19時(3)
そう、せっかく回復させた魔力を魔脈核なる臓器が吸い込んでしまっている。そしてその後体内に吐き出して、また吸い込んでる。一方、王子の体内、あらゆるところで魔力は消費されているようで、全身にいったん巡った魔力がどんどん減っている。
『いくら回復させても追いつかないじゃない!』
元々、魔脈核が空気中の魔素を吸い込んで体内に流す器官だったところ、空気中の魔素がなくなったので、代わりに体内を流れる魔力を吸い込んでしまっている感じ……つまり、大きな袋の中に頭を突っ込んで呼吸してたら酸素濃度がどんどん減っていくのに近いといえばいいのかな。
『うーん、どうしよう』
『どうしよう、というのは?』
『いくら私でも、無限に魔力回復薬が出てくるわけじゃないのよ。この勢いで魔力が枯渇すると……手持ちだとせいぜいもってあと五時間』
『手持ちの材料は?』
『魔力回復薬って、簡単に作れるから材料が手に入るとすぐ作ってたのよ。だから今は材料も無し。つまり今の手持ちの薬で全部よ』
逆に傷を治したり体力を回復させる薬は作るのに少し手がかかるので、常備していない。
『で、魔力枯渇状態って、続くとどうなるの?』
『気絶して、そのまま放っておくと死ぬ』
『そう……』
放っておいて死なれても寝覚めが悪いわね。
『ウィル、何か方法は?』
『仮説ですが、ダンジョンの内部は空気中に魔素が含まれています』
『よし、とりあえず行こう』
全員を連れて一番近くのダンジョン入り口へ転移。そのままダンジョンの中へ蹴り入れると、二、三分で全員がなんとか起き上がれる程度に回復した。
『勇者、貴様一体何をした?!』
『なぜ私が?』
『他にいないだろう?状況的に』
『状況?』
『そうだ。私からの求婚を拒否するつもりだっただけでなく、元の世界に帰るためにあらゆる手段を講じていただろう。さらに、こちらまで私がこうして迎えに来ても『うっさい!』
『がっ!』
カッとなって蹴り飛ばした。
『いい加減、前提が大間違いだって気づかないの?!』
『なにがおかしいのだ?』
『私たちの日常を奪って!命まで奪って!』
『何を言っている。サルヴァート王国が世界を支配する、その覇道に参画できること以上の栄誉が『いい加減にしろって言ってるの!』
胸ぐらをつかんで壁にたたきつける。どうやら、扉が消えたことで勇者無効のスキルも消えたらしい。
『なら!これから私がこの世界を元通りにする!その偉業にあんたも参加しろ!これならどう?これ以上の栄誉はないでしょう!』
『何をバカな……』
『バカな?どこがバカなの?勇者が為そうという偉業よ?これ以上ない栄誉じゃない?』
『馬鹿馬鹿しい』
『その言葉、そっくりそのまま返すわ!』
『何を言って……』
『殿下!勇者様の言うとおりです』
『最初から、我々に非があった。そうとしか思えません……』




