10時
「そろそろかな」
床に張った結界の下を注視……来た!
スーッと大きな円が描かれ、複雑な模様が現れた。今ならその内容も読める。この魔法陣の上にいる者を召喚するという内容で、込められた魔力は膨大。とても一人二人の術士が行っているとは言えない規模で、生け贄にされた人が多数いるはず。
「よし、行くか!」
床と結界のわずかな隙間、その隙間を私は空間魔法を駆使して広げて入り、召喚に応じた。
ふわりと宙に浮く感覚の後、なんだかよくわからない白く光る空間に出た。
「あれ?おかしいな……一人だけ?」
「……」
困惑気味の女神が――もう「様」なんてつけない――いた。
なんだか神秘的な雰囲気も醸し出していて、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる美しい顔も、その裏で何を企んでいたかを知った今となってはただの腹黒、悪魔の方が善人に見える。
「ええと……ごめんなさいね、急にこんなところに連れてきてしまって。戸惑っているわよね?」
「いいえ」
「え?」
「とりあえず……」
ツカツカと女神の方へ向かう。
「え?え?何?」
「まずは……一発殴らせろ!」
ドガッ
重力制御を解除して全力で踏み込む。完全に不意打ちの形で私の右ストレートが女神の顔面を捕らえると、彼女はそのまま吹っ飛んで、何回か回転しながら跳ねてから止まった。
「ふう……あんまりすっきりしないけど、このくらいにしておくわ。で、神様?」
「お主、なかなかエグいことするなあ……」
五円玉を取り出して軽く指ではじくと、そのまま神様の姿になった。ちょっと愚痴りながら。そう、日本の神様と言えばご縁があるという五円玉。あのコンビニで拾った、私たちを召喚した年という、因縁深いこの五円玉と神様を繋いでおき、女神のところに来たら神様を呼ぶことにしておいて、今ココに。
「い……一体……何……え?何……う、嘘……なんで……地球の……」
「フム、悪いことをしていた自覚はあるのか」
「え……と……これは……その……」
這いつくばって逃げようとした先に神様がスイッと移動した。うん、私の空間認識をもってしても、どうやって移動したかわからない、見事な転移だわ。さすが神様。
「さて、この先どうなるか、説明は要るか?」
「えっとぉ……」
「まあ、問答無用だな」
左半分が陥没しかかった顔でとぼけようとした女神の首根っこを神様がむんずとつかんで持ち上げ、懐からどす黒い空気を纏った石を取り出す。それを女神の額に押しつけると、黒いものが女神に吸い込まれていった。
「え?あっ……うがっ!」
「どうだ?自分でかけた呪いが自分に返ってくるのは?まあ、自業自得よな。何の罪もないこの子らにかけた呪いを今度は自らで味わうがよい。何、礼はいらんぞ。儂は寛大だからな」
「う……うげえええぉぉ……」




