19時(1)
「殿下、扉の前に到着しました」
「ああ……うぐっ」
「大丈夫ですか?」
「あのクソ女……あ、あばらが折れてる……どこの家だったか、取り潰し確定だ、クソがっ」
ふらつきながらも教室の中に入ると、騎士たちがビシッと整列して姿勢を正す。
「とにかくいったん帰るぞ。それから……あの勇者、再召喚してやる。次は手足の腱を切って二度と自由にさせん。覚悟しておけ……クソッ」
不穏なことを口にしながら帰還命令を発すると、先行する騎士が数名扉へ向かう。それを一人の騎士――手紙を託された騎士だ――が制する。
「私が先に入る。届けなければならないものもあるからな」
「はっ!」
そうして騎士たちは順に扉へ入っていく。しかし、四人目が通った直後、扉の開かれた、ゆらゆらと揺らめいている間口が怪しく明滅し始めた。
「何だ?!」
「殿下、お下がりください。何か妙です!」
「う、うむ……」
明滅の間隔は徐々に短く、そして光が強くなり、直視できなくなって数秒。
パリィィィン……と、ガラスの割れるような音と共に砕け散り、扉が消えていった。
「き、消えた?!」
「くっ……間に合わなかったか!」
全員ががくりと膝をついた。
「扉、消えたみたいです」
「本当に?」
「ええ」
探知魔法では歪んでまともに見えなかった教室の中が鮮明に見えるようになっていた。そう、間に合わずに残された者たちの存在も。
「うーん」
「どうした?」
「扉を抜けるのが間に合わなかったのが何人かいますねえ……」
「はあ……頭が痛いな」
「どうしましょうか?」
「……とりあえずこちらへ呼び寄せて……それからどうするか……まあ、改めて考えることにしよう」
ある程度街の運営で責任のある立場の人にとって、色々とやらかしたことがわかっているとは言え、行き場のない人々。形だけでも手を差し伸べなければと思ったんだね。
「では行きますか?」
「転移でいけるか?」
「はい。ただ、どういう行動に出るか予想できませんので、すぐそばの廊下までですが」
「構わん。小出、俺たちの武装を」
「はいはい、すぐ持ってきますね」
『モニカはどうする?』
『行くぞ。彼らの扱いは私の方が慣れてるだろう?』
『そうね』
小出さんが大きなバッグを持ってきてそれぞれに手渡すと、「私は行きませんからね!」と後ずさっていった。無理につれてったりはしませんよ。
「では、転移!」
スタッと廊下に降り立つと、すぐにモニカと共に一歩出て、全員を少し下がらせる。皆さんモンスター相手の戦闘は経験したことがあるだろうけど、対人戦はね……私も騎士との模擬戦以外はないので、下手すると殺し合いに発展する実戦になる可能性があるここでは経験者であるモニカに先行してもらおうか……
『ん?実里、妙だぞ』
『え?あ……』




