15時(3)
「ああ……えっと……って、おい、青山!これ、プライベートチャンネルじゃないのか?!」
「うん、簡単に入られた」
「ハア?!」
「何か問題がありましたか?」
「大ありだ!セキュリティが機能してないってことだぞ!」
「チャットチャンネルの暗号化はちゃんとされてるはずだよな。ウィルだったか?どうやって突破をした?」
「どうやってと言われても、特に何もありません。あの程度の暗号化、エラー補正フラグかと勘違いする程度でした」
「だ、そうだ」
「だあああああ!もういい!とにかくだ!あの女たちを出せ!」
「申し訳ありませんが、実里様もモニカ様もBCポートを接続しておりませんので、私、ウィルが代わりに。チャットの状況は見えるようにしておりますので」
「BCポートがないだと?!どんな田舎者だ?!」
「田舎者じゃないはずなんですけどねえ」
思わず私が口を挟むと、ウィルを通してそれが聞こえたのかまた激昂した。
「貴様!いきなり姿を消しやがって!自分が何をしたかわかっているのか?!」
「何って……討伐?」
「さっさとこっちに来て、復興の手伝いをしろ!」
「え?イヤですけど。そもそもなんで私が復興の手伝いを?」
「お前があの事態を引き起こしたんだろうが!」
さすがに青山さんが見かねて口を挟んだ。
「加藤支部長、さすがにそれは言い過ぎです。さっき送った資料、ちゃんと読んだだろう?」
「読んださ!こことは違う異世界からダンジョンがこっちに来たんだろう?」
「そうだ。つまり「ならそいつらが引き起こした事態なんだろうが!」
話、全然通じてないな。
「全く、小娘はおとなしく年上を敬ってだな」
「あの、ちょっといいですか?」
「何だ?」
「年上って意味なら私の方がずっと年上です。戸籍上は」
「は?」
「そうだった。戸籍上は百十六歳、いや七歳かな?現時点でおそらく世界最高齢だな」
「ギネスブックに登録してもらおうかしら」
「ギネスブック?ああ、そう言えばそんなものもあったらしいな」
世界にダンジョンが広がり、モンスターが蔓延るようになってからは百歳どころか七十歳を超える人が珍しいご時世。百歳を軽く飛び越えてる実里が敬う年上はいないことになる。そしてどうやらギネスブックはなくなっているらしい。残念。
「何を言って……」
「まあ、そういうことだ。こっちもこっちで忙しいので切るぞ」
ガチャンと一方的に切るとウィルが投影していた映像も消えた。
「面倒臭い対応、ありがとうございます」
「まあ、このくらいはな」
「こちら、ささやかですが」
「ん?」
スイッと私が差し出した紙包みを青山さんが怪訝そうに見つめる。
「私特製の胃薬です」
「大丈夫なのか?」
「それはもう」
「実里様の作る薬ですから、この先五十年は鉄の胃袋です」
ウィルが太鼓判を押した。
「それはそれでなんかイヤだな……って、大丈夫なのかその薬」
「臨床試験はまだですけど」
「飲めるか!」
「大丈夫ですって。レシピは私の師匠が作った物ですから」
「さっき、「私特製」って言ってなかったか?」
「そんなこと言いましたっけ?」
苦笑いしながらも受け取ってくれた。大丈夫。ちゃんと効く薬だからね。
「さて、まあ……言いたいことは色々あるが言っても仕方ないことだな。まずはご苦労さん。報酬は後で支払う」
「ええ……それって支払うつもりがないって意味では?」
「ええとだな、これがどんだけの成果なのかわかっているか?」
「わかりません」
「だろ?俺もだ。何しろ影響がでかすぎてどこをどう計算するか見当がつかない。上には報告上げてあるからどんな返事が返ってくるか次第だが、その返事も予想がつかなくて胃が痛い」
「なるほど」
「……当面の生活費くらいはあるよな?」
「それはまあ」
何なら築城して生活するくらいの資材もありますよ。




