18時(2)
転移した先はもちろんモニカのすぐそば。ただし、どこが地面でどこが壁かわからないほどに重力が乱れ、グニャグニャとしていた。
「うひゃああ!」
『実里!コアは?』
『破壊したわ』
『コアを破壊しただと?!』
うわ、王子たちの目の前だったか。
『貴様!ダンジョンのコアを破壊したらどうなるかわかってるのか?』
『とうとう「貴様」呼ばわり?仮にもアンタの国を救った勇者に』
『うるさい。我々の言うことに従わないお前など、勇者ではない』
『とうとう本心が出たわね……ま、いいけど。とりあえずここから外に出るわ。そちらの皆さんも一緒にいかが?それともこのままダンジョンの崩壊に巻き込まれたい?』
『ふざけるな!ダンジョンをためらいなく壊すような奴と一緒にいられるか!』
『『『『『一緒にお願いします!』』』』』
人望ないわねえ……
『フン、勝手にしろ』
『ええ、勝手にするわ』
そっぽを向いた王子は無視して転移魔法の展開を開始すると、すぐに私の足下から魔法陣が浮かび上がり頭の上で静止して光の柱を形成する。
『モニカ、ウィル、こっちへ』
それぞれに手で触れる。
『残り、こっちに来て私の肩に触れて』
『『『『『はい!失礼します!』』』』』
これでも一応は王族に仕えるために礼儀作法をたたき込まれた近衛騎士たち。レディに触れる前に一言断りを入れるくらいの常識はあるようで、そこは好感が持てる。といっても顔が濃いからあまり近づかないでほしいのが本心。
『では……空間転移!』
『くっ!』
『うぇっ!』
転移する直前、王子が飛び込んできて頭を鷲掴みにした。
『離せ!』
『ごふっ!』
ダンジョン入り口に転移した直後、王子を振り払って、ダンジョンを出る。全く、勝手にしろと言っておきながらいざ転移しようとした直前に飛び込んできて頭をわしづかみとか、失礼にもほどがある。人としてあり得ない。こらこらモニカ、転がったところを蹴りに行かないの。私の方が蹴りたいんだから。私が蹴る分、残しておいてよ。
『で、全員いるのかしら?』
『あ、ああ……まあ、な』
騎士たちの中で一番偉そうな人がやや口ごもる。よくよく見ると、三十人はいたはずの騎士たちが半分以下になっていてダンジョンの方を気にしていたが、ちょうどそのタイミングでダンジョンがガラガラと派手な音をさせながら崩壊し、入り口が埋まった。「ひいいっ!」と這いつくばってどうにか潰されずに済んだ王子のところにモニカが向かう。
『運のいい奴だ、生き延びたか』
『お、お前……王国の騎士だろう?!王子の私を足蹴にするとは何事だ!』
『残念だな。先ほど辞表を出したところだ』
こらこら、まだ受理されるどころか提出してませんよ……って、本気で腹を蹴るのをやめなさいって。
まあ、あっちは放っておいてこっちの話をしておこう。ホントはモニカがすべきことのはずなんだけど。
『で、少ないのは……既にダンジョンに飲み込まれた?』
『ああ。異様な姿の魔物に……あとはいきなり盛り上がってきた壁に押しつぶされたり……』
『ある意味自業自得ね。私を追っかけてこっちに来たからそんな目に遭うのよ』




