18時(1)
「コアの動きが止まったね」
かなり深い位置、多分階層にして二十から二十五くらいのあたりでコアの動きが止まった。初期状態で二十層以上ということはこの先成長すれば五十層近くになるはずなので、かなりの規模のダンジョンになる。
「まだ壁はぶち抜けるわね」
ズドン、と壁をぶち抜いてさらに降下。コアが動かなくなったので、まっすぐ行けるようになった分、ドンドン距離を詰めていけるようになった。
「そしてこの壁をぶち抜けば……よし!」
無事にダンジョンコアの元へたどり着いた。
大きな円形の広間の隅に簡素な台座があり、その上に無造作に置かれているだけのコア。
以前聞いたときには、ダンジョンコアはやがてダンジョンボスを生み出し、ダンジョンボスはダンジョンコアを守るためにコア部屋を隔離する一方、台座を凝った作りに変えたり、コア部屋を飾り立てるようになったりするとかなんとか。
つまり、まだダンジョンボスのいないこのダンジョンの場合、無造作に置かれるだけということ……ん?
コアに向かい歩みを進める先の空間がぐにゃりとゆがんだ。
「ボスのお出ましかしら?」
ゆがんだ空間はやがて黒い染みのようなものを滴らせ始める。そしてしたたり落ちた染みのようなものが少しずつ何かの形になっていく。
「これは……骸骨?」
巨大な人型の骸骨の形になりつつあるようだけど、完成するまで律儀に待つつもりはない。
「空間爆砕」
ボグッと鈍い音をさせて空間そのものが爆発し、生まれ出でようとしていたダンジョンボスを消滅させると、ダンジョンコアがチカチカと点滅し始めた。
生み出そうとしたダンジョンボスがいきなり討伐されて焦っているのだろうか?だとしたら実に人間くさい反応だ。
「もしかしたらダンジョンを生み出す元になった人がダンジョンコアに取り憑いていたりして」
ありそうだな、と思うけど、確認できた例はないだろうね。ダンジョンコア自体は決して見つかっていないわけではない。単純にダンジョンの奥まで行かないと見つからないし、隠されているケースが多いから見つかることは少ないんだけど、見つかった例は確かいくつかあったはず。その一方で、コアと会話できた事例は多分ないはず。
ないよね?一応後でウィルに確認してみよう。
それはそれとして、さっさとこのコアを破壊しないと。仮に死んだ人の魂がとりついていたとしても、それはそれ。むしろ魂を解放してやった方がいいだろうし。
「コアの形を精密に計測……うん、正二十面体、かな?じゃあ、それに合わせて魔法を構築。こことここをこうして……うん、行ける」
パパパパッと指先から光の粒を放ってコアの周囲に展開させたら準備よし。
「空間破壊」
シュシュッとコアの周囲に展開した光の粒から線が延び、コアより一回り大きな正二十面体を構成。それぞれの頂点がピッと光り、中心へ向けて線が延びていく。コアに飲み込まれてもお構いなしに。そして、三角錐が並んだ状態になると、パキッと分離し、三角錐が粉々に砕け散った。
この前の共同墓地にできた非常識ダンジョンコアの場合、周囲に防御用の結界を構築してから破壊するという手段をとったため、空間そのもの、空間の存在自体を破壊するような方法で破壊した。でも、今回ここでそれをやるとダンジョンの外がいきなり爆発してしまいそうなので、慎重に、コアだけをきれいに破壊する方法でやってみた。
「これで破壊できたはず……ん、いい感じね」
ズズ……とわずかに周囲が振動しはじめ、やがてゴゴゴ……と大きく揺れながら崩れ始めた。
「モニカの位置は……と、ウィル、聞こえる?」
――聞こえます。ダンジョンコアの破壊に成功したようですね。
「ええ。そっちに転移するけど、大丈夫?」
――問題ありません。
「じゃ、行くわよ。血盟転移」




