19時(2)
モニカが妙だと感じ、何も警戒せずにスタスタと歩いて行くので慌てて追う。そして教室の中にいたのは……
『かっ……くはっ……』
『ぐっ……た……助け……』
『……』
まだかろうじて生きている王子と騎士たち、計四名の姿だった。
「これは……」
『実里!これは魔力欠乏症だ!』
『……魔力欠乏症?何それ』
『文字通り、魔力が体内から奪われていく現象だ』
『それは……まあ、なんとなくわかったけど』
『このままだと、こいつらは死ぬぞ』
『え?』
慌てて彼らの様子を鑑定……ふむ、確かに体内から魔力がどんどん流れ出てしまっていて……違う。魔力が出てこない。
「どうした?」
「大丈夫なのか?」
「一応大丈夫ですが、こちらには来ないでください」
支部長さんたちは警戒して教室内に入らずにこちらの様子をうかがっているので、とりあえず大丈夫と伝えつつ、この魔力欠乏症の原因がわからないので近づかないように釘を刺す。
『これは……ん?ねえ、モニカ』
『どうした?』
『彼らの魔力……この辺から体内に流れているみたいなんだけど……』
『ん?それがどうかしたか?』
『え?』
私が指さしたのは心臓のやや右側の辺り。王子たちの体内を流れる魔力を観測してみたところ、この肝臓の辺りから魔力が発生していて、体内に流れて体組織に吸収されている、そんなふうに見える。ただ、その発生している魔力がこうしてみている間にもどんどん減っている。そのくせ、体組織に吸収される量は変わらないような……そんな感じ。そして発生する量が減ってきているから吸収できる量が減ってきていて、それが苦しい、みたいな感じ?
『そこには魔脈核があることくらい、習わなかったか?』
『知らないわよ、そんな名前』
『実里様、人間には確かにそういう名前の臓器があります』
『ええ……私が知ってる人間の臓器と違う……』
『どうやらこちらの世界とあちらの世界では体の構造も違うようですな。簡単に説明しますと、空気中の魔素を呼吸で取り込んだ後、この魔脈核で魔力として体に取り込む、そういう器官です』
補足すると、魔素というのは魔力とほぼ同義と考えてよい。空気中を漂う魔力のことを魔素と呼ぶ、その程度の認識でいい……と教わった。
『ん?つまり……地球の大気中にはほとんど魔素がないから、魔力を取り込めなくて苦しんでるってこと?』
『おそらくは』
『なら、こうすればいいってことかしら?』
軽く手を振り、収納から小瓶を人数分出すと、倒れてる連中の口に突っ込む。
『ぶはっ』
『ゲホッゲホッ』
『結構高いんだからこぼさないでよね……』
私が作った中級の魔力回復薬。素材を買いそろえたら、その一本分で庶民が三ヶ月は暮らせるくらい。
『勇者……貴様……何をした?』
『何って……魔力回復薬を飲ませただけよ?』
『その前だ!なぜ、こんな……ぐあっ……』
『実里、また魔力が枯渇している』
『嘘でしょ?今、全快したばっかり』
『実里様』
『うん?』
ウィルが何かに気づいた……あ、私も気づいたわ。
『魔脈核から魔力が出てきていないどころか、体内の魔力を吸い込んでいるようです』




