17時(3)
『うわっとぉっ!』
『モニカ様、大丈夫ですか?』
『なんとかな。だが、これはどうにかならないのか?』
『私の魔力ではダンジョンに干渉するのは不可能です』
モニカを魔力障壁で囲みウィルが先導する形で進んでいるのだが、ダンジョンの壁も床も天井もぐねぐねとうねっており、重力もめちゃくちゃで、さっきまで天井だったところに落下するのは既に三回目。三半規管がそろそろ休暇をほしがりそうだ。壁への落下なら七回、いや八回は起きている。重力の操作も実里の得意とする「空」属性魔法の範疇であり、その師、ウィルヘルム・ファーゾスの力を受け継いでいるウィルも得意とするが、如何せん相手がダンジョン。規模が大きすぎて、実里の常識外れの魔力でどうにかできるだろうか、というレベルである。
『せいぜいぶつからないようにってうぷっ……ウィル、変化する兆候を捕らえることはできないか?』
『無理です』
『……』
『できるならとっくにやってますよ?』
いきなり右側の壁に重力が発生すると同時に盛り上がってきたせいで額をしこたま打ったモニカが恨めしそうにウィルを見るが、ウィルにだってできることとできないことくらいはある。
『せめて私が生まれて一年以上経っていれば、もう少し色々できたのですが』
『精霊としてはひよっこか』
『申し訳ありません』
できることは精一杯しようと、ウィルはモニカの周囲を障壁で囲み、宙に浮かせて運んでいるのだが、それを突き抜けてくるダンジョンの変化。できたばかりのダンジョンがこんなに危険だとは知らなかったと、モニカはぼやく。
『前方左十メートル、魔物です』
『しっ!』
気合いと共に突き出した槍の先から衝撃波が放たれる。
ドパンッとはじける音がして魔物が弾け飛んだ。
『この槍、とんでもない性能だな』
『対魔王用に作られていますからねえ』
軽く突き出しただけなのに、ちょっと気合いを入れるだけで衝撃波が放たれ、その威力が当たった魔物が弾け飛ぶというのはオーバースペックもいいところだ。
もちろん、モニカは騎士団支給の剣で似たようなことができるが、弾け飛ぶのはせいぜいゴブリンかオークの中でも小柄な個体程度。今のような……
『そもそも、今の魔物は何だ?あんなの見たことがないぞ?』
『私もです』
姿が見えると同時に弾け飛んでしまったのでほとんど確認できなかったのだが、アレは明らかに、
『前方に魔物二体』
『はっ!』
ウィルの声で我に返り、同時に気合いで一体を消し飛ばし、もう一体の姿を確認……すると同時に消し飛ばした。
『何だあれは?!』
『わずかにわかる範囲ですが、複数の魔物がごちゃ混ぜになっていたようだと』
『むむむ……』




