19時(4)
意外にも騎士たちの方が理解が早かった。サルヴァート王国至上主義、国王は絶対、そんな帝王教育で育ってきた王子と違い、ときには現場にいる人間の意見を聞いて善悪の判断をしなければならないと訓練されてきた騎士たちの方が考え方が柔軟なんでしょうね。
さてどうしてやろうかと思ったところへウィルがやってきた。
『実里様』
『どうしたの?』
『状況を分析、一つの仮説を立てました。意見を聞かせていただいても?』
『いいわ……あんたたちはそこにいなさい。ここから出たら魔力枯渇で死ぬみたいだから』
『ここですか……』
『ダンジョンから出たら死にそうになってるでしょ?そのまま放置したらどうなるか、想像してみてよ』
『確かに』
『こんなところで生活できると思うのか?!ふざけるな!』
『じゃあ好きにしたら?』
王子うるさいと思ったら、騎士さんがドスッとみぞおちに一発。一瞬で気絶させた。
『ええ……』
『非常時にはこうして気絶させて運ぶこともありますので慣れております』
そんなのに慣れる生活って何?騎士団とか近衛騎士って、もう少しキラキラと輝いているものなんじゃないの?
『まあ、好きにして。暮らす上で必要になるものは……ちょっと相談しておくわ。多分魔物素材と交換になると思う』
『わかりました。我々もできる限りのことは』
『ん、頑張って。あと、私もこのダンジョンがどのくらいの規模なのかは知らないから奥に行くのはお勧めしないわ。止めもしないけどね』
そう言い捨ててウィルと共にダンジョンから離れる。
『で、仮説って言ってたけど』
『彼らの魔力枯渇についてです』
『うん……どうでもいいと言えばどうでもいいんだけど。見てる前で死なれると寝覚めが悪いからどっか私の知らないところでコロッと逝ってほしいけど』
『それは同意します』
『あら意外、反対して「倫理観が」とか言うかと思ったら』
『私を構築する際にベースとした元筆頭魔術師、ウィルヘルム・ファーゾスならばそう言ったでしょうが、私の思考は原則として実里様に由来しておりますので』
『そうですか。で、魔力枯渇について、ね』
『ええ、おかしなことがあると思いませんか?』
『おかしな……』
『大雑把に言って二つ』
『二つ……一つ目、扉が消えるまでの間、魔力枯渇が起きなかったこと?』
『ええ』
『もう一つは……そうか。モニカは魔力枯渇が起きてない』
『そうです』
『で、それらについてウィルはどう考えているの?』
『まず一つ目の扉が消えるまで魔力枯渇が起きなかった点は……扉が消えるまでの間、扉から彼らに向けて魔力を供給するかのような流れがありました』
『え?つまり異世界から魔力が届けられていたってこと?』
『そうなります』
『そんなことができるのって……女神くらいか』
普通ならできそうにない現象も神にとっては朝飯前なのかしらね。




