を組みながら振り返る。
「私ね。好きな人には色んな方法でアタックするタイプなの!
じゃあ私こっちだから!じゃあね!また明日!」
「あぇ?あぁ...また明日」
その姿は太陽に照らされ、凄く素敵な顔で俺を見つめていた。
気が付けば俺はもう家付近まで近付いており、右か左か真っ直ぐかの分かれ道があった。志穂はそのまま走り去るように右の道へと行ってしまった。
俺は情報が多かったのか処理出来ず、困惑しながら手を振って見送った。
数十秒の沈黙の後、真っ直ぐ進もうと歩き始めたその時だった。
「あの!!」
また何処か聞き覚えのある声が後ろから聞こえてくる。俺は咄嗟にその声の方を見るとそこには茶髪の女の子がそこにいた。
彼女はゆっくりと俺に近付いてくる。このままハグする気ですか?そう思わせるような距離まで近付くと、凄く元気な声で目をキラキラさせながら話し始めた。
「葉月先輩...!ですよね!覚えてますか?」
「なんで俺の名前知ってんだ...?覚えてますかって...。何処か出会ったことあるっけ?」
彼女はまるで何処かで会ったことあるかのような感じで来たが、俺には理解出来なかった。しかし名前を知っているということは確かに何処かで会ったのだろう。
"ん〜?"と言わんばかりの顔で悩んでいると彼女はすぐに口を開いた。
「霜月彩花!! 中学の時沢山お話したり、一緒に帰った事もあった!」
「彩花...?あぁ!! 学年違うのに俺らの学年によく遊びに来てた!」
彼女の名前は霜月彩花。俺が中学三年の頃、学年が違う子がよく遊びに来てると言う話を聞き、興味を持った俺が唯一手に入れた後輩だ。
彩花は思い出してくれたことを嬉しそうに首を縦に振り子供のような目で見つめていた。
「マジで気付かなかった!久しぶりだな!」
「久しぶりです!先輩~!」
「でもほんとに可愛くなったな~。昔はあんなに浮いてたのに入学式凄いザワついてたぞ?」
「先輩にそう言われて嬉しいです!」
まさかあのぶつかった子が後輩だったとは。なんという偶然だろうか。ここまで人って変わるのかなんて感心したような顔で彩花を見つめると、照れながら嬉しそうな顔で喜ぶ。その表情に俺もニコッと笑う。
「先輩...単刀直入にお聞きするんですが、あの可愛い女の子って先輩の彼女ですか!?」
彩花は突然と俺に質問し、頑張って俺の顔に近付くように背伸びをする。その質問に対し、俺は笑いながらこう答えた。
「彼女?w ないない!ただの仲の良い同級生だよ」
「ほんとですか!なら良かったです!あ、先輩。アカウント変えたんでLIME交換しませんか?」
「当たり前だろ?交換しようぜ」
彩花はホッと息を着くと、踵を地面に着け、スマホを取り出す。連絡先を交換したがってるようだ。俺は相手は後輩の為、躊躇う必要も無くスマホを取り出し連絡先を交換した。
「高校でまた会えるなんて嬉しいです!ウチこっちなんでまた明日です!先輩!」
「また明日な!高校生活頑張れよ」
彩花は満足したかのようにスマホをしまい、左の道へとルンルンで去って行く。俺はそれを見送ってはようやく、真っ直ぐ歩き始めた。
「いやーまさか後輩を持てるなんて...! てか、志穂は右で?彩花は左で?俺は真っ直ぐ...偶然が重なりすぎてるな。
まぁ神が俺に味方してくれた的な!?てことはレート戻せる的な!?そうとなれば爆速で帰ってUMやるぞ!」
俺はニッコニコで偶然が神の気まぐれとかなんて思いながらも良いことが沢山重なった一日を過ごす為に、自宅に帰って行くのだった。




