(2)
「馬鹿な?!一人だけのはずがない!」
出た先で聞こえた第一声がコレ。改めて周囲を見ると、いそいそと何かを片付けている人たちがいた。彼らが運んでいるのは……ご遺体。勇者召喚に賛同せず、明確に反対を唱えていた人たちを召喚のエネルギー源にした、といったところだろうか。まったく、クズしかいない国だね。
「はあ……さっさと片付けて帰ろう」
スタスタとミルコ王子の元へ向かうと、意外にもうれしそうな感じ……顔をまじまじと見て、改めて「うへえ」って感じになったので、手加減無用に切り替える。暑苦しいからね。
「初めまして王子殿下」
「お……おう?」
「そして、その肥え太った慢心を二度と維持できないよう、魂に刻まれるほどの絶望を叩き込んであげましょう。ええ、礼はいりませんとも」
そう言うなり思い切り蹴り上げた。両足の間を。
「ぷぎゃっ?!」
ぶちっと何かが潰れる音のあとにごしゃっ、と体の半分が天井にめり込む音。上半身に防護魔法をかけておいたからこんなことになったわけで、そうでなかったら天井のシミになっていたところでしたと自分で自分を褒める。そして、いきなりのでき事に反応できなかった近衛騎士が慌てて動き出した真上に、ため込んでいたオークの死体を山盛りに降らせる。
「ぎゃあ」
「ぐあっ!」
押しつぶされる騎士たちにぶちまけられたオークの死体と立ちこめた異臭で、集まっていた人たちはパニックに陥っていた。
そんな中、私はモニカを探して……いた、あそこだ。短距離転移。
「モニカ」
「?!」
当然あちらからは初対面だから、警戒されて抜剣されたけど、私としてはさっさと用事を済ませておきたいので構わずに近づく。
「この国がこれからやろうとしていたことの結果がここにあるの。あなたにしか託せないんだけど、私を信じて受け取ってもらえる?」
帰還の宝珠で戻った先は私が召喚されたときに作った限定空間内。扉はあっちの時間で一時間開きっぱなしになるけど、その間、向こう側はモニカが厳重に監視してくれることとなった。
念のためにこちら側に入れないよう結界を張って、もしもこちらに来ようとしても出られないように塞いでおけばいい。
さらにそのまま元の大きさに戻しておけば、仮に結界を突破したとしても出る先は厚さ数ミリの世界。私以上の魔力の持ち主なら押し広げることもできるけど、そんな人はあっちには魔王以外に一人もいない。そして、魔王は……別に人族を滅ぼそうとかしていないから扉が消えるまでの間にサルヴァート王国に来ることもないだろう。
念には念を入れ、魔法による監視を残して学校を後にする。時刻は午後五時前。今から帰宅すれば両親はもちろん、学校の誰にも何も知られることなく……私が戻りたかった「元の世界」に戻れる。
今日の二時間目以降の授業は友達にノートを見せてもらえば問題ないしね。




