(1)
神様が「教えてやろう」と、こちらを見た。
「コイツは、魔王と召喚されたお主らに三つも呪いをかけておった」
「三つ?」
「一つ目は魔王だな。正確には魔族と呼ばれる種族の王でしかないが、其奴に「世界を支配し、人族を滅ぼさねば、すべての魔族が苦しみ抜いて死ぬ」という呪いだ」
「うわ、えげつな……」
「二つ目はお主らへの「魔王を倒す以外のことを考えるな」という呪いだ。どれほど心が摩耗しようとも、戦うことを己の義務と考えさせる。おぞましい代物よ」
確かにそう言われてみればそうかも。体の改造が進んでいったらその辺が薄れたように感じたのは呪いのかかっていた部位が少なくなっていったから?
「三つ目は魔王を打倒したときに発動させる「元の世界を忘れる」という呪いだ。そして、魔王が倒された瞬間、魔王にかけられていた呪いが解け、お主にかかっていた二つ目の呪いが解け、三つ目の呪いが発動する。だが、その瞬間、呪い自体は無防備になる。そこをこの石が封じたのだ」
「ウィル爺、すごい人だな」
「ああ。人の身でこれを作り上げるとは大したものだ。そしてこの呪いを送り返した結果、こやつの中で呪いの力が暴れ回り、女神としての力が不安定になると、こういうことが簡単にできる」
そう言いながら手をかざすと、丸い透き通った玉が二つ出てきた。
「え?ちょっと?!」
「これだけ力を抜いておけば抵抗もできまい」
「待ってよ!それがなくなったら!」
「お前、自分が何をしたか全くわかっとらんだろ?」
「……しょうがないじゃない!管理するだけなんて退屈「そうか、これからは退屈しなくてすむぞ。必死に生きろ。輪廻を一億回繰り返せば虫ケラ以外の転生もできるだろう」
「ちょっと待って」
「なんだ?」
「もう一発殴らせて」
「えええええっ!」
神様が「ここ、仮にも神域だから頑丈なんだけどな」と地面にめり込んだ女神を引きずり上げながらぼやいたのはスルーしよう。
「まあ、あとのことは任せておけ」
「うん」
「それからこれだ。持っていけ」
そう言いながら神様が玉をこちらに渡してきた。
「神様、これ、何です?」
「コイツの力を吸い上げて合成した宝珠だ。一つは帰還の宝珠。お主が帰るときに使うといい」
「ありがたく」
「もう一つは記憶を融合できる宝珠だな」
「記憶の融合?」
「モニカと言ったか、あの騎士は」
「え?ええ」
「あの者とお主の間の記憶……いや、思い出と言ってもいいだろう。それを凝縮したものだ」
「え……」
「そこの魔法陣に乗れば向こうに行ける。片をつけて、モニカにこれを渡せば、お主との記憶がよみがえる」
「……」
「とは言え、あのモニカとこれから行く先にいるモニカは別の存在だ。使うかどうかは任せる」
「うん……」
「行くなら行け。ただ、あまり時間をかけると……」
「地球では百倍の時間が流れちゃうのよね」
「そうだ」
この記憶融合の宝珠をモニカに渡せば、モニカが私たちと過ごした一年と少しの記憶が……悩ましいな。これから行く先にいるモニカは私と苦楽をともにしたモニカではない。それどころか知り合ってすらいない、赤の他人の関係。そんな彼女に重荷を背負わせていいのか……判断は本人に任せる、かな。
そんなことを考えながら召喚の魔法陣に乗った。




