20時(2)
「ええと……?」
神様曰く、私たちが謎の空間で出会った女神は、あの世界を創造した女神ではなく、世界の安寧を維持するための最低限の管理権限しかないのだそう。あの世界を創造した神は多忙らしく、つい先日、久々に様子を見に行ったら何やらおかしいので、問いただしたところどうやら他の世界から「勇者召喚」をしていたと判明。慌てて他の世界の神に連絡を取り、この世界の神様がここへやってきたそうだ。
「ところで、先ほどからお主から妙な力を感じるのだが」
「私の隠してた実力、バレちゃいました?」
「そういうのではない……何かこう……どす黒いものだ」
「もしかして」
空間収納から取り出したのは魔王を倒したときに割れて黒くなってしまった石。
「それだ。見せてくれ」
「はい、どうぞ」
石を受け取った神様は、しばらく眺めたあと、眉間にしわを寄せ、こめかみをトントンと叩いた。どうやらマジでヤバい物だったみたいね。
「……はあ。とんでもないものだった」
「え?」
「ああ、大丈夫だ。これは私の方で処分しておく」
「お願いします……って、いったい何なんですか?」
「知らずに持っていたのか?お前が作ったのだろう?」
「違いますよ」
「そうか……これはな、極めて強力な解呪の力が込められていた」
「こめられて……いた?」
「そうだ。今は……三つの呪いを引き受けているな」
「三つ……」
「まあ、それはいいだろう」
気になるけど、神様が「いい」と言うなら聞かないでおこう。何しろ神様だし。
「それで、これからどうするのでしょうか?」
「直接関係ない話だが、上に状況は報告する。あの女神の沙汰は先ほど言ったとおりになるだろう」
「じゃあ……」
「うむ。これから先、このような悲劇は起きないはずだ。ただ……巻き込まれてしまったお主らについての方が問題だな」
「ええと……もしかして元に戻せる、とか?」
「難しい話だ。あっちの世界へ戻せるのは一人が限界だ。それ以上はできない。あまり穴を開けるのはマズいのでな」
「誰か一人……つまり、たとえばモニカを戻すことは?」
「できる」
「ならダンジョンに放り込んである王子たち」
「できない。一人が限界だ。すまんな」
「となると……王子は論外、騎士たちも送り返しても……モニカも送り返されても微妙な感じ?」
「正直なところ微妙だな……ううむ」
モニカも考え込んでしまった。家族と仲が悪いわけではないから戻れるなら戻りたい。だけど、戻ったら、いきなり処刑されるかもしれないという、実に酷い状況でもあるわけだし。
「私を百年前に送り返してこの事態を引き起こさせないようにする、というのは?」
「うーむ、難しいのう。あっちからの召喚が行われることはすでに両方の歴史に刻まれてしまっている。過去に戻っても召喚が行われることは回避できない。あちらの世界で起こったでき事だからな」
「私が過去に戻っても、あちらの世界でやることは止められないのね」
「召喚の準備にも時間をかけているようだからな」
「そうか、準備に二ヶ月かけただけでも、私が生まれる前になっちゃうのか」
「そうだな」
「うーん……それなら、こんなのは?」
完全に思いつきで、正直なところうまくいく可能性は低いのだけれど、と前置きしながら提案してみたら、神様が意外にもノリノリだった。
「かっかっかっ!面白い、その発想は神にはできん。理の隙間を突くようなその手口は、まさに人間ならではの知恵よな。よし、乗った!」
神様が準備を始めるというのでこちらも、済ませることは済ませておこう。




